グラフや表を用いて簡潔に示す
ボルドリッジ(ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワーク)は、米国発の「証明された」経営フレームワークです。ボルドリッジはまた、米国マルコム・ボルドリッジ国家品質賞(MB賞)の「審査基準」であり、それをもとに自己診断(セルフアセスメント)・審査を行い、組織の改善点を見つけ、改善します。
実際には、ボルドリッジ審査基準の質問に回答して、それを評価します。 審査項目に回答していくときの進め方について、その最初のステップ、プロセス項目、および、結果項目への回答を紹介しました。
結果項目について、グラフや表の使い方を例で示します。
3.グラフや表を使って下さい
多くの結果は、グラフと表を用いて簡潔に報告することができます。時系列または他と比較する結果は、「正規化」(すなわち、比率を使用するなど規模の要因を考慮に入れて提示)します。たとえば、従業員数が時系列的に異なっていたり、或いは規模が異なる組織の結果と比較したりするのであれば、安全の傾向を報告する場合、従業員100人当たりの労働損失日数で報告することは、労働損失日数の総数で表現するより意味があります。
ボルドリッジ賞の申請書の中で結果の説明は結果の近くにある必要があります。有益または悪い変化を示す重要な傾向には説明が必要なのです。図は、項目と一致する図番号を使ってください。たとえば、項目7.1のための第3図は、図7.1-3です。(下図を例に確かめてください)。
下のグラフは、項目7.1(製品とプロセスの結果)に対して、組織が回答の一部として提示する様なデータを例示しています。組織プロフィールでは、パフォーマンス改善システムの主要な要素の一つとしてシックスシグマが認定されています。不良発生百万分率(PPM)は、評価尺度の1つです。
グラフは、多くの特徴のある結果を明白かつ効果的に図示し報告しています。
図7.1-3 百万件あたりの不良発生数
・評価尺度の軸と単位には、明確に名称をつけます。
・主要なパフォーマンス評価尺度として不良発生百万分率(PPM)でデータのレベルと傾向が報告しています。
・結果は、数年分を提示しています。
・矢印は、下方向がこの尺度にとって良いことを示しています。
・適切な比較が明示されています。
・組織は、一つのグラフで3つの製品ラインを別々に追跡していることを示しています。
・製品ラインBでは過去のパフォーマンスと比較して2021年の不連続または画期的な改善を含め、将来のパフォーマンス改善を予想しています。本文では、この劇的な変化を説明するとともに、予想された変化の根拠として製品ラインAからの重要な学習について述べるのがよいかもしれません。
評点ガイドラインを心に留めてこのグラフを解釈すると、組織のパフォーマンスと成熟度のレベルについて、次の発見に至ります。
・組織全体の最新のパフォーマンスのレベルは非常に優れています。この結論は、業界の競争相手と“世界クラスの”レベルとの比較によって支えられています。
・組織全体は、時系列的に維持された有益な改善傾向を示しています。
・製品ラインAは、現在パフォーマンスリーダーで、不良発生は約5PPMの高パフォーマンスの維持を示すとともに2017年以降はやや有利な傾向を示しています。製品ラインBは、急速な改善を示しています。そのパフォーマンスは、業界の最高の競合先のそれに最も近いものの、製品ラインAの後塵を拝しています。
・新製品として申請書で扱われている製品ラインCは、初期不良の問題を抱えていますが、上向きの方向転換が予想されています(組織は、簡潔にこれらの問題を説明しなければなりません)。
・組織は、全ての製品ラインの不良率の改善を予想しています。製品ラインCは、他より遅れ続けています。製品ラインAは 2022年までにシックスシグマの目標を達成すると予想されています。
※ページは、ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワーク(2021-2022版冊子)のページです。この記事は、同書35-37ページ「審査基準への回答の方法(How to Respond to the Criteria)」を参考にしています。
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筆者らが翻訳した、ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークの要約版、「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」は、米国NISTのウェブサイトからダウンロードできます。ページ下方の Non-English Versions / Japanese を参照ください。