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ビジョナリーリーダーシップ再考
ボルドリッジで重視する価値観の1つに、Visionary Leadership があります。
ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークの要約版「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」では、これを「先見の明のあるリーダーシップ」と訳しています。
先見の明のあるリーダーシップ(Visionary Leadership)
組織の経営幹部は、組織のビジョンを設定し、顧客に焦点を当て、明確ではっきりした組織の価値観と倫理観を示し、従業員に高い期待を設定する必要があります。
(「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」より)
「先見の明のあるリーダーシップ」に示されたのは、組織のリーダーに求められる要件です。
①ビジョンを設定する
②顧客に焦点を当てる
③明確ではっきりした価値観と倫理観を示す
④働き手に高い期待を設定する
しかし、これまでボルドリッジの理解を進めてくる中で、この「先見の明のある」という訳語がしっくりこない感じ(違和感)を抱くようになりました。
ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークに登場する重要な用語は、ボルドリッジ用語集に定義されて使用されるので、訳語が何であっても理解には影響がないのですが、この Visionary Leadership は用語集にありません。このため、訳語の語感がそのまま理解につながります。最適な訳語を注意して選ぶ必要があります。
現時点でGoogle翻訳で「核となる価値観と概念」の Visionary Leadershipの項を翻訳すると、「先見の明のある」と翻訳されて出てきます。(2021/10/14 時点)
「先見の明」は、辞書では「物事がおこる以前に見抜く見識。将来のことを見通すかしこさ。」(日本国語大辞典)とあり、「先見の明のある」は、将来の変化の予測に優れているというような意味となります。
しかし、VUCAと呼ばれる時代では、将来の変化を正しく予測するのはますます難しくなっています。また、リーダーに求められるのは、将来の正確な予測よりは、将来どのような状態にしたいか(ビジョン)を描き示すことに比重が移ってきました。
ビジョナリー・リーダーシップ(Visionary Leadership)が、ボルドリッジの「核となる価値観と概念」に登場したのは2000年の改訂からでした。
その頃の対訳版では「ビジョナリ・リーダーシップ」とカタカナ語のままで表記していました。「2011-12年パフォーマンスエクセレンスへ向けての審査基準書【対訳版】」(2012年、日本経営品質賞委員会発行)では、原語は変わらないのですが、訳語を「将来を見すえたリーダーシップ」としていました。
訳語としては、こちらの方が、現在の意味に近い感じがします。
NISTのウェブサイト上の「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」の変更は容易ではありませんが、今後このnoteでは、「将来を見すえたリーダーシップ」あるいは「ビジョナリー・リーダーシップ」を訳語として紹介していこうと思います。
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筆者らが翻訳した、ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークの要約版、「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」は、米国NISTのウェブサイトからダウンロードできます。ページ下方の Non-English Versions / Japanese を参照ください。
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