「なんでもできる」をデザインに落とし込む【necfru×Goodpatch Anywhere】
フルリモートデザインチームのGoodpatch Anywhere(以下、Anywhere)は、2022年3月から同年7月まで、株式会社ネクフルのウェブサイトのデザイン改修をサポートいたしました。ネクフルが持つ柔軟な対応力をサイト来訪者に届けるため、デザイン業務やキャッチコピーの開発、事例の整理など、さまざまな領域で業務に併走しました。本記事では、ウェブサイト改修における具体的なプロセスとともに、プロジェクトの様子をご紹介します。
10年ぶりに「やっぱりGoodpatchだな」と思ってもらえた
——ネクフルの代表である草薙さんと、株式会社グッドパッチ(以下、Goodpatch)代表の土屋は、10年前にお仕事でご一緒しているんですよね
Goodpatch 代表・土屋尚史:
そう、ネクフルさんは創業当初のお客さまなんです。
本当にお久しぶりです、草薙さん。当時は秋葉原の事務所で、社員も今のようにたくさんいるわけでもなくて、5人ぐらいだったんじゃないかな。ネクフルさんは、「Gunosy」と一緒にやった直後にお声がけしてくださったんですよね。
株式会社ネクフル 代表・草薙俊介さま:
そうそう、まさに「Gunosy」を見て問い合わせたんです。当時、立ち上げたばかりだった動画サービスを作り直すためにお声がけしたんですよね。ネクフルのロゴも、その頃のGoodpatchが作ってくれたものです。案をいくつか出してもらって、その中から選んで……。
Goodpatch 代表・土屋:
懐かしいですね。10年ぶりにお問い合わせいただいたときは、久しぶりだったのでびっくりしました。問い合わせフォームの内容を見てすぐに「ネクフルさんだ!」ってわかりましたよ。「草薙さんとだけは話さなきゃ」と思って、最初のヒアリングから同席させてもらいました。
Goodpatch Anywhere 事業責任者・齋藤恵太:
「初期のお客さんだよ」って土屋さんが社内メンバーに教えてくれたんですよね。重要なお客さんだからしっかりやるように、って。ところで、10年ぶりにお声がけくださったのには、どんな経緯があったんですか?
ネクフル 代表・草薙さま:
創業から10年経って「なにもしていなくてもお客さんがきてくれる」という状態にはなったんですが、ネクフルはこういうことをやっています、という情報がウェブにないままだったんです。新しいお客さんにはいつも、僕が作った資料を見せながら説明するような状況で。そろそろ、ちゃんとサイトを作った方がいいなと思って、いろんなデザイン会社を探しました。最初からGoodpatchのことは頭にあったのですが、「あんまりすぐに頼るのもなあ」という気持ちもあって(笑)。
Goodpatch 代表・土屋:
なるほど(笑)。
ネクフル 代表・草薙さま:
でも、10年前にGoodpatchと一緒に仕事をした際に「デザインは感覚ではなく理論だ」という考え方に触れたんですよね。それがひとつの判断基準としてありました。センスだけではなく、理論がしっかりしているデザイン会社に頼みたいと思ったんです。ビジュアルがいい感じのものを作るだけではなく、僕が言葉にしていることをどうデザインに落とし込んでくれるのか、イメージできるようなチームがいいな、と。社内の人間ともいろいろ相談して……。「やっぱりGoodpatchだな」ということになったんですよ。
Goodpatch 代表・土屋:
ありがとうございます。とても嬉しいです。
決まった形がないものを、どう伝えていくか
——期待されていたような「草薙さんの言葉をデザインに落とし込む」ことは、できていましたか?
ネクフル 代表・草薙さま:
期待通りでしたし、当時よりもレベルも上がっていましたね。頼んでよかったと思っています。僕が話したことだけをデザインに落とし込むのではなく、クライアントのことを考えてペルソナを作ったり、コピーを作ったり、事例をヒアリングしてくれたり。業界の知識や共通言語がない状態から、勘違いをせずにしっかり聞いてくれた。僕が何かを丸投げされるようなシーンは、なかったんじゃないかな。
Anywhere クオリティマネージャー・ハマダ:
今回、草薙さんがほぼお一人でネクフルさん側の担当をしてくれましたが、共同作業の負荷は高くなかったですか?
