関わる全ての人を大切にしよう
ボルドリッジ(ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワーク)は、米国発の「証明された」経営フレームワークです。ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークは
それは時代の変化に従って進化しています。
ボルドリッジは11の核となる価値観と概念を基盤に置いていますが、その一つ「人を大切にする」を見ることで、そうした進化の一面が確認できます。
人を大切にする(Valuing People)
成功する組織は、働き手と組織に関与しているその他の人々を大切にします。それらは、顧客、地域の人々、サプライヤーやパートナー、および組織の行動の影響を受けるその他の人々を含みます。
(ボルドリッジ「核となる価値観と概念」より。翻訳筆者)
1998年には「従業員を大切にする(Valuing Employees)」としていた価値観が、2000年には「従業員とパートナーを大切にする(Valuing Employees and Partners)」となりパートナーに範囲が広がりました。それが2008年から「働き手とパートナーを大切にする(Valuing Workforce members and Partners)」となり、従業員の範囲がパートやボランティアに広がりました。そして2015-2016年版から現在の「人を大切にする」になりました。
外部との連携に目を向けたとき、バリューチェーンがバリューネットワーク、ビジネスエコシステムに拡張され、組織の活動がお互いに影響しあう外部の範囲も拡大してきました。
このように、組織が大切にしなければならない「人」の範囲が広がってきました。
成功する組織が大切にするのは、働き手(従業員、パート、ボランティアなど)のほかに、組織に関与している他の人々です。
この(働き手以外の)「他の人々」には、
・顧客
・地域の人々
・サプライヤーやパートナー
・組織活動の影響を受けるその他の人々
が含まれます。
このために、ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークが求める模範的なリーダー、ビジョナリーリーダーには、この核となる価値観と概念に沿って次のような行動が求められます。
1. 有意義な仕事、働き手のエンゲージメント、パフォーマンスに対する責任、人材開発、および働き手メンバーの幸福に焦点を当てた組織文化を構築し強化します
2. 安全で信頼でき、協力的な組織環境を構築します
3. 社内外の人々や利害関係者グループとのパートナーシップを構築します
4. 働き手、パートナー、協力者の多様性を活用する公平性と包括性の文化を構築します
組織に関係するすべての人々を大切にする、幸福にすることが、組織の仕事となりました。
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ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークには、より詳しく核となる価値観と概念の説明があります。「人を大切にする」は別の機会に深掘りしますが、ここではその全文を見ておくことにします。
人を大切にする
組織の成功は、有意義な仕事、明確な組織の方向性、学ぶ機会、パフォーマンスに対する責任から恩恵を受け、熱意を持って取り組む(engaged)働き手にますますかかっています。その働き手はまた、安全で信頼でき、協力的な環境を持っている必要があります。成功する組織には、働き手、パートナー、協力者の、多様な背景や特性、知識、スキル、創造性、および行動の動機を活用する、公平性と包括性(equity and inclusion)の文化があります。公平性を促進するということは、すべての顧客と働き手が公平に(fairly)扱われ、すべての働き手が潜在能力を最大限に発揮できるようにすることを意味します。包括性(inclusion)とは、参加を後押しし、帰属意識を高めることを指します。成功する組織はまた、顧客、地域の人々、株主、および組織の活動に影響を受けるその他の人々を含む、組織に利害関係を持つすべての人々を大切にします。
働き手の人々を大切にすることは、働き手のエンゲージメント、成長、幸福に責任をもって取り組むこと(committing)を意味します。働き手を大切にする際の主な課題としては、(1)働き手の成功に対し、組織のリーダーが責任をもって取り組んでいることを示すこと、(2)通常の報酬制度を遥かに越える動機づけと称賛を提供すること、(3)時によって変化する職場や生活のニーズに合わせた柔軟な仕事のやり方を通じてワークライフバランスを支援すること、(4)多様な働き手のための包括的で(分け隔てない)公平な環境(an inclusive, equitable environment)を創り出すこと、(5)組織内での能力開発と成長を提供すること、(6)中断や移行中にサポートを行うこと、(7)組織の知識を共有して、働き手が顧客に対してより良いサービスを提供し、戦略目標の実現に貢献できること、(8)イノベーションを達成するためにインテリジェントリスクを取ることを奨励する環境を創り出すこと、(9)働き手および組織がパフォーマンスに対して責任(accountability)をもつシステムを開発すること、および(7)多様な働き手のための包括的な環境を創り出すこと、などがあります。リモートワークの増加に伴い、地理的に分散した働き手が有意義な仕事、明確な組織の方向性、学習の機会、およびパフォーマンスに対する責任(accountability)から便益を得られるようにすることが、課題に加わりました。
リーダーを含む働き手メンバーの成功は、彼らが学ぶ機会があるかどうかにかかっています。この学習には、組織の将来のコアコンピタンスに備えて人々を準備することが含まれます。職場内訓練(OJT)は、交差訓練を行い(cross-train)、訓練を組織の要員充足ニーズ(capacity needs)と優先度により密接に紐付けるための費用対効果の高い方法を提供します。組織がボランティアに依存している場合は、ボランティアの個人的な能力開発と学習も検討することが重要です。
全体の到達目標を達成するために、成功する組織は、内部および外部の協力関係や協働的で多数組織に亙る提携からなるエコシステムを構築し、重きを置きます。内部の協力関係には、労使間の協力などがあります。内部の協力関係を形成するには、柔軟性、応答性、学習、および知識共有を向上させるために、業務単位や地区をまたいだ人同士、あるいは、従業員とボランティアの間のネットワーク関係を作成することなどがあります。
製品やサービスがますます複数分野に亙るものになるにつれて、組織は、業界外の競合他社や組織との伝統的ではないパートナーシップ、提携、コンソーシアム、バリューネットワーク(訳注:バリューチェーンの拡張)を含む、新しいビジネスモデルやエコシステムなどが必要となります。
(ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークより引用。翻訳筆者)
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筆者らが翻訳した、ボルドリッジ・エクセレンス・フレームワークの要約版、「ボルドリッジ・エクセレンス・ビルダー【日本語版】」は、米国NISTのウェブサイトからダウンロードできます。ページ下方の Non-English Versions / Japanese を参照ください。