見出し画像

「融合」に情熱をかけた人

 2020年9月から毎月第二水曜日に経済産業ビジネススクール’時代’セミナー「二水会」第1期前期12回が始まりました。このnoteでも何度か紹介させていただきました。

 本セミナーは、「DX時代に、経営をどう変えるのか、経営管理の新原則と実行のポイントを追求する」ということを中心的なテーマとして、第1期前期12回は次のような内容で開催されました。

0.プロローグ
第1講座 2020年09月09日
「今なぜ、変化する時代の実践ではなく時代の新経営論理なのか?」⇒ 時代セミナー全体概要解説!
I.環境変化を取り込むまったく新しいパラダイム思考
第2講座 2020年10月14日
「SDGsとして企業経営の枠組みと概念を考える」⇒“s”= 目標は一つではない!理念・ビジョン・戦略の相関図を描けるか?
第3講座 2020年11月11日
「ドラッカー経営を超える時代が来た!」⇒ 顧客って誰? 「全ての利害関係者関係図」を目に焼き付ける!
第4講座 2020年12月02日(※第1水曜日)
「イ・ショク・ジュウが変わった!」⇒「衣食住➾異飾充➾意触柔➾畏蝕重➾移色従」へ!
第5講座 2021年01月13日
「DX時代のloT・AI・ビッグデータを感じられるか?」⇒専門家でない経営者にデジタルが解るか?DX成功のポイントとは?
II 変化に合わせた組織体制の構築
第6講座 2021年2月10日
「新旧混在の組織の進化を受けとめられるか?」⇒過去・現在・未来の組織ってどう違うの? 図示で心に刻めるか?
第7講座 2021年3月10日
「アジール経営と新しい組織の出現!」⇒スケジュールに沿った前例主義から決別できるか?柔軟な組織でも良いのか?
第8講座 2021年4月14日
「内の組織:管理しないリーダーシップとファシリテータとは!」⇒天空にいつまで居られる?リーダーかマネジャーか?
第9講座 2021年5月12日
「外の組織:自由な個の点線の組織が本当に動くのか?」⇒バラバラの個の管理方法で自由な動きを統制できるか?
III 新しい経営管理との闘い
第10講座 2021年6月9日
「経営品質の概念と知の経営の本質!」⇒ 全体を見れるか、心に語れるか?
第11講座 2021年7月14日
「野中郁次郎KMの進化系『知の経営』とは?」⇒知識を知恵に、知恵を知心に昇華させ利活用できるか?
第12講座 2021年8月11日
「新しい内部統制の考え方と800の評価基準の本質!」
⇒ 内から外へ、統制の意味は何?どこまで巻き込めるか?

 実はこのあとの第1期後期12回のテーマも決まっていて、この全体で主任講師である高梨智弘氏の知識・ノウハウをすべて伝えようという意欲的なものでした。
 高梨氏は講義の中で、講義のスライドで使用する図表などすべて自由に使ってよい(ただし、高梨氏のコピーライトはそのままで)、として次代に知識・ノウハウを伝え、それらを各人のビジネスなどに活かしてもらうことを意図されていました。

 高梨氏は、第2講座で次のスライドを示して、これまでの自身の活動を振り返って、氏が力を注いできたことが「融合」という言葉に集約されると話をされました。

画像1

 経営品質:日本経営品質賞は、1995年に米国のマルコム・ボルドリッジ国家品質賞を手本にして創設されたものです。高梨氏は、その創設に関与されました。当初はほぼその審査基準をそのまま導入しましたが、その後徐々に、日本の組織風土に合わせて改良されて来ました。米国的な経営と日本的な経営の「融合」であると言えます。

 ITコーディネータ(資格制度)は2001年、通商産業省(当時)による国家プロジェクトの一環として設けられたものです。高梨氏はその創設にも中心的な役割を担い、そのごしばらくITコーディネータ協会の理事としても活動されました。特に、IT面で立ち遅れていた中小企業にITの導入を進めることを目的としていました。経営とITの融合です。ここで経営の理解には、経営品質をベースとしたテキストが使われていました。

 病院や医療機関にも経営という考え方が必要ということで、公益社団法人日本医業経営コンサルタント協会に参画され活動されました。医療と経営の融合です。自身でも医療経営総合研究協会を立ち上げられています。

 また、海外で立ち上がった技術経営(MOT)を早期に導入したいと新潟大学から声がかかり、教授として技術経営の講座を担当されました。技術と経営の融合です。

 学会関係は、日本ナレッジ・マネジメント学会の設立にも尽力されましたが、その後より実践的な活動ができる場を作りたいと、日本イノベーション融合学会(IFSJ)を創設しました。会員同士の交流の中から、新しいビジネスや協働が生まれています。DX検定や内部統制評価基準などもこの活動の中で出てきたものがベースとなっています。最近では2021年4月に「知のオリンピック」プレ大会を開き、「知のオリンピック」開催に向けて準備を進めらえているところです。

 イノベーションは、既存の知の新しい組み合わせ、まさに「融合」。高梨氏が目指されたものは、社会に必要なイノベーションでした。

 ここでは紹介しませんでしたが、第2講座ではスライドにある「①合算の知」の話も氏らしいユニークな発想で面白く聞きました。

 ここに挙げたものばかりでなく、数多くの企業や組織、学会などで要職を引き受け、組織間の横をつなぐ「融合」の活動に尽力されていました。

 残念ながら、高梨智弘氏は、第1期前期第12講の講義を担当された翌週、8月16日、76歳の誕生日に急逝されました。年の終わりを迎えるにあたり、氏の功績を忍び、感謝を伝えることといたします。




いいなと思ったら応援しよう!