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遠隔密着共創組織のXXトークセッション②遠隔組織を作るポイントとは

「遠隔密着共創組織のXX」というタイトルの元、新しい働き方について考えるGoodpatch Anywhereのイベント。
Goodpatch Anywhereは「遠隔密着共創組織」のフルリモートのデザインチームを立ち上げた経験から、様々な制約の中でも働きがいやキャリアを諦めない働き方の可能性を見いだしてきました。
今回はモデレーターに西村 創一朗さん(パラレルワーカー・副業研究家として、個人や企業のコンサルティング及び講演・セミナーも多数実績)、Goodpatch Anywhere事業責任者の齋藤恵太、
そしてゲストは、Anywhere設立のきっかけともなった小笠原 治さん(さくらインターネット株式会社 フェロー / 株式会社ABBALab 代表取締役)をお迎えしました。

「遠隔密着共創組織の作り方」というテーマのもと、3名が繰り広げる90分のトークセッション、第二章は「遠隔組織を作るポイント」についてご紹介します。

第一章「働く場所の変化やフルリーモートでもエンゲージが高い理由」はこちら

遠隔密着共創組織を作るポイント

西村:
いま参加してくださっているみなさんの会社が、どういう組織かっていうところにもよるんですが、これからこういう遠隔密着共創組織にシフトして行くことを考えたときに、気をつけるべきポイントをお伺いしたいです。
企業目線でマネジメントのメリットデメリットも含めて、どんなところが重要になるかっていうのを、ぜひそれぞれにお聞きしていきたいと思っているんですけど。

齋藤:
いやあ、難しいですね。大事なポイントとしては、そもそもの考え方がだいぶ変わっていることに気づかなきゃいけないと思うんですよね。このコロナの状況になって、みんな強制的にリモートワークにもなっていくと思っていて。いい会社は新しいチャレンジをした人を「よし、よくやった」ともっと推奨していける空気を作れるんですけど、そうじゃない会社は、「お前が変なことやるから、面倒なことになったじゃないか」っていう空気が蔓延するんですね。そうなった組織は新しいチャレンジとか絶対しなくなる。そこでチャレンジに対する耐性がきっぱり別れるんですよね。
今後、変化が激しい世界になってどう対応するかを考えないといけない時に、どっちの会社が生き残るんだろうってなるんです。もう相当な差が出ているんじゃないかと思いますね。
20年後に生き残っているかを考えたときに、そのベースのマインドを明確に、意識を持って変えていくしかないんじゃないかなと思います。生き残るために変化するのは大事だし、まずは経営側でチャレンジしていいんだよという宣言ができるかとか、失敗したときのフォローがちゃんとできるのかっていうところは、やっていかなきゃいけないです。ボトムアップだけではたどり着けないところは、かなりあるんじゃないかなと思っています。

西村:
そこめちゃめちゃ難しいですよね。減点方式の会社が多い中で「決められたルールを逸脱したチャレンジはやめてください」みたいなカルチャーを持った会社がまだまだあります。製造業とかだと、いかに不良品を出さないかみたいなことが前提になるので、そういう性悪説的なマネジメントスタイルやチャレンジを許容しないカルチャーがまだ強いと思います。これって本当に実現するんですかね?

齋藤:
簡単ではないですし、絶対に失敗する前提で考えなきゃいけないですよね。100%成功することは現実的にないですし、むしろリアル視点をちゃんと持てるかが大事かなと思います。

西村:
小笠原さんどうですか?いろんな組織を見られている中で。

小笠原:
なんか「答え合わせをしている集団」だとしんどいと思うんですね。例えば新しい働き方を入れられたとしても、それは発言力の強い人が言ったことだからやっているとか。そこに対しての答え合わせをしているようだったら、新しい働き方を入れること自体を考え直したほうが良くて。
今の自分たちがより心地よく、お客さんにとっても良い状況を作っていこうとした時に、どういう働き方をすべきかを問うてないといけないですよね。その問いを共有できるのが大事だと思っていて。
例えば、さくらも社長がリモートって言ったからリモートなわけじゃなくて、そうするのがCS(顧客満足)とES(従業員満足)の両方にとっていいのではないかっていう意識から始まっているんですよ。今度はそれをどう伝えていけるかっていう、さっきの情報共有の仕方みたいな話にもなってくるんですけど。
共有と共感をし合えていれば、新しい働き方か古い働き方かっていうのはあまり関係なくて。逆に、今だからこそ俺らはフルフィジカルにいくぜみたいな会社が、しっかり従業員の健康のことも気遣いながらやるっていうところが伸びたっておかしくないと思うんですよね。新しい働き方というよりも、変化するかしないかの腹落ち感をメンバーが持てるかどうかな気がします。ただ、恵太くんが言っていたように、それをボトムアップでやるよりは新しく自分が作った方が早いんじゃないかなっていう気はするので。やっぱり経営の理解は絶対的に必要だとは思います。

