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3/24 ミスターメロディと自分

本日、ウマフリ様にミスターメロディの記事を寄稿させていただいた。お時間の許す方はご一読いただければありがたい。

彼に関しては自分も多くの思い出があるので、補完というほどではないが少し書いてみたいと思う。

彼を初めて知ったのは、記事にある通り東京の新馬戦。

この時期の自分は、受験勉強の合間に土日は父が見ているグリーンチャンネルでメインを見るくらいだけの競馬への向き合い方だった。それぐらい、あの頃は必死だったのだろう。大好きな競馬すら向こうに回すほどに「合格」という2文字が欲しかった。


この日はセンター試験の模試だった。自己採点が最悪で落ち込んでいた気分だったのを今でも覚えている。にもかかわらず、本当に思い付きで東京の新馬戦の動画を見返した。

画面に映る彼の走りは、衝撃だった。

新馬戦のぶっちぎりなど、後から見返せば珍しくもなんともない馬が多数いるのはもちろん知っている。だが、当時自分は今ほど平場のレースを見てもいなかったし、ダートの新馬戦ぶっちぎりをサクセスブロッケンくらいしか知らなかった。

だから、感じた。

強い。と。

とはいうものの、追っかけ癖のある自分にしては珍しくその後の彼を追う事をしていなかった。ダートの条件戦で苦戦していたのも、初芝のファルコンSを制していたのも、受験勉強とそれが終わった開放感で見向きもしなかった。(見た記憶があるのはフェブラリーSと高松宮記念くらいだが、それすらパッと勝ち馬を口に出せるわけでもない)NHKマイルCの出馬表に彼の名があるのを見て、いつの間にかここまで来ていたのか、という事をやっと認識するくらいだった。

そして、結果は4着。あの勝ち方を見ていた自分からすれば、拍子抜けの結果だった。てっきりエルコンドルパサーするんじゃないかとか、勝手に思っていたのだから。

しかし、それでも応援はやめなかった。どこかできっと勝てないだろうと諦めながら見ていた阪急杯の敗戦。フラフラしながら走って、全く自分の力を出せないままのレースが終わった後、なぜか自分の中でこんな感情が沸き起こった。

――ああ、高松宮記念狙いたいな。と。

そして中京の舞台に駒を進めてきた彼。5日前にキングヘイローが逝ってしまった。福永祐一騎手に弔い合戦として制して欲しい。そんな想いがあったからこそ、このレースの軸はミスターメロディに定める以外考えられなかった。

相手は、どうしようか。

セイウンコウセイがいささか舐められすぎだ。とひと目見て思った。前年の函館スプリントSを現地で見て、ヒルノデイバローとナックビーナスの馬連を持つ自分の的中馬券を紙屑に変えた馬でもあるし、何より2年前の覇者だ。G1馬がこの評価はよろしくないだろう。しかし、ダノンスマッシュの充実ぶりが目を引きすぎている。学生の自分にとって、1600円は結構な大金だ。1週間分の食費くらいにはなるような額。

ここは固く行こう。ダノンスマッシュ(1番人気)とミスターメロディ(3番人気)の2頭軸3連複。その馬券をIPATでポン、と購入。

穴党を自称している人間が、1番買ってはいけない馬券、それはこういう馬券に他ならない。自分は、大きなミスを犯していたのだ。

レースは周知の通り、1着 ミスターメロディ(3番人気) 2着 セイウンコウセイ(12番人気) 3着 ショウナンアンセム(17番人気)4着 ダノンスマッシュ(1番人気)。迷ってやめたセイウンコウセイが、超特大の大穴であるショウナンアンセムを引き連れて超万馬券誘導ミサイルと化した。ショックは大きかったが、それ以上にミスターメロディを信用していた自分の勘は外れていなかったことが、更にショックを増幅させた。こんな完璧予想など、1年に1度あるかないかくらいだったというのに。

ともあれ、自分が目をつけ続けていた彼が優勝してくれたことは大きな励ましになった。事実、このレースの後くらいから、再び土日の平場に目を通したり、好きになった馬の追っかけを始めたりと、競馬に対する向き合い方が変わっていったのだから、自分の中ではかなり大きい勝利だったのだろう。スキャットダディの話はこのレースの後から調べて分かったことだが、その背景もさらに応援したくなる。是非もっと勲章を増やしてくれないものだろうかと思いながら、福永祐一騎手とのウイニングランを眺めていた。

しかし、その後彼は勝てなくなった。JBCに挑戦するときは期待した。あのデビュー戦のような走りを見せてくれないものかと。なのに浦和のダートも大井のダートも、ミスターメロディには微笑んでくれなかった。

そして昨年のスプリンターズSでグランアレグリアが突き抜けた時に、感じてしまった。切れ味勝負では分が悪すぎると。彼女には多分、永遠に敵わないのだろうと。そのまま馬券で自分にいい思いをさせてくれることは無いままに、ターフを去った。

こうして綴ると、結局自分も馬券は好きなんだなぁ、と思う。しかし、ロマンがなければこんなに負け続ける競馬なんて続けていない。そして1度追っかけ始めた馬は、その子どもたちまで追っかけるのが自分のポリシーだ。アメリカで無敗の3冠馬なんて残しているような黄金の血脈なのだから、いい肌馬がどんどん集まってきさえすれば、いい子に恵まれるような位がしてならない。勿論、鞍上はもう1度福永騎手がいいなぁなんて思ったりもする。

大人になる直前、直後の微妙な時期に好きになり、競馬のロマン、楽しさを思い出させてくれた彼に敬意を表して、この文の結びに変えたいと思う。

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小早川涼風
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