ネクフル 代表・草薙さま:
みなさん一人ひとりが理解してくれたうえで、いろんな作業を分担してくれていたから、重くなかったですよ。ミーティングの進め方もよかったです。一日30分という短い時間で、いつもアジェンダを事前に用意して、時間内にやり切る。このコントロールはすごいなと思いました。
——改修前のサイトで課題に感じていた点は、解決されましたか?
ネクフル 代表・草薙さま:
そうですね。課題というか、ほぼ「無」の状態からのスタートだったから。ネクフルは「こういうサービスがあります」と、わかりやすく取り出して見せられるような決まった形がある会社ではないんです。「動画配信の仕組みを作れますよ」というざっくりとした特徴がまずあって、そのうえで過去にどんなものを作ってきて、他社と比べたらどんな強みがあるのか、という「違い」が細かく存在する。それをどうやってわかりやすく見せるかが課題だったんですよね。
そこで今回のサイトでは「大体、できます」という言葉を採択しました。あえてざっくりとした表現で伝えることで、ぶつけてみたら答えがもらえそうだと思ってもらえるようなサイトになったと思っています。
Anywhere 事業責任者・齋藤:
「メニュー化すればいいわけではない」というポイントは、Goodpatchの抱える悩みとよく似ていると感じています。言うなれば「なんでもできる」状態なわけですが、「なんでもできる」と言葉にするだけでは必要な人に届かないし、シンプルなメニューにして見せるのも、実態と離れてしまう。このジレンマは、Goodpatch社内でも自分ごととして考えて、取り組んでいくべき課題だと思っています。
Anywhere UXライター・岡田:
サイトで使用する言葉については、みんなで一緒に考えましたね。コピーもタグラインもマイクロコピーも、一人のライターが考えるのではなく、共同作業をしながらアイデアを広げていって、ピッタリくるものを探った。結果として、ライターがまとめた無難な言葉ではなく、草薙さん自身の書いた「大体できる」という表現が残りました。当事者だからこそ発することができる強い言葉が、メンバーの心にも刺さったんだと思います。
Anywhere UXデザイナー・下村:
具体的な事例をわかりやすく見せることも大事にしましたね。「大体、できます」の詳細を伝えるためには、過去に手がけた事例が参考になりますから。どういう事例の紹介が必要なのかは草薙さんが言語化してくれていたので、そこからサイトの構成を考えていきました。「都心部だけではなく地方にも注力していきたい」「小規模な案件も積極的に受けていきたい」と。そこで、地方案件や、小規模な事例を目につきやすい場所に配置するような構成にまとめました。都市部の大規模な案件以外の担当者の方でも「相談してみよう」という気持ちになれるデザインを目指しました。
コミュニケーションの量を担保することで質を上げていく
——チームとしてプロジェクトを進める中で、印象に残ったポイントはありますか?
