- 運営しているクリエイター
記事一覧
代用プリンセス 「代用白雪姫 1」(連載小説)
新井 愛美、五才。
幼稚園の年長組さんのころには、もう既に愛美は、自分の苗字も名前も漢字で書くことができていた。
「ごめんなさい。ごめんなさい、ママ。私、いい子にするから」
幼稚園の先生はたくさん褒めてくれた。
すごいねえ、マナミちゃん。もうそんなにむずかしい字が書けるのね。エライわあ。
しかし愛美はというと、先生の目も見ないまま、ありがとう。とだけ返事をして、ウンウンと頷き、必死に赤い色エ
代用プリンセス 2「代用白雪姫 2」(連載小説)
漏れていた声が静まると、ジャケットとネクタイを脱いだ、ワイシャツ姿の悠斗が寝室から出てきた。
呼びかける声に愛美が振り返ると、悠斗はすでに優しい顔をしていた。
ごめんなマナミ、お腹空いたろう。ご飯にしようか。すぐ作るから、もうちょっと待っててくれな。
「うん、大丈夫だよ」
パパに負けないくらいの笑顔でそう返した愛美は、お手伝いをしようとソファから立ち上がった。
一緒に夕食をとり風呂に入っ
代用プリンセス 3「代用シンデレラ 」(連載小説)
新井 愛美、九才。
掃除の時間。当番だった愛美は、全部の生徒の机を後ろに寄せていた。教卓近くでは、クラスの中でも中心的なグループのキョウカたちが、黒板も消さずにおしゃべりをして笑っている。
「ねえ、それも動かすから」
愛美の忠告に舌打ちで返事をしたキョウカは、黒板消しを掴み、愛美に投げつけた。
黒板もやっといてよね、お掃除大好きなんだもん。やってくれるわよね、シンデレラさん。
チョークの粉に
代用プリンセス 4「私は代用 1」(連載小説)
新井 愛美、十五歳。
来月の地区予選が中学最後の大会になる。
だから愛美は、最近は部活動にばかり力を注いでいた。とはいえ、そろそろ進路についても真剣に考える必要がある。
帰路につきながら、悠斗にそろそろ具体的な話をするべきだろうと思案していた。愛美は県外にあるテニスの強豪校に、推薦で進みたいと考えているのだった。
定期的に、そして最近になって徐々に会う回数も増えてきている裕実には、一緒に暮ら
代用プリンセス 5「私は代用 2」完 (連載小説)
悠斗は愛美の裸を、愛しい恋人を見るような目つきで舐めるようにして眺める。
いくら抵抗しても、は強引に愛美の腕を掴み、愛美をベッドに押し倒した。
風呂上がりで既に火照って、露わになっている愛美の未発達な体の至る箇所にキスをしながら悠斗は、マナ。と何度も昔の恋人で、今は不倫相手の女の名前を囁いた。
綺麗だよ、あの頃のまんまだ。荒げる息遣いの合間にそう呟きながら、愛美の長く艶やかな黒髪を撫で続ける。