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サイヤーラインは脈々と

スポーツ観戦をしていると、背筋がゾゾゾっ…と寒くなるくらいの衝撃を受けるシーンに出会うことがたまにある。それはゾーンに入ったような圧倒的な力だったり、互角でまさにガップリ四つの名勝負だったり、抗いようのない勝負のアヤによる大逆転劇だったり。

初めてそれを感じたのは1989年。当時田舎ではプロ野球と言えば巨人戦しかやっていなかったのだが、たまたま目にしたパリーグ天王山、西武vs近鉄戦ダブルヘッダーでブライアントの4打数連続ホームランを目にした時だったか。私はこの試合を契機に近鉄ファンになった。

公式的なものがないのでここに引用はしませんが、興味ある方はYoutubeを検索して頂きたい。現西武の辻監督やソフトバンクの工藤監督、ロッテの吉井投手コーチや中日の阿波野投手コーチなんかも現役で若いです。

あとプロ野球ニュースのキャスター中井美穂さんが…いや脱線はこの辺で。


競馬観戦をしていても、そのようなシーンに巡り合うことがある。

特に印象に残っているのは1997年の朝日杯3歳ステークス。
栗毛の怪物グラスワンダーが勝利したレースである。

こちらはJRAの公式チャンネルがあるので引用しておく。

直線で突き抜けた他馬とは次元の違う走りゾゾゾっ…と来たもので、それ以来すっかりファンになりその後、『最強世代』と称された世代のトップランナーとして怪我に悩まされながらもグランプリ3連覇を成し遂げる間、彼のことを応援し続けたものである。

どのくらい当時思い入れがあったかと言うのは、彼の馬名を直訳すると

Grass=草
Wonder=驚愕(不思議と訳すのが一般的でしょうが、当時持っていた辞書を引くとそんな訳も出ていたのでそれを引用しました)

になる。これをもじると…と言うことでお察し頂きたい。


そんな彼も、寄る年波には勝てず2000年の宝塚記念を最後に種牡馬生活に入ったため、私もその産駒達を応援した。初期にラジオたんぱ杯3歳ステークスを勝ちクラシック戦線で期待されたサクラメガワンダーなどを出していたが期待していた程でもなく、結局GⅠ勝馬は2008年のジャパンカップを勝ったスクリーンヒーロー、朝日杯フューチュリティステークスを勝ったセイウンワンダー、2011年に宝塚記念を勝ったアーネストリーの3頭、その他10頭ほどの重賞勝ち馬を出したばかりで、まだ産駒は走っているもののそろそろ種牡馬生活も終盤に差し掛かっている。(障害GⅠ勝馬はさらに2頭います)


グラスワンダーはいわゆるRoberto(ロベルト)系と言われるサイヤーラインに属しており、ディープインパクトなど主流となっているサンデーサイレンス系と近いところでは同系なのだがどちらかと言うと傍系に属する。
同じロベルト系では三冠馬ナリタブライアンやGⅠを4勝したマヤノトップガンを筆頭に多くのGⅠ勝馬を出したブライアンズタイムが有名だが、ロベルト系と言うのはとかく世代を経ての劣化が激しいというか、先述した後継馬達は種牡馬入りした後全くと言っていいほど産駒に恵まれておらず、それからするとグラスワンダーは奮闘した方だと言えるだろう。


とは言え、引退から15年くらいが経過しもうラインは途切れるかと覚悟していたころ、産駒のスクリーンヒーローが初年度からマイル~中距離GⅠを6勝するモーリス、有馬記念勝ちのゴールドアクターを出しサイヤーラインが息を吹き返す。両馬は引退後種牡馬入りし、モーリスは当面はエース格として200頭程度の種付けしており、ゴールドアクターも初年度60頭くらいに種付けを行ったらしい。そして、そのモーリスが初年度産駒から先日スプリンターズステークスを3歳馬ながら勝利したピクシーナイトを出した。


もし仮に、ピクシーナイトが将来種牡馬入りすることになれば、グラスワンダーから数えて4世代目の馬がスタッドインすることになる。

グラスワンダーは現在26歳。今年デビューする予定の2019年産駒が1頭血統登録されているのみで、2020年種付け頭数は1頭。と言うことで種牡馬としてはそろそろお役御免となり余生を功労馬としてのんびりと過ごすことになるだろう。しかしその血は仔達へと受け継がれスクリーンヒーロー、モーリスを中心にもう暫くの間はグラスワンダーファンを楽しませてくれそうだ。

ちなみにピクシーナイトは、母方にもキングヘイローやサクラバクシンオー、オジジアンと言ったスピードで鳴らしたスプリンター達の血が入っており、個人的にはいわゆる『途絶えてしまった(途絶えつつある)思い入れのある血』にあたる。その辺の話もまた機会があれば。

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