西村:
そこは前提ですよね。

齋藤:
さっきの話、やっぱりwhyが大事ということでしょうか。Goodpatchでも「なぜそれやるのか」みたいなゴールデンサークルの話とかよく出てきます。僕もやっぱりAnywhereの組織を、コロナにどう対応するかみたいな目線では考えてないわけですよ。この超難しい時代にどうやったらまともなものを作れるんだろうと考えた結果として、今ここにたどり着いているところがあるので。やっぱり手段ありきでやってしまうのではなくて、絶対に失敗するという条件も含めて、ここにたどり着きたいんだという強いものがないと折れちゃうんですよね。

小笠原:
新しい働き方+フルリモートで、今まで話してきた内容に答え合わせしにいくんじゃなくて、自分たちはなぜそれをした方がいいと思っているんだろうというのが話せないと、なかなかしんどそうですよね。

齋藤:
ここ最近のスタートアップ界で、勝つまでやるから勝つんだみたいな話ってまた見るようになった気がするんですけど、あれ真理かなって思うようになったんですよ。勝つまでやる信念を持った、そこで折れない人たちが勝っていくんじゃないかって。どうせ失敗するんだから、そのトライアンドエラーや失敗を乗り越えられるかどうかっていうところだけが、KPIとして見るべきところなんじゃないかなというふうに最近考えたりします。

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リモート組織で今後必要とされる人材像

西村:
これまではリモートドリブンの働き方にシフトしていくためにはどうしていくかとか、そもそもすべきかどうかを聞いてきました。それを個人の目線で考えたときに、向き不向きってあるんでしょうか?さっき出た例でいうと、リモートベースだと匂いや周りの気配のようなものを敏感に感じてしまう人がストレスから解放されるメリットもある反面、リモートに向いていない人もいるのかとか。
それって向き不向きというよりは慣れ不慣れだったりとか、自分自身をアップデートできていないだけとかいろいろあると思うのですが。遠隔密着共創組織を作る上で個人をどう変えていった方がいいのかポイントってありますか?

齋藤:
そうですね、採用の時に見ているのは、さっきの匂いが気になるとか通勤は絶対嫌ですみたいな、そういうのを志望動機とかに書いてくれる方は結構いらっしゃるんですけど、それだけだと結構きついなと思っています。というのは、このリモートで働かなければいけない状況っていろいろトライアンドエラーしていかなければならないんですよね。途中でやり方も変えますし、ストレスかかることはあるので、そういった時にトライアンドエラーをたくさんできるかが大事なんです。そういうわがままな人ってあまりできなかったりするんですよね。自分で綺麗な環境作って、綺麗な環境提供されて、その中で自分のパフォーマンス発揮したいんですというマインドの方が多い傾向があると思っています。
なので、そういう意味では精神的にタフというか、気にしないみたいな感覚が結構あるひとでしょうか。あとは仕事が来たときにも、細かいところはよくわかんないからやってみなきゃわかんないよね、みたいなマインドで突き進んでいけるかみたいな。そういうキャラクターの人がリモートであろうと、今後必要とされる人に当てはまるんじゃないかなと思っています。

西村:
確かにそうですよね。テイカーな発想、通勤がないのがいいですとかこういう環境を求めますみたいな。やっぱりテイクが力点として置かれている人だと、リモート組織では活躍しづらいですよね。どちらかというとギブマインドで、自分が自ら遠隔でも働きやすい環境を作っていくっていうことに意味があると思います。

齋藤:
僕が一番理想的なことは、自分がやりたいことをAnywhereに持ってきて、GoodpatchとAnywhereの看板を使ってやってくれっていう。そういうふうに利用できるぐらいの人の方がやっぱり合うんじゃないかなって思ってたりしますね。みんながそうなったらいろんな意味でスケールしていく組織になれると思うので。

西村:
そういうコントリビューター的なマインドを持っている人の方が活躍しやすいでしょうね。
小笠原さんの視点でいうとどうですか?

