【サファリでヘビは出るのか?】
ハイエナは人を食うこともあるので怖いという話を先日したが、サファリで哺乳類以外の怖い生き物はいないのかという質問をちょくちょく受ける。つまるところヘビやサソリなどに遭遇して危険な目に遭ったりしないのかということだ。アフリカの自然環境には当然それらの生物は生息している。ライオンやゾウだけがいてヘビはいないなんてフザケた自然環境など存在しない。サバンナには大きさも色形も様々、無毒なものから超猛毒なものまで、実に多種多様なヘビたちが暮らしている。その上で言うが、サファリでヘビに出会える確率は至って低い。何故ならば、人がヘビを恐れる以上にヘビたちは人間を恐れているからだ。それにハイエナと違って人を食おうなんてヘビはいないので、人にわざわざ向かって来てくれたりはしないのだ(巨大なニシキヘビが赤子を呑んだ的な話は皆無ではないが、これはサファリではあり得ない)。
私を含め、一部の人間はゲームドライブでヘビを見つけようものなら狂喜乱舞である。車を降りてもよい場所ならば、速攻下車して激写だ。ただし、ここで注意せねばならぬのは相手が如何なるヘビであるかという点。先ほど述べたように、たちどころに人を殺せる猛毒を持ったヘビもいるし、種類によって攻撃性や攻撃の手法も違う。例えば、一般的にヘビは噛むものという認識があるので、近寄りすぎなければ大丈夫と思われているが、ドクハキコブラ(スピッティングコブラ)の仲間のように”飛び道具”を装備している種もいる。彼らは2~3mくらいの距離から敵の目に毒を噴射するエゲツない能力を備えている。従って限界接近距離は相手の種類やサイズによって変わってくる。コブラの仲間は攻撃の前に例の首の皮を広げて鎌首をもたげる威嚇をしてくれるので、そのようなサインを見逃さないようにすることも重要だ。ここでさらに例外があるのだが、同じコブラの仲間でリンカルスという種が存在する。コイツらは、威嚇もするが”死んだフリ”をすることでも知られている。迂闊に近づいたらえらいことになる。つまるところ、どんな種類のヘビがどんな姿形をしていて、どのような習性を持っているのかを把握しておくことが重要なのだ。
では、ヘビはどのようにして見つけるのか?道路を渡っている最中に発見するなどの偶然の出会いに依存する部分ももちろんあるが、実は鳥たちが教えてくれることが多い。小鳥たちにとって、ヘビは巣の卵やヒナを狙う天敵である。そのためヘビを見つけると、集団で取り囲みギャーギャーと鳴きながら周囲にその存在を知らせたり、時には攻撃したりする。一つの木の中に多くの鳥が、それも複数種いたらかなりの確率でヘビがそこにいる。(ヘビでなければフクロウだ)
上の写真はボツワナ、マシャトゥ動物保護区で道を渡っているところを偶然発見し、車を降りていって撮影したもの。そして下はボツワナ、リニャンティ動物保護区レバラ・ロッジのテラスで鳥たちが騒いでいることから発見に至ったもの。色は違うがどちらもブームスラン(Boomslang, 学名:Dispholidus typus)という種。上がメスで下がオスだ。メスは地味なオリーブ色、オスは背が明るい緑、腹が黄色、鱗の間が黒がというのが一般的(←黒に黄色の斑点などのカラーバリエーションも存在する)。強力な血液毒を持つが、性格は至って臆病で攻撃性は低いため、余計なちょっかいを出さなければ相手から向かってくることはない。Boomslang の Boom は南アフリカのアフリカーンス語で木、slangはヘビを意味する。その名の通り樹上性で、地上にいるのは木から木へ移動する時だけだ。
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