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【若手リーダー×社長対談】 他部門との連携を大切に、仕事の質を追求する!加工一課部門

生産や加工などのさまざまな部門間をつなぐ、大切な役割を担う加工一課部門(通称:外班)。今回は、チームで活躍する永田雄一(ながた・ゆういち)さんと、昨年入社したばかりの期待の新人・宇住庵文明(うじゅうあん・ふみあき)さんが、増永社長との座談会に参加してくれました。

突き詰めるほどに、奥が深いのが外班の仕事

――生産と加工をつなぐ役割を担っている「外班」ですが、このような部署を置いている水産会社はあまりないと思います。GOWでは、設立当初から外班を設置していたのですか。

社長:そうですね。外班の仕事は、他社でいうと仕入れや受け入れに含まれると思いますが、当社では後工程をスムーズにするために工場内に運ぶ前に魚にナイフを入れたり、温度管理にもひと手間加えたりしているので、創業当時から独立した部署として外班を設置してきました。タンクもかなりの数があり、外班で管理する必要があります。

――外班は、作業の工程はシンプルに見えますが、その中で高度な職人技が求められる仕事ですね。社長から見て、外班の仕事で一番重要なことや、必要なスキルとは何ですか。

社長:どの部署でもいえることですが、うちの作業は人の手で行うので、「自分でペースをもてるかどうか」が非常に重要です。例えば、加工する魚の量は日によって違うので、1日の加工量が500尾の日もあれば2000尾の日もあります。それらを着実に完了するためには、「自分でペースをもつ」ことが大切です。
それと、「言われたことをそのままやる」のではなく、自分の頭で試行錯誤することも、外班の仕事ではとても大事ですね。例えば、作業が早く済んだ時には日頃できない掃除をしたり、タンクの修理をしたり。外班の仕事は、考えれば考えるほどいろいろな工夫ができるんです。
温度管理にしても、季節ごとに氷の量をしっかり計算しているか。タンクに入れる塩の量や質はどうか。魚を締めた後のタンクでの保管時間は適切か……やり出せばきりがないんですが、そういうこだわりで品質が決まるといっても過言ではない。だから、プロとして自分の頭で考えて、どんどん進化してほしいと思っています。例えば、今もかなりの数のタンクがありますが、数は把握していますか? 番号を振って管理していますか?

永田:保冷タンクも入れて、タンクは100ありますね。現状、番号は振って
いないです。

社長:今のところ、うちでは全て良い管理状態で製品づくりができているけど、交差感染のリスクやトレーサビリティを考えると、タンクを番号管理してGOWとアクアブルーで分けるのが理想ですね。例えば、万一、アクアブルーの製品から大腸菌が検出されました、ということになったら? GOWとアクアブルーでタンクが交差してしまったら、感染源を追えず、原因追及ができないですね。だから、「その日、何番から何番のタンクを使った」ということが限定できないといけない。タンクだけでなく、包丁やまな板などの道具や、その日の担当者は誰かも追える必要がある。品質管理や衛生管理を突き詰めれば、そういうことも大事になってくるんです。
また、タンク自体も、1台当たり30万以上しますからね。それを2年くらいで入れ替えるので、高額なコストがかかっています。だから、うっかりフォークリフトを当てて壊したりしないようにしなきゃいけないし、古いものも捨てずに物入れにしたりと、工夫して大事に使ってほしい。
その一方で、必要ない仕事や短縮できる仕事は、どんどん省いていけばいいと思います。仕事を楽にしたり効率的にしたりする工夫も、いろいろできると思いますよ。皆の安全に関しても、夏場の休憩や水分の取り方、ヘルメットやユニフォームの着用の仕方なども、リスクを減らせる工夫があれば取り入れていってほしいですね。

宇住庵:私は去年入社したばかりで細かい点をまだ把握できていないのですが、お話を聞いて勉強になりました。今うかがったようなことを、もっと気を付けてやっていけたらと思います。

社長:外班は今のメンバーで安心して任せられると思っています。でも、社内一の力持ちの重信がフォークリフトを担当しているのは理解できない(笑)。僕のことを片手で持ちあげられるような男なんだから。そんな彼がフォークリフトに乗っているのは、うちの会社の七不思議ですよ。

社内一の力持ちであると評判の重信さん

仕事の質を高めるために、他部門を知ることも大切

――水揚げ後の魚を選別したり、計量したり、という外班の現在の業務フローは、どのように確立していったのですか。

社長:今は、船上で機械を使って締めた魚を外班で受け入れていますが、昔は魚を生きた状態で受け入れて、水揚げ場で締めていたんです。ところが、その際に使用する麻酔液が、食品衛生上問題視されるようになってきた。さらに、水揚げ場で魚を締める際に出る血の処理の問題もあって、今のような形になっていったんです。

――外的な要因によって変わってきた側面もあるんですね。

社長:そうですね。それと、うちでは断頭・内臓除去も手作業で行っているので、そのような後工程の作業をやりやすくするために、外班が先にカマの辺りにナイフを入れておく、というひと手間を加えたりしています。そういう加工場からの要望なども踏まえて、現在の業務フローが確立していった感じですね。ところで、2人は、なぜ外班で魚にナイフを入れる必要があるのか、その理由は知っていますか?

永田:硬直すると加工しにくくなるから、ですね。

社長:そう。そこを先に切っているかいないかで、断頭・内臓除去の時に包丁を入れる回数や所要時間が大きく違ってくる。さっきも「ペースをつくる」ことが重要だと話したけど、断頭・内臓除去のところで工場全体のペースをつくっていかなくてはいけない。1タンク当たり20~30分程度の時間で水揚げから計量、断頭・内臓除去、三枚おろしまで進めるというペースをつくるには、外班で先にナイフを入れるのが効率的なんです。多分、ナイフを入れておかなかったら、断頭のところに2人くらい増員しないといけないと思う。

―そんなに違うんですか!