ネクフル 代表・草薙さま:
会議に参加していると、「僕がいてもしょうがないな」という瞬間があるものなんですが、今回はそういうことが一切なかったです。プロジェクトをスタートする際に、毎日30分の定例ミーティングをすると聞いて「大丈夫なのかな?」と思ったんです。フルリモートチームだったこともあり、みんなのモチベーションが保てるだろうかと心配でした。
でも実際に何ヶ月か一緒に働いてみると、モチベーションも技術も一定のレベルに保たれていた。クライアントとの向き合い方についても、会議中につまらなそうにしている人が一人もいない。これって実はすごいことだと思っています。差のないチームをプロジェクトごとに作っている、というのは羨ましくもあり、真似したいポイントでもありますね。
Anywhere 事業責任者・齋藤:
Anywhereはフルリモートチームなので、チームの文化をどうやって作っていくのか、どうやって「うまくいっているチーム」を培養するのか、という点には気を配っています。まずはマインドセットを重視します。土台の関係をよくしておけば、みんな伸び伸びと働くことができる。文化を体現している人がある程度いれば、人から人へとチームの文化が伝播していく。個々の能力よりもコミュニケーションを大事にするスタンスですね。
Anywhere クオリティマネージャー・ハマダ:
どんな案件でも、時間を決めて集まるようにしておくとうまくいくんですよね。「この枠はみんなで集まろう」と決めておいて、コミュニケーションの量を担保する。手ぶらでもいいから集まって、話し合ったり共同作業をしたりする。
Anywhere UXデザイナー・下村:
実は、草薙さんとの定例ミーティングとは別に、Anywhere内部でも毎日内部ミーティングを開催していたんです。内部でのコミュニケーションの量が多かったからこそ、草薙さんとの会議の準備がしっかりできて、タスクも溜まらなかったし、アジェンダをしっかり用意することもできたんだと思います。
私たちのチームは動画配信に関するサイトの経験が豊富にある訳ではなかったので、とにかく途中経過を共有することを重視して動きました。なるべく作って、はやく出す。完成度が20%や30%の状態でも、とにかく出して、草薙さんに見てもらう。それができる関係をネクフルさんと築けたのがよかったと思います。
Anywhere クオリティマネージャー・ハマダ:
途中経過で出したものに対して、草薙さんがしっかりフィードバックをくれたのもありがたかったですね。いい点やダメな点を、理由と一緒に教えてくれる。結果としてスケジュールを短縮できたので、ウェブサイトだけではなく営業用の資料も、案件の期間内・予算内に追加で制作することができました。
Anywhere UXライター・岡田:
営業資料、作りましたね。「やりたいな」という話は、こっそり内部でしていたんですよね。
Anywhere UXデザイナー・下村:
そうですね。サイトの問い合わせ内容を見ると、「資料請求」がとても多かったんです。問い合わせ本文が100文字以下のものに絞れば、資料請求は全体の70%を占めていました。草薙さんのお話でも、クライアントは複数の会社の資料を取り寄せて比較・検討していると聞いていたので「資料も作りたいな」と。そう思っていたら、スケジュールが短縮できたので「今だ!」という感じでした。
UXデザイナーのリソースに余裕ができたタイミングで営業資料の構成に着手しました。構成ができたら、ちょうどサイトのデザイン業務がひと段落ついたばかりのUIデザイナーにバトンタッチ。UIデザイナーが営業資料のデザインを頑張っている裏で、UXデザイナーはレビューの準備をする。うまく隙間を塗って作業を進められたのがよかったですね。
動画配信のサービスにおいて、業界を担っていく重みとやりがい
——リニューアルしたネクフルのサイトを、どのように運用していきますか?
ネクフル 代表・草薙さま:
これからは、サイト経由での問い合わせを増やせるよう、解析や広告に力を入れていきたいと思っています。広げていくための土台はできたな、という気持ちですね。
——動画配信に関するサービスで、今後注力していきたいポイントはどんなことですか?
ネクフル 代表・草薙さま:
まずは、「地方案件への対応」です。規模の小さな案件は全国的に増えていくと思っています。都心部の大企業でなくても、動画を使ってやりたいことがある、でも大企業のような予算はない、という相談にネクフルは対応することができます。技術的な進歩をしっかりキャッチアップできていたら、対応できるはずなんです。最新の技術が登場すれば、実現のコストは下がるから。それを還元したい。動画配信をするとお金がかかると思っている人に、私たちのサービスを届けたいです。
それから、これは少し大きな話ではありますが、「業界への責任」です。動画配信のサービスに競合が増えることは、基本的にあまりないんです。技術的な進化のスピードが速く、ナレッジの蓄積も大きいので、ポンと参入できる業界ではない。プレイヤーが限られている。だからこそ、責任も大きいです。例えば、AWSのサーバーを使ってシステムを提供して、もしもネクフルが失敗したら、「あの会社はダメ」ではなく「日本はダメ」だと言われてしまう可能性がある。そのようなポジションになってきたので、気を引き締めていかなきゃなと。そして、動画配信の仕組みを作っていくことで、世の中をよくするお手伝いができたら、と思っています。
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