コーポレート・ガバナンス関連ニュース(2019/12/9)
「コーポレートガバナンス」虚偽記載で初の課徴金
【注目ポイント】ジャスダックに上場する日本フォームサービス(東京都・江東区)が、利益を水増しするとともに、社内の監査体制などについて有価証券報告書にうその記載をしていたとして、証券取引等監視委員会は、2400万円の課徴金の納付を命じるよう金融庁に勧告した。「コーポレートガバナンス」に関する記載をめぐって課徴金の勧告が行われたのは今回が初。勧告の対象になったのは、証券取引等監視委員会によると、日本フォームサービスは、有価証券報告書にうその記載をして去年までの4年間に利益を9億7000万円余り水増していたほか、「コーポレートガバナンス」の体制についてもコンプライアンス担当の役員を任命したように装ったり、監査役と監査法人が定期的に意見交換を行っているように見せかたりしていたとのこと。
【コメント】実際は利益の水増しが数年間にわたって行われていたことが重大な違反とされたのだろうが、コーポレートガバナンスに関する事項の虚偽記載に対して課徴金の勧告がなされたことは非常に大きな意義がある。上場各社が公表しているコーポレートガバナンス報告書で、CGコードの各原則についてコンプライしているとしている企業のうち、実態として取り組んでいない企業は非常に多いのが実態だ。今後、実態がないまま「やっているふりをする企業」に対して悪質な場合は摘発される可能性があるということを示すことには抑止力という意味で有効だろう。
米バイオ医薬品アレクシオン、身売り拒否-エリオットが提案
【注目ポイント】米医薬品メーカー、アレクシオン・ファーマシューティカルズは6日、株主にとって最善の利益にならないとして、身売りを求めるアクティビスト(物言う投資家)の提案を拒否することを発表。発表文によると、米ヘッジファンド運営会社エリオット・マネジメント傘下のエリオット・アドバイザーズが身売り手続きに入るよう勧めてきたが、こうした措置は望ましくないとの考えをアレクシオン取締役会が示している。同社では「当社並みの規模や成熟度のバイオ医薬品会社が身売り手続きに積極的に入ることは異例であり、そぐわないと取締役会は判断した。われわれはこうしたアプローチが株主価値の引き上げに最善の道ではないと考えている」とコメントしている。また、現段階で、同社の買収に関心を示している企業はなく、いかなる提案も拒んでいないとも説明している。
【コメント】アクティビスト活動は、日本ではまだ経営改善提案に留まる内容が多いが、海外ではアレクシオンに対するエリオットの提案のように、時に企業の身売りにまで言及するケースもチラホラと出始めている。それだけ株主によるガバナンスが効いている証左でもある一方、経営者からすると短期の業績悪化が即命取りという状況になるため、なかなか大胆な経営改革を行いづらいだろう。
関西電力、次期社長は内部昇格 森本副社長ら6人の候補提示
【注目ポイント】関西電力が、役員らの金品受領問題で辞任する岩根茂樹社長(66)の後任に副社長の森本孝氏(64)ら生え抜きの取締役6人から昇格させる考えであることが9日、関電関係者への取材で分かったとのこと。役員人事を審議する「人事・報酬等諮問委員会」を8日開き、委員に候補案を提示しており、森本氏以外の5人は、いずれも副社長の彌園豊一氏(63)、稲田浩二氏(59)、松村孝夫氏(64)、土井義宏氏(65)と、常務執行役員の島本恭次氏(61)とのこと。次期社長候補の6人は原子力とつながりが薄い企画や営業畑の役員が中心で、関電の社内調査報告書で氏名を公表した金品受領者には含まれていない。
【コメント】例の金品受領問題によって退任する岩根社長の後任人事については、外部委員で構成される人事・報酬委員会で検討するとのことだったが、今回の候補者を見る限り、実態としては内部主導の人事だろう。そうでないと誰が有力候補者かなどはわからず、ましてや社外から候補者を募らないというのも考えにくい。もちろん、社内に優れた人材がいればそれで構わないのだが、そもそも候補者が誰かということよりも、次の関電の社長に求められる役割と責任を示し、そこから求められる人材要件を公表することが重要ではないだろうか?そうでないと、何となく社内の論理で選んだ感はいつまで経っても払しょくできないはずだが…。