成功とイノベーションに焦点を当てる
イノベーションのフレームワークを紹介しました。
ボルドリッジでは、2000年の改訂から「イノベーションに取り組む(managing for innovation)」ことが経営にとって大切な指導原理である「核となる価値観と概念」の一つに加えられました。
ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークを活用して組織力を向上することで、イノベーションが経営の重要なツールとなっている組織、すなわち計画的にイノベーションを起こせる組織になることができます。
このように紹介しましたが、2021-2022年版の改訂では、それまで「核となる価値観と概念」の一つであった「成功に焦点を当てる」と統合され、「成功とイノベーションに焦点を当てる」になりました。親和性の高い2つの価値観が一つにまとめられました。
成功とイノベーションに焦点を当てる
(Focus on Success and Innovation)
組織の現在と将来の成功を確実にするには、組織とその環境に影響を与える短期的および長期的な要因を理解することが求められます。それにはまた、組織のイノベーションを推進する能力も求められます。
イノベーションとは、利害関係者に新しい価値を創造することを目的として、製品やサービス、プログラム、プロセス、業務運用、ビジネスモデルをより良いものにするために、意味のある変更を加えることを意味します。
(出典:Baldrige Core Values and Concepts、翻訳:筆者)
「核となる価値観と概念」では、すべての成熟度レベルの組織にイノベーションが存在する可能性があると述べています。イノベーションは組織の起源でさえあるかもしれません。
2021-2022年版の改訂では、さらに、主要用語集のイノベーションの定義に、これまで対象としていた製品・サービスの変革、プロセスの変革、組織変革に加えて、社会の幸福(societal well-being)の向上のために意味のある変更を加えるという概念が含まれるようになりました。
イノベーション
製品、プロセス、組織、あるいは、社会の幸福を向上し、利害関係者に新たな価値を創造するために、意味のある変更を加えること。イノベーションの結果は、不連続すなわち画期的な改善です。
(Baldrige Key Terms 2021-2022より引用。翻訳、筆者)
これもコロナを含む世界的な混乱の時代背景から入ってきたものと推察されます。
ボルドリッジは、改善の文化を組織に定着し、継続的改善を進めることで、イノベーションを生み出す組織になるとしています。
イノベーションに「改良的イノベーション」と「破壊的イノベーション」とがあるとすれば、「改良的イノベーション」を指しているように読めます。
「破壊的イノベーション」は、それまで主流だった企業・組織あるいは市場から見れば「破壊的」ですが、そのイノベーションを生み出した組織においては、継続的な改善によって、機能や品質向上、コストダウンなどに取り組んできた結果です。ただ、最近はそのスピードが上がってきました。
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ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークの要約版、「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」は、米国NISTのウェブサイトからダウンロードできます。ページ下方の Non-English Versions / Japanese を参照ください。
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