登山にたとえて考える つづき

 「登山にたとえて考える」と題して、「まず、ルールを破れ」というギャラップ社の本の記述を紹介し、ボルドリッジに取り組む際にも「高山病」にならないように注意がいると、少しネガティブな話をしました。

 しかし、この本は、実際には、Q12(クエスチョントゥエルブ)の質問には順番があり、Q1から順に高得点を達成することで、着実に従業員のエンゲージメントを強固にすることができ、強力な活力ある組織をつくることができる、非常に具体的なステップを示していると言えます。

 組織の成熟度を段階的に高めていくボルドリッジの考え方にも近いものがあるので、Q12の12個の質問と登山に例えたその段階(キャンプ)を紹介しておきます。

ベースキャンプ
Q1 自分が何をすべきか、要求されていることがわかっている
Q2 自分の仕事を適切に遂行するために必要な材料や道具類は揃っているか
キャンプ1
Q3 毎日最高の仕事ができるような機会に恵まれているか
Q4 最近一週間で、仕事の成果を認められたり、褒められたりしたことがあるか
Q5 上司や仕事仲間は、自分を一人の人間として認めて接してくれているか
Q6 仕事上で、自分の成長を後押ししてくれている人がだれかいるか
キャンプ2
Q7 仕事上で自分の意見が尊重されているか
Q8 会社のミッション/目標を前にして自分自身の仕事が重要だと感じられるか
Q9 仕事仲間は責任を持って精一杯クオリティーの高い仕事をしているか
Q10 仕事仲間にだれか最高の友だちがいるか
キャンプ3
Q11 最近半年間で、自分の進歩に関してだれかと話し合ったことがあるか
Q12 仕事の上で学習し、自分を成長させる機会を与えられたことがあるか

※Q1~Q12および山登りの比喩は、「まず、ルールを破れ―すぐれたマネジャーはここが違う 」(マーカス・バッキンガム, カート・コフマン著、宮本喜一訳、2000年、日本経済新聞社刊)より引用。

 ベースキャンプ、キャンプ1、キャンプ2、キャンプ3の順に、その中にある質問に必ず「5」の回答(回答は最低位1~最高位5から選択)が返ってくるようにすることがマネージャーの仕事であると説明しています。

 単に従業員のエンゲージメント調査というだけでなく、これを活用して組織力の強化につなげることができる、というのが興味深いところです。

 ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダーは101個の質問ですが、こちらはたった12個の質問でできます。

★★★

補足(蛇足あるいは注意事項)

 Q12は恐らくギャラップ社による正式な日本語版はあるものと思われますが、一般に手に取ってみることができるギャラップ社関係の翻訳本(たとえば、同じ出版社からの「これが答えだ!」(2003年)、「ストレングスリーダーシップ」(2013年)など)では、翻訳者によってQ12の翻訳が異なっています。このためか、Q12を取り上げたウェブ上の解説記事でも、それぞれに異なっています。
 その違いは、訳語の微妙なニュアンスによって、回答に影響を与える(異なった回答になる)程と思われるので、どれを正とするかは注意が必要です。

 例を挙げれば、Q10(10番目の質問)。
 原文は、”Q10 Do I have a best friend at work?”
 別の本(「これが答えだ!」)では、「職場に親友がいるか」になっています。
 ”at work” を「仕事仲間に」と訳すか「職場に」と訳すかで、思い描く仲間の範囲が違ってきます。(「仕事上で」と訳しているものもあります。)
 ”a best friend” を「最高の友だち」と訳すか「親友」と訳すかで、思いの程度が違ってきます。(「良い友だち」と訳しているものもあります。)
 したがって、Q10として与えられた日本語の質問文(訳文)によって、回答者の選択が異なってくる可能性があります。

 ここでは、本書(「まず、ルールを破れ」)の訳をそのまま引用しましたが、本書も、Q12(12番目の質問)の原文にある”This last year"(この一年のうちに)が日本語には反映されていないのが気になります。(Q12の原文は、”This last year, have I had opportunities at work to learn and grow?)



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