小笠原:
リモートという話題からまたちょっと離れてしまうかもしれないんですけど、今日の話の中でいうと「密着共創」のところが特に一番興味あるところですね。学生と話している時に思ったのが、対立構造をなるべく作らず思考ができる人、なおかつ分かったふりをしない人、っていうのがやっぱり僕が個人的にこれから一緒に仕事したい人だなと思っていますね。特にリモートでいうと分かったふりされたら終わっちゃうじゃないですか。

西村:
そうですよね、わからないことがわからないですからね、周りから。

小笠原:
だから分かったふりをしないでほしいし、そういう人じゃないほうがやりやすいなと思います。そのほうが伸びるなとも思いますし。対立構造の話でいくと、「私たち」「みんな」対「経営者たち」みたいな構造を作っちゃう人っているじゃないですか。ある不満があったとき、その不満を「自分の課題感」として伝えてくれたら聞き手も素直に思考に繋げられるんですけど、「私たちは」とか「みんなは」という大きな主語で「不満」として伝えるのってちょっと違うなと思うんですよね。そういう問題ってだいたいみんな困っている問題なことが多いじゃないですか。だからそういうときって全社を巻き込んで解決に向けて一緒に動こうってこともできるはずなんですけど、対立構造を作られてしまうと相談もできないし、話も進まないし、不満を解消する提案にも昇華しないっていうことが起きるんですよね。困っていることを解決するためにみんなで一緒に動こうって、巻き込み型の思考になってくれるといいんですけどね。

齋藤:
めちゃくちゃわかりますこれ。Anywhereでチームのマネジメントしてて一番難しいところもそういうところなんです。元々フリーランスで一人でやっていた人たちってリスクをすごくコントロールしたがるんですよね。ここ守っとかないといけないです、契約どうなってるんですか?みたいな。弱い立場では健全な行動だったと思うんですけど、チームでものを作るとなれば、お互いの領域に侵食していくみたいな自己組織化的な行動ができなくなってしまうんですよ。そのマインドをいかに変えるかっていうのはすごい大事だと思っているんですよね。
お客さんにすごい無茶振りされたから自分たちを守らなきゃとか、なんといって言いくるめてやろうみたいな話よりは、「それってどういう意味ですか?」ってディスカッションしてこいよって思うんです。それが自然にできる人と、訓練しなきゃいけない人に分かれると思っていて。デザイナーやフリーランス界隈のTwitterとか見ていると、結構クライアントの無茶振りあるあるとか、不満を出してくる人たちっているじゃないですか。僕もうああいうの見た瞬間に全部ミュートするようにしているんですけど。それがすごくやりにくいなって思うところだし、少なくともAnywhereの案件やった人たちに関しては、そこを転換していけないかなっていうのはずっと考えています。

小笠原:
生きている中で、敵より味方が多い方がいいなっていうのがあって。特に今からの仕事への心持ちとしては、そっちにいった方が少し楽に生きれらるし、楽に生きることで自分の個性を出しやすくなるよってね。比較を生みやすいスキルとか能力っていう言葉はあまり好きではなくて、本当はそこじゃないんですよっていう。

西村:
どちらかというとマインドセットですよね。その瞬間でいうと対立構造を作っちゃった方が楽なんですけど、それを続ければ続けるほどじわじわ自分の首を締めてむしろ苦しくなっちゃうっていうこと、年齢重ねてから気づいても遅いですからね。

小笠原:
やっぱり従業員と経営者が対立構造だったらいやじゃないですか。

西村:
ギスギスした職場って基本そうなっていますからね。

小笠原:
その対立構造によって昭和時代に多くの組合ができて、獲得した権利によって今は働きたい分だけ働けない世界ができていたり、雇用の流動化が落ちているから今度は雇いにくくなったりとか。結果的にいうと、対立構造を作った先ってその後の世代の人が絶対苦しむはずなんですよね。その時は解決していても。

齋藤:
それじゃあ絶対いいものできないし、ワールドクラスではそれを飛び越えた人たちがすごいいいもの作ってたりするんですよね。その世界ともう太刀打ちできなくなってしまいます。

小笠原:
僕らにとっても課題ですね。

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今後やってみたいこと

西村:
まだまだ100点満点の状態にたどり着いている人は世界中どこを見渡してもいなくて、みなさん試行錯誤されていると思うんですが。この状況の中で、今後チャレンジしてみたいことってありますか?その経緯や未来の話を聞きたいなと思っているんですけど。
恵太さんはAnywhereチームとして、あるいは恵太さんご自身としていかがでしょうか?

