3/25 思い出の高松宮記念
高松宮記念というものが昔は高松宮杯で、2000mのG2だったということを知ったのは、たぶん本当に小さい時だったと思う。祖父の代から脈々と受け継がれる競馬好きの血が騒いだのかは知らないが、気づけば勝手に知識として入ってきていた。
で、いざ高松宮記念の思い出があるレースは何があるのかと考えてみるとこれがなかなか出てこないものだ。大好きなビリーヴは見た記憶もあいまいだし、オレハマッテルゼとかファイングレインとかはうすぼんやりとした記憶しかない。近年の高松宮記念の思い出も、馬券をやりだしてからはそれほどないのが短距離戦線の悲しいところだ。
そんな中で、鮮烈な印象を与えてくれた高松宮記念は近年で3つ思いつく。エアロヴェロシティ、ビッグアーサー、そして昨年のモズスーパーフレア。
モズスーパーフレアに関しては完全に馬券的な話になるのでここでは割愛。少し触れておくとクリノガウディー、ダイアトニック本線で買っていた自分としては悪夢でしかないレースで、レース後の憔悴ぶりといったらもう思い出したくもない。
とまあ、酷い有様でパニクっていたのである。
話を本題に戻そう。
エアロヴェロシティが強く印象に残っている理由は、香港馬という至極単純な理由。
そして彼とパートン騎手の走りが、衝撃を残すものだったからだ。
昔はサイレントウィットネスやらテイクオーバーターゲットやら、日本にやってきては短距離王座をかっさらっていく香港スプリンターたちが多くいて、そんな彼らを見てきた自分の印象は「香港馬がやってきたら注目しておく」という認識が生まれるほどに「強い」という印象があった。この当時だと直近でグリーンバーディやウルトラファンタジーが思い起こされる。結局彼らだって、侮った日本の競馬ファンの評価に反発して活躍していたのだから、そんな過去も見ていたものとして彼を見過ごすわけにはいかなかったというのが大きな理由のひとつだ。
当時はまだ未成年だから、勿論馬券なんて買えない。まあ父の会社の競馬仲間たちが主催していた競馬大会にゲストとして参加させてもらっていた身だったため架空のお金での購入(1レース1万円の予算で割り振るというのがこの会のルール)はできたのだが、その時の購入馬券がこれ。
これだけエアロヴェロシティがとか言っておきながら本線が10番のアフォード(15番人気)なのだから、一体何を考えているのかこの頃からさっぱり意味が分からない。しかもエアロヴェロシティ以外の相手が8番のアンバルブライベン(11番人気)と12番のサクラゴスペル(12番人気)となかなかの穴目。ストレイトガール(1番人気)もミッキーアイル(3番人気)も来ないとよく思えたものだ、本当に。どうせ狙うなら自分の競馬に持ち込んだら強いハクサンムーン(6番人気)でも狙っておけばいいのに。
レースは粘るハクサンムーンの後ろから追撃するミッキーアイルとエアロヴェロシティ3頭が、直線での1位争いを繰り広げていた。このままハクサンムーンが粘るか、ミッキーアイルが捉えるのかというその争いを、間を割るようにして突き抜けたのがエアロヴェロシティ。
まさしく風雨を切り裂いてというような表現がピタリと当てはまるような疾走ぶりだった。
跨るザカリー・パートン騎手の風車鞭の連打に呼応しながら伸びていくその姿は人馬一体の呼吸で培われたようなもので、そんな彼らを、すげぇ、カッコいい。と思いながら眺めていた。雨で馬場が悪い中突き抜けてきた香港の短距離王は、間違いなくその姿を自分の脳裏に強く焼き付けて日本の短距離界を制圧していったのだ。
近年は、こんな想いをするほど短距離界に燃える事が少ない。だからこそ昨年のスプリンターズSでグランアレグリアがまとめてぶっこ抜いた際には心が躍ったものだが、彼女は1200が短いという。まあ昨年はアーモンドアイ至上主義がチラついていたせいで、使い分けのにおいがしなくもないのだが、結局は勝ってしまえばそんなものは関係ない。それに今年はアーモンドアイはいないのだから、適距離で頑張ってほしいと思う。
とはいえこれで、近年何度目かの短距離戦線戦国時代がまた到来している。今年は未だ続くコロナウイルスのせいで、海外からの招へいもない。是非エアロヴェロシティのような、混戦に断をする馬が現れてほしいものだ。
当たらない予想は土曜日にでも、つらつらと書いておきたい。