社長:このような作業の意味を知っておくことも大切ですね。うちの会社でも、部署異動の制度をつくろうかという議論もしているんですが、他部門を経験してその仕事や事情を知っておくことで、自分の仕事の幅が広がります。


すべての部署で求められるのは、気配りと思いやり

――永田さんと宇住庵さんは、「好きな部署を1日体験していいよ」と言われたら、どの部門を体験したいですか。

永田:私は別記事の取材でもお話ししたのですが、三枚おろしですね。これまでも加工場で断頭などの作業を経験しているので、スキルアップを目指したいです。 

宇住庵:私も、三枚おろしに挑戦したいですね。

社長:三枚おろしは、“花形”っていうイメージなんだよね、みんなにとって(笑)。もちろん三枚おろしは重要な役割だけど、ほかにも大事なポジションはたくさんあるんだけどね。

――例えば、どんなポジションが大事なのでしょう。

社長:一つは、さっきも言った断頭・内臓除去でのペースづくり。これができないと工場全体が崩れてしまうので、「断頭・内臓除去のところに、ペースをもっている担当者を必ず配置するように」ということはいつも言っています。その上で、時計や状況を見て動ける人が外班にも必要です。例えば、いつもの時間にタンクが出てこなかったら、「今日は中の人が足りないのかな、何かトラブルがあったのかな」と考えて、外はいったん仲間に任せて工場内のサポートに行ったりとか。

――周囲への気配りが大切なんですね。

社長:結局は、気配りや思いやりが大事です。例えば、タンクを積み重ねる作業にしても、皆慣れているからタンクの凹凸を合わせてどんどん積んでいくけど、新入社員のような慣れない人にとっては難しいかもしれない。そうであれば、マジックなどで線を入れてタンクの向きを分かりやすくしてあげたら、仕事がやりやすくなるかもしれない。

人の能力は責めるな。良好なチームづくりに大切なこと

――部署にかかわらず、チームワークを意識することが仕事を円滑に進める鍵といえますね。

社長:いろいろな人がいてこその組織ですから。だから、僕はいつも、「人の能力は責めるな」と言っているんです。作業が遅かろうが速かろうが、それはその人の特徴。その仕事が得意な人や速くできる人が、苦手な人、時間がかかる人のフォローをすればいい。例えば、いつも同じところで同じミスが起きるとしたら、それはミスをした当人だけが悪いのではなく、その前後で気づかない周りの人にも責任がある。加工場では、そういう考え方をしないと絶対にミスが起きます。うちの加工場では、そういうフォローがしっかりできている。だから、ミスがあってもその人を責めたりはしていないと思います。こういう仕事のやり方を、ほかの部署でも皆ができるようになれば、職場がどんどん良くなると思いますね。

――今は職場でのDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の重要性が叫ばれていますが、そうした考え方は、まさに個々の社員に合わせた支援によって公平な土台をつくる「エクイティ」につながるものですね。

社長:そう思います。もちろん、多くの人が働いているので、時には「あの人は仕事が遅い」「よくミスをする」という声を聞くこともあります。でも、それぞれの社員の仕事の能力は評価制度によって適正に評価されていて、等級や給与に反映されている。仕事ができる人は、そうでない人よりも高く評価されていて、給与も高い。だから、現場でほかの人の能力を「責める」必要はないんですね。不満を言う人にも、そのことを説明すると分かってくれます。機械ではなく人が働く以上、それぞれ異なる性格や能力を持っているのは当たり前で、それを責めても仕方ない。それが社会だし、チームだと思います。

――組織やチームをどのようにまとめていくか、リーダー論にもつながるお話ですね。

社長:「人を変えたいと思ったら、まず自分が変わりましょう」という話は、いろいろなところでするんですよ。他人を変えることはできないし、最終的には自分が変わるしかない。だから、今日来てくれた2人にも、どんどん変化していってほしいし、そうやって会社を良くしていってほしい。外班の仕事で「このやり方はきついな」「効率が悪いな」と思うようなことがあれば声を上げるべきだと思うし、他の部署にチャレンジしたいならどんどんアピールすればいい。会社から求められていることはきちんと果たさないといけないけど、今のところでしっかり頑張ったという自負があるなら、「次はこれをしたいです」というアピールはしていいわけです。

――やってみないと分からないことや、その場所に行かないと見えない景色もありますよね。

社長:そうですね。別の景色が見えるので、いろいろな部門を経験するのはいいことです。僕は、人には向き不向きがあるし、どうしても合わない仕事は無理をする必要はないと思っているんです。もちろん、他人に大変なことを押し付けて自分ばかり楽なほうに逃げるような、卑怯な逃げ方はだめですよ。そうではなく、自分がより適性のあるほうを目指すのはOK、という意味です。だから、部門内でも他部門でも、「これをしたい、あれをしたい」ということは、どんどん手を挙げて言ってほしいですね。

――最後に、お二人から一言いただきたいと思います。

永田:本日の社長のお話をうかがって、やはり細かな気配りが大切だと痛感しました。日々の仕事でも、夏場の温度管理やタンクの取り扱いなどは特に注意したいと思います。タンクを洗う際には、傷を付けないように丁寧に、なるべく手洗いでやっていきたいと思います。

宇住庵:私はまだほんの少ししか仕事を覚えられていませんが、社長の話から「こういうことも大事なんだ」という気付きが得られて、視野が広がりました。この気付きを生かして、私も細かな点まで気を配っていけたらと思います。

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