俊敏な経営
俊敏性(agility)はボルドリッジにおいて「核となる価値観と概念」の一つに含まれる重要な概念です。デジタル時代を迎えて経営にさらなるスピードが求められる環境では、 意思決定と行動を素早く繰り返す俊敏な経営が求められます。
俊敏な経営は、agile(俊敏な)をそのままカタカナにして「アジャイル経営」とか「アジール経営」などと呼ばれることが多くあります。
先日の経済産業ビジネススクール’時代セミナー’「二水会」第7講座(2021年3月10日開催)では、このアジール経営をテーマに、その必要性と先行事例について話がありました。
高梨智弘講師は、PDCAサイクルをイノベーション経営に拡張したSPDLIサイクルをもとに、戦略をもとに計画し実行する従来の経営から、戦略から即実行に移す経営をアジール経営としています。
従来の、経営戦略から経営を作るのではなく、戦略を即実行に移し、SPDLIサイクルを迅速に回転する経営がアジール経営です。
市場や顧客の要求に迅速に対応し効率を上げて競合に勝つという目的からだけではなく、自然環境の変化はもちろん、コロナを含めた自然災害など、予期せぬことが次々に起こる社会環境に、社会的存在としてその変化に対応し、社会に価値を提供し続ける組織であるためには、アジール経営が必要であるとしています。
例えば、これまでは効率やコストを考えて、目的地までトラック輸送を採用していた企業は、これからは、途中に二酸化炭素の排出が少ない鉄道輸送を挟むなど、環境への影響をコストに優先して考慮しなければいけなくなりました。
顧客や市場だけでなく、SDGsなどの社会要請や社会全体の変化にも迅速に対応することが組織に求められるようになったのです。
経済産業新報に掲載された梶山弘志経済産業大臣の年頭挨拶にも触れ、「今年こそ、この危機を乗り越えるため、生活様式のみならず、産業構造や社会システムを転換しなければなりません。ウィズコロナ・ポストコロナの時代に向け、取組を強化すべき分野は、『デジタル化』、『グリーン社会』への転換、『健康・医療』分野の新たなニーズへの対応、サプライチェーンの再構築をはじめとする『レジリエンス』の強化です」という言葉から、いままさに社会は大きな変化の時期にあり、それに企業も追随することが重要であるとして、アジール経営の必要性を強調しています。
アジール経営を実現する方法論として、高梨講師は、点線のピラミッドというユニークな組織形態を提案します。
組織はしばしば、トップを頂点としたピラミッドや顧客を上位に置く逆ピラミッドで表現されますが、これを構成する線が実線ではなく点線であり、外部や内部の情報共有が「自然に」行われ、内部・外部の知を自由に活用できる状態にあることを示しています。
こうした説明の後、講義では、アジャイル開発ツールなども含め、アジール経営の事例をいくつか紹介しています。
経済産業ビジネススクール’時代セミナー’「二水会」は、会場(主に衆議院議員会館会議室)のほかオンライン(ZOOM)やDVDでも参加できる形態となっています。(DVDはいまからでも参加可能です。)
次回第8講座は4月14日(水)。このnoteでもまた紹介いたします。