地方議会成熟度評価モデルに基づく議会評価(10項目)を報告――「議会評価に関する研修会」を開催――岩手県滝沢市議会
岩手県滝沢市議会は2024年10月24日、同市役所内で「議会評価に関する研修会」を開催。地方議会成熟度評価モデルに基づく議会評価の報告やグループワーク、学識者による講演が行われた。今回の評価は16項目のうち10項目。今年中に全項目を評価、そのブラッシュアップも図っていく予定だ。
ミッションは「議会基本条例に基づき、政策サイクルを構築し、確実に回す」
滝沢市議会(議員定数20人)は2014年1月1日に議会基本条例を施行した。第35条(議会の評価)では「継続した議会改革を行うため、政策立案、自治立法活動、調査活動等の全ての事項について議会評価を実施する」「議会は、議会評価を1年毎に行い、評価の結果を市民に公開する」などと規定。規定に基づき、議会評価を行ってきたが、「評価の前に議会として統一したビジョンがない」「評価の基準があいまい」「議員の主観による評価に留まる」などの課題が出てきた。
そこで着目したのが日本生産性本部の「地方議会成熟度評価モデル」だ。まず、「議会プロフィール」を2024年1月30日に作成。同年4月14日の全体会で、同本部が開発した「地方議会成熟度評価モデル」の導入を決定した。
「議会プロフィール」では、「2024滝沢市議会ビジョン」(今任期で議会が実現すべき理想的な姿)として「市政課題を市民と対話し 解決に向け 共に取り組む議会」、「ミッション」(今任期で議会に期待される役割)として「議会基本条例に基づき、政策サイクルを構築し、確実に回す」と設定した。
専門委員会メンバーが評価結果を報告
10月24日の研修会には議員19人と事務局職員が参加した。まず、角掛(つのかけ)邦彦議長が挨拶。「議会活動が市民に見えていない。成熟度評価モデルを取り入れ、今までの議会評価も通じながら新たな滝沢市議会がどうあるべきかを考えていきたい」などと話した。
次に、議会改革推進会議内に設けられている専門委員会(齋藤明委員長、7人)のメンバーが7月から10月にかけて4回の会合を開いてまとめた議会評価の結果を報告した。
評価を行ったのは「視点1戦略プラン」「視点2政策サイクル」「視点3条件整備」の計10項目だ。
たとえば「視点1」の「理想的な姿の構想」では、▽議会基本条例で、議会の「理想的な姿」を明記▽議会運営委員会で「政策サイクル全体俯瞰図」を基本とし、2年間の政策サイクルの展開の中で、必要な取り組みを具体化することとした▽議員任期において目指すべき姿をビジョンとする議会プロフィールを作成――など効果ある取り組みを列挙。
一方、議会の成熟度から▽議員全体での協議▽議会評価の所管の整理▽委員会任期の引継ぎ▽対応すべき事項のルール化--などの取り組みが「不足と考えられる」とした。その結果、評価は上から2番目の「取組中」で「議会の理想的な姿が明文化されているが、議会全体への理解が浸透していない」だった。
そのほかも総じて仕組みはあるものの課題が多く、総合的な評価は「取組中」が6、上から3番目の「模索中」が3、「手つかず」が1という結果。最高位の評価はゼロだった。
内部評価をどう外部評価につなげるか
報告を受けて、「聞いて感じたこと」「課題だと思ったこと」などを個人で整理。次にグループワーク。4人程度のグループごとに意見交換、質問事項を整理。その後、各グループごとに感想等の報告や質問を行った。
感想等では「議会プロフィールは議員全員で作成しなかったので理解度が不足」「研修の重要性を再確認した」「問題意識が全体の者になっていない」など。質問としては「大学との連携方法は?」「改革のスピードを上げる方策は?」「(議員の)能力向上とは具体的にどのような能力を指すのか?」などが出された。
これに対し、助言者として出席した日本生産性本部地方議会改革プロジェクトの千葉茂明(上席研究員)と鎌田朋宏(担当課長)が回答。「能力は成熟度レベルで必要なものが変わってくる」「改革スピードを上げるにはスケジュールを立て、デットラインを設けること」「住民福祉の成果を上げることで議員の評価に対するモチベーションも高まるのでは」などとアドバイスを行った。
また、江藤俊昭・大正大学教授は、「善き生産物(サービス・政策)は善きシステムから生まれる」と指摘。経営品質の考え方を取り入れた地方議会成熟度評価モデルの意義を強調した。
その上で、滝沢市議会の取組みについて「よくここまでできているなと思う。議会事務局とも連携できている」と評価。今後は「内部評価をどう外部評価につなげるか」「市民への周知」が課題になるとして、「市民はシステムよりも成果が大事。(公表時には)成果も同時に出した方がいい」と話した。
議会からの政策サイクルの構築が必要
研修会の最後は、江藤俊昭・大正大学教授が「再:住民自治の根幹としての議会のもう一歩:議会評価の意味」「質問力の向上の相乗効果」という2本のテーマで講演を行った。
江藤氏は、地方政治は議院内閣制の国政と異なり二元的代表制であり、地方議員は「与野党関係ではない」と説明。個々の議員には法的に権限はないが、議員総体の機関(議会)として動くと「とんでもない権限がある」と話した。「住民自治の根幹」は議会であり、「議会が変わると自治体が変わる」と指摘。そのためには住民福祉の向上につなげていくことが肝要であり、議会からの政策サイクルの構築の必要性を説いた。
また、一般質問は「地域課題を政治行政の場に出す」などのメリットはあるが、大半は中長期の提案であり、審議重視へのシフトも考慮すべきと指摘。「審議と表決こそ、いまのそこにある議会にとって重要」であり、議会運営を変える(議案審議・表決を先に行い、一般質問の日程を後にする)ことも一案だとした。
(文・写真/上席研究員・千葉茂明)
〇日本生産性本部・地方議会改革プロジェクト
https://www.jpc-net.jp/consulting/mc/pi/local-government/parliament.html
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