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働き手エンゲージメントの評価ツールに期待すること

  働き手のエンゲージメントは、ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークの重要な要素の一つです。実際、働き手のカテゴリー5.2では、その評価方法について尋ねています。

 働き手のエンゲージメントを評価方法する手法の一つとして、ギャラップ社のQ12は良く知られています。ボルドリッジ賞を2度受賞したリッツ・カールトンホテルも、このQ12を活用して成果に結び付けていることが、「ゴールド・スタンダード」(ジョセフ・ミケーリ著、2009年、ブックマン社刊)に2章にわたって示されています。

 米国のギャラップ社が公表した2017年の報告では、このギャラップQ12による調査結果として、「日本企業はエンゲージメントの高い『熱意あふれる社員』の割合が6%で、米国の32%と比べて大幅に低く、調査した139カ国中132位と最下位レベル」であったということが紹介されました。

 これについて、3月の日経ビジネス誌に、王英燕教授による「特別誌面講義」として、この結果が必ずしも日本企業のモチベーションが低いことを示すものでないという論調の記事がありましたの、紹介しておきます。

 王氏は、この結果を受けて、「数値だけを見ると日本企業の従業員のモチベーションが低いと読み取れるのだが、果たしてそうだろうか。・・・実は、この結果は個人の欲求よりも集団目標が優先されるアジア圏の文化の影響が大きい。加えて、日本人の場合は、謙遜して否定的に評価する傾向があり、自らを高評価にすることへの抵抗感があることも要因になっているとみられる」と、日本の評価が低い要因を挙げています。(日経ビジネス、2021年3月22日号より引用。以下、同様)

 さらに関連する組織コミットメントの研究で、日本は、欧米と異なり、企業のために最大限の努力を払うことと、企業への愛着は異なるという研究結果を紹介しています。
 企業への愛着(エンゲージメント)が低くても、企業のために最大限の努力を払う(可能性がある)ということを言っているようです。

 王氏はさらに、日米中の組織感情について、その違いと日本には「長期的な信頼関係」という点で強みがあることを紹介しています。

 強みと弱み(ボルドリッジでは「改善の機会」と呼びます)それぞれを明確に認識することは重要です。
 変化が求められる時代に、強みを認識しないまま、本来変えてはいけないところを変えてしまっては、組織の強みを失ってしまい、将来の成功が約束できなくなるからです。

 ボルドリッジの自己評価(あるいは第三者評価)は、組織の改善の機会とともに強みも明確にします。示された強みの中には、組織が自身では強みと認識していないもの、気づいていない強みも含まれていることはよくあります。

 さて、王氏の講義に戻れば、日本の働き手の組織との長期的な信頼関係が、日本の組織の調味であるとすれば、それを強みとして残していく、あるいは強化していくかがその次に問われることです。

 ギャラップQ12では、その結果が良ければ、業績向上に結び付くことが、統計的に示されています。

 もし、ギャラップQ12に代えて、日本の良さも評価する新しい評価指標を提案するのであれば、その数値の向上が業績向上にもつながることを示してくれることを期待しています。

 
 

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