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ゲーム感想 「ユニコーンオーバーロード」
開発:ヴァニラウェア
発売:アトラス
発売日:2024年3月8日
グリムグリモアOnceMoreの感想でも書いた通り私はヴァニラウェアの大ファンなのですが、本作は神谷盛治氏が開発に関わっていないということであまり期待はしていませんでした。
ですが美しいグラフィックにきびきびと動くキャラクター、細かな作戦設定ができるゲームシステムに魅力を感じ購入を決めました。
プレイ時間は150時間。難易度EXPERTでクリアをした感想です。
幅広さ無限大の部隊編成
このゲームの面白さがどこにあるかと言えば、兎にも角にも部隊編成です。
SRPGはユニットをどう動かすかというところにゲーム性や面白さがあるもので、ユニット同士の戦闘結果はおおよそ相性や性能差だけで決まる単純なものというイメージを私は持っていますが、本作はユニットを複数のキャラクターの組み合わせの部隊にして作戦設定により行動をコントロールできるようにしたことで、敵ユニットを撃破するためにどのように部隊を編成するかが重要なゲームになっています。
そしてこの部隊編成が、とにかく選択の幅が広いものになっています。
メンバーの選定×部隊内配置×装備×作戦設定・・・そしてこれを部隊の数だけ考える必要があり、ゲーム序盤ではどんな組み合わせが強いか手探りで色々試していくのが面白く、終盤になりある程度コツが掴めてからは各キャラがシナジーを発揮できる編成を考えるのがとても面白かったです。
またこの手のゲームでは強いキャラクターばかりが活躍しがちですが、部隊で1ユニットになる関係上組み合わせ次第でどんなキャラクターでも役割をもたせることができ、好きなキャラクターをどう活躍させてやるかと考えて部隊を作ることもできて面白かったです。
メインディッシュは別に欲しかった
本作は序盤から高価だが強力な装備が売られていたり、1ステージクリア毎に仲間が一人増えるくらいの勢いで新しい仲間がガンガン加わったり、部隊編成人数上限の解放やクラスチェンジ解放などを部隊編成をガラッと見直す節目に設定しているように見られるところなどから、部隊編成を楽しんでほしいという制作者の意図があるように強く感じました。
実際にその点はとても面白かったのですが、率直に言ってそこしか面白いところがなかったということにとても不満を感じたゲームでした。
戦記物らしい重厚さやキャラクターの成長を感じられないストーリー、自由度が高いと言いつつ敵の強さは完全固定で自由に動ける意味がないフィールド探索、編成に重きが置かれすぎて部隊をぶつけるだけになってしまっているステージ攻略・・・などです。
このゲームはRPG要素を加えた戦争をシミュレーションしたゲーム、だと思うのですが、そこから由来した面白さを見出すことが私はできませんでした。
本作のプロデューサーは「カードゲームのデッキを組むような楽しさを提供するSRPGになった」とコメントを出していて、確かに部隊編成はそういった楽しさのあるものになっているのですが、それはメインディッシュに据えるようなものではないのではと私は思います。デッキ構築は面白いですが、カードゲームの主だった面白さは作ったデッキで対戦するところにあると思うからです。そして本作では対戦に相当するステージ攻略が単調な作業になってしまっているのが残念でした。
このゲームをあえてネガティブな言い方で例えるなら、「構築したデッキをAIが自動操作して勝敗が決まるカードゲーム」です。デッキ構築の面白さを追求するよりもまず、SRPGとしての面白さを追求して欲しかったなと思いました。
ゲームに限らず構想10年という宣伝文句にはあまり良いイメージがありませんが、本作も人に積極的にオススメしたくなるようなものではなかったなというのが正直な感想です。たっぷり150時間も遊んでおいて言う事かという感じですが。
部隊編成に関してもとにかく詰め込みたいことを詰め込んだという感じで、プレイヤーにシステムを理解させる導線が足りてないなと不満に思うところもあるので手放しで褒められないのが残念でした。
制作者の方々の熱意、手間とか努力とか汗とか涙とか根性とかとにかく諸々の思いが詰まっているゲームだと感じるのですが、プレイヤーの目線が少し足りなくてボタンの掛け違いが起きているような、そんな印象が強く残ってしまうのが残念に思いました。