齋藤:
めちゃくちゃありますね。僕はいかに自分が予測できない成長曲線を書いてくれるかみたいなのにずっとチャレンジしたいなと思っていて。いま200人になりましたっていってるけど、実際は5000人の組織もありますし、じゃあメルカリって何人いたんだっけとか、いろんな世界があるわけじゃないですか。
そういうのと比べると、まだちっぽけすぎるなって思うんですよね。なので、そういうふうになっていくためにはどうしたらいいんだろうと。でもそれをできるだけマネージしたくないっていうわがままな心もあるんですよ。さっき話した、Anywhereに入ってきた人たちがAnywhereを最大限活用して自分の仕事を切り開いていく、その結果としてAnywhereそしてGoodpatchが大きくなっていくっていうのが一番だと思います。
極論ですが、僕らの仕事は最終的にこちらが価値判断をせずに、UXデザインが絡んでいればOKだと思っているんですね。そうすると世の中にある全ての仕事は、最終的に人が使うから、全部に絡められるんです。
そういう意味でGoodpatchがやりたいデザインっていう軸は捨てずに、全ての領域が広がっていくことができるんじゃないかと。その時にこの領域は筋があるよね、ここはないよねっていうのを僕が判断するのはあまり意味がないと思うので、なるべくチャレンジする人を増やしていくのが、僕のチャレンジなのかなと思っています。

西村:
面白いですね。規模を追求しつつも管理はしないと。管理するとどうしても共創性って失われるというか、管理する・されるっていう関係性が対立構造を生みがちなんですよね。そうすると共創性がなくなるいうジレンマがありますし。拡大していく中でも共創性を失わずに管理せずに自走できるチームをどう作っていくかってことが、恵太さんたちAnywhereチームのこれからの課題になってくるわけですね。

齋藤:
そこにもしかしたら「(僕が大変にならないようにしたい)」みたいなのがあるのかもしれないです。

西村:
それ大事ですよね。

小笠原:
大変なのいやだもん。

西村:
人間は楽したい生き物ですからね。小笠原さんはありますか?これからこんなテーマにチャレンジしていきたいみたいな。

小笠原:
僕が最近始めたのが、フルオンラインの大学院作りたくて。

西村:
おー、キャンパスがないってことですか?

小笠原:
そう。大学の4年間、就職活動しなくてもいい環境を作ってあげようと思っていて。大学院にきて、その2年間でフルオンラインでいろんなこと学びながら、いろんな会社にインターンに行ったり何か始めてみたり、ちょっと腰据えてアルバイトしたり、デザイン会社に入って学んだりしてもいいじゃないですか。就職活動から少しズレた人になってもらおうかなと。最初から「新卒はこういうのが一般的な働き方だよね」っていうのを、ちょっとズラしたくてですね。
就活ってプロセスを経てしまったことで働き方への思考が窮屈になってしまっている人もいるなと思っているんです。就活していない僕が言うのもどうかなとは思うんですけどね。今こうして、大学院作るとか言っていますけど、ぼく高卒なんですよ。高校もスポーツの推薦で入学しちゃってるから、いわゆる受験としても甘くて。だから大学生全員に就活って言うのもなんか違う、みたいな感覚があるんです。まあそういったちょっと違うなと思う人たちが進める道があってもいいんじゃないかと思います。その子たちが例えば、大学院にいる間にGoodpatch Anywhereにいたりしたら面白いなと思って。

齋藤:
ひとつ乗っかっていいですか?このまえ十津川の村に行ったときなんですが、地方の山間部の学生が就職する先って結構決まってるんですよね。学校や役場みたいなことだったり、もしくは都会に出るかみたいな選択肢だそうで。
さっきの大学院の話もそうなんですけど高校に対して、もっとAnywhereのことを知ってもらうことって、ありなんじゃないかと思ったりしました。

小笠原:
それ絶対ありですよ。実はうちの大学、通信制の高校も作ったんですよ。うちの大学っておよそ4000人の通学している学生と、8000人の通信の学生がいて、96歳のおばあちゃんが学生だったりするんですよ。大学って行きたい人にとってはフィジカルに集まって、今までと違う体験をする場としていいと思うんですけど、いま単位数でいうと約2分の1までオンラインでも学位を認められるようになっているんです。
大学は箱物事業なので、もし半分オンラインになったとしたらあと倍の数の学生を取れるんですね。だからやりましょうよっていう話をしていて。それが実現したら次に高校をやりたいんですよ。でもいまやっていない理由は、僕が高卒なのもあって、高校で教える資格がないんですね。だから誰かがそこをやってくれたらいいなって思っています。

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西村:
ありがとうございます。まだまだ話はつきないですけど、今回の「遠隔密着共創組織 Vol.1」はここで終わりたいと思います。恵太さん、小笠原さん、ありがとうございました。参加くださった皆さんもありがとうございました。

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第一章「働く場所の変化やフルリーモートでもエンゲージが高い理由」はこちら