やる散歩〜青春フルパワー忍伝編Day2〜
丸一日かけて渡鳥(鳥取へ渡ること)し、2日目を迎えた。この日は現地に住む友達が車を出してくれ、東部から西部まで見て回ることができた。
空は曇天。埃の水溶液のような灰色をしていた。客に向かってなんだその顔色は…と思ったが、友達は「鳥取の空って大体いつもこんな感じだよ」と言う。仕方ないので「鳥取ってそういう人なんだな」と割り切ることにした。風もかなり強く、思っていた以上に寒い。道路脇のところどころでは怠い雪が「俺まだやれんよ」と言わんばかりに小さな山を作り、往生際悪く粘っている。春の雪国ではよく見る光景であり、我々のような雪嫌いが見かけると即小便を浴びせて蹴飛ばすでお馴染みの怠雪山だ。「今日は雪降るかもしれんね」と友達。「西は大体暖かい」という浅い気象観のもと薄着でカチ込んできた事を後悔した。
○鳥取砂丘
砂丘の手前には松の木が防風林として植えられており、砂の上にはまつぼっくりがぽすぽすと落ちていた。鳥取の大学では、新歓で砂丘へ行って松ぼっくりを投げ合い、当たったら一枚ずつ服を脱いでいくゲームをするらしい。そんなの大喜利すぎるが、鳥取の大学を卒業した友達の言うことなので、これは確かな情報である。
砂丘の手前側に、使っても使わなくても何も変わらないような粗末な有料撮影台があって面白い。律儀にも台に記してある番号に電話をかけて「もしもし?すみません、砂丘のところの、粗末な台を使って粗末な記念写真を撮りたいのですが……」とか申し込む人もいるのだろうか。そうしたら足元の砂の中からラクダの首がニュと出てきて、千円札を咥えさせてやると「撮影ドゾー」とか言ってまた砂へ潜っていったりするのだろうか(それだったら撮影の価値大いにアリだが)。台自体大して大きい訳でも高さがある訳でもなく、置いてある場所も特段景色が良いスポットという事はない。どれくらいの収益が出ているのだろうか。
冷たい風が吹く中、通称”馬の背”と呼ばれる大きな砂山に登った。わんぱくにも斜面が体感170°程ある部分を選び、走って登ってみる。真ん中までは走って登れたが、それ以降は傾斜がきつすぎて(あと砂で滑る!)二足歩行で進めない。わんぱくにも、手を砂に突き刺して、穴に手足を掛けながら登った。頂上に着くと、向こう側に海が見えた。が、砂山の下とは比べ物にならないくらいの暴風が吹き荒れていて景色を楽しむ余裕が全くなかった。身体が吹き飛ばされて砂山を転げ落ちそうになったし、手が凍傷で魔族のような紫色に染まった。風によってマスクの内側にはびっしりと砂が付き、彦摩呂で言うところの「不快感の満漢全席や〜!」といった感じだった。体に付いた砂を払うと、もう一つ砂丘が生まれるほど大量の砂が落ちた。砂丘を後にして10時間経ってもまだ体から砂が出てきて笑ってしまった。
砂にまみれて売店に寄る。店員の明るいおばちゃんに乗せられて手彫り刻印キーホルダーに「やる気」と彫ってもらうなどした。その他何点かお土産を購入。
○かにっこ館
砂丘の後は、かにっこ館という小さな水族館的施設に行った。入場無料で結構見応えがあって良かった。鳩が苦手な友達と「1LDKに鳩と住むのと、ワンルームにこのでっかい蟹と住むのだとどちらを選ぶ?」など問答をしながら、楽しく見て回った。
○水木しげるロード
西部へと車を走らせ、水木しげるロードなるエリアへ。水木しげるが鳥取出身なので、妖怪のオブジェや妖怪グッズを売る店などがたくさん並んでいる。お馴染みの妖怪から初めて見る妖怪まで色々いて面白かった。売店では、ご主人から「水木先生はここへ100回以上いらしてるんですよ。でも水木先生がいらっしゃっても誰もそれに気付かないんですね。さっきあなたが一緒に話してたの水木先生だよとお客さんに教えてあげると、えー!って驚くの。」という内容の話を7回くらい繰り返し聞いた。
大満足の一日だったが、冬の砂丘にはもう絶対行くまいと決めた。雪と同じくらい砂のことが嫌いになったので、「雪と砂はNGでお願いします」と改めて事務所に伝えた。
教訓:
・耳は砂の宝庫
・水木しげるは忍者