子供時代【16】新しくできた弟のこと
継母には1歳の男の子がいました。
その子はとても神経質な子で、癇癪持ちでした。
ある日から、知らない人たちが自分の家に住むようになったから、嫌がって泣くのです。
あまりにも泣くので、継母が「あんたたちがいじめてるんじゃないのか?」と言い出しました。
どの口が言うんだろうと思います。
しかし継母は、自分が産んだ子供は可愛いのですから、まだマシなのかもしれません。
世の中には、自分が産んだ子供を、平気で虐待する親がいるのですから。
新しい弟は、何日かは私たちを嫌がって、泣き喚き、癇癪をおこしました。
私はこの弟が憎くて仕方ありませんでした。
この子が泣くせいで、私たちが怒られる。
でもこの子を怒ったら、私たちが怒られる。
それから何日か経ち、私たちに慣れてきた弟は、泣くことがなくなりました。
それだけで私はホッとしました。
これで継母に怒られないで済む。
ところがそれだけでなく、弟は安心したのか、私に抱きついて甘えてきて、可愛い笑顔で私を見つめてきました。
その可愛い笑顔を見た瞬間、私は弟が可愛いと思い、好きになりました。
そして、「この子が泣くのは、この子のせいじゃなかった。この子を憎むのは間違いだった」と思ったのです。
継母は面倒なことは何でも私に押し付けてきたので、弟の世話も色々と押し付けてきました。
でも、弟は可愛かったから、世話をするのは嫌ではなかったのです。
一緒に遊んだり、おむつを替えたり、お風呂にも入れました。
その後、2人目の弟が産まれ、妹が産まれ、私たちは5人兄弟になりました。
血が繋がった弟と妹もできたから、血が繋がらない弟が可愛くなくなったかというと、そんなことはまったくありませんでした。
みんな同じように可愛かったのです。
その中でも、この血が繋がらない弟が、いちばん面倒を見たので、たくさんの思い出があるのは、この子なのです。
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