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インテリジェントリスク

耳慣れない言葉かもしれません。英語では intelligent risks、「知的なリスク」と直訳はできますが、それでも意味は分かりません。適切な訳語が見つからないので、カタカナとしました。

組織としてイノベーションに取り組むには、とても重要な概念なので、ここで紹介しておきます。

インテリジェントリスクは、うまくいくかどうか確実でない機会について、次のように評価できるものを言います。

  うまくいった場合に        うまくいかなかった場合に
  得られる可能性のある      被る可能性のある
  利益               害や損失

インテリジェントリスク図

インテリジェントリスクを取るには、失敗を許容する風土、および、必ず達成できるとわかっていることにだけに取り組むのではイノベーションが生まれないという認識を持つことが必要です。
そうした組織文化・風土を作ることが、イノベーションに向けた取り組みをサポートすることになります。イノベーションに取り組む組織は、当初は、その一部は失敗につながることを認識しながら、成功の可能性に投資しなければなりません。

許容できる害や損失は、組織によって違いますので、インテリジェントリスクであるかどうかの判断も組織によって異なります。望ましいのは、うまくいかなかった場合の害や損失が限定的で、うまくいった場合の利益に上限がない機会です。

人の場合で考えると、インテリジェントリスクの簡単な例は、好意を寄せている彼/彼女を初めてデートに誘う場合(機会)です。断られるのが怖くて実行を躊躇することも多くあると思います。けれど秤にかけてみると、デートに誘ってみて断られても、それは、拒絶されて一時恥ずかしい気持ちになるだけです(ダメなことが早くわかってなお良かったと前向きに捉えることもできます)。でもデートに誘ってみてOKをもらえたら、それは生涯の良い関係につながるかもしれません。

あのとき思い切ってやっておけばよかった、と後から悔やむことの多くはインテリジェントリスクであったかもしれません。(株価が急に上がったからと言って、あの時買っておけばよかった、というのはインテリジェントリスクではありません。株の利益・損失は予測できないからです。)

組織においては、特定した機会について、そのリスクの評価(うまくいった場合の利益、うまくいかなかった場合の損失)を行うことが大切です。

コロナの時代においては、変わらなければ(何もしなければ)、それがリスクになります。やってうまくいかなかった場合、に加えて、何もやらなかった場合についても、害や損失を評価してリスクの扱いを検討することがますます重要になってきています。

ボルドリッジでは、むしろこちら(後者)の方を指して、インテリジェントリスクと呼んでいます。

インテリジェントリスク(INTELLIGENT RISKS)
その機会によって得られる可能性のある利益が、その機会を活かさなかったときに組織の未来の成功に対して及ぼす可能性のある害や損失を上回る機会のこと。
(2019-2020 Baldrige Excellence Framework, BPEP, 2019より。翻訳筆者)

どちらの考え方もリスクの評価としては重要です。

ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークは、組織としてのイノベーションにはインテリジェントリスクを取ること(intelligent risk taking)が必要であると説明しています。
ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークの要約版、ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー(Baldrige Excellence Builder)は日本語で読むことができます。
「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」は、米国NISTのウェブサイトから無償でダウンロードできます。
下方の Non-English Versions / Japanese を参照ください。英語版とページ、形式を合わせてあり、対訳版としてもご欄いただけます。




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