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「幸いは遠くにあらず」——山のあなたを越えずとも

「山のあなたの空遠く、幸い住むと人の言う。」
——カール・ブッセ(上田敏 訳)

この詩を初めて読んだとき、私は「そうだよな」と深くうなずいた。
幸せはいつも遠くにあるように思える。
まだ手に入れていない未来のどこか、誰かの人生の中、あるいは別の世界に。
けれど、本当にそうなのだろうか?

今日は、幸せは実はすぐそばにあるのではないか、というお話をしたい。


幸せは遠くにあるもの?

私たちはよく「〇〇さえあれば幸せになれる」と思ってしまう。

「もっとお金があれば」
「理想の仕事に就ければ」
「素敵な恋人ができれば」

しかし、実際にそれを手に入れても、次は「もっと」「まだ足りない」と別のものを追い求めてしまう。
「山のあなた」にたどり着いても、さらにその向こうを目指してしまうのだ。

これは、人間の本能として仕方のないことかもしれない。
成長したい、より良い人生を歩みたいと思う気持ちは大切だ。
ただ、そればかりを追いかけていると、目の前にある「今」の幸せを見落としてしまう。


幸せは意外と近くにある

ある日、夕方にふと空を見上げると、夕焼けが目に飛び込んできた。
オレンジと紫が混ざり合い、まるで絵画のようなグラデーション。

「綺麗だなあ」

その瞬間、何かがストンと胸に落ちた。
特別なことがなくても、こんな風に「綺麗だな」と思える時間がある。
もしかしたら、それが幸せなのではないか?

思い返してみれば、何気ない日常の中にも、幸せの欠片はたくさんあった。

・朝、淹れたてのコーヒーの香りにほっとする瞬間
・大切な人と何気ない会話を交わす時間
・お気に入りの音楽を聴きながら歩く帰り道
・疲れた日の温かいお風呂

そうした小さな幸せは、いつもすぐそばにあった。
遠くの「理想の幸せ」を探し求めるあまり、それに気づいていなかっただけだったのかもしれない。


「ここにある幸せ」に気づくということ

もちろん、「もっとこうなりたい」と思う気持ちは大切だ。
夢や目標を持つことは、人生を豊かにしてくれる。
でも、それと同じくらい「今ここにある幸せ」に目を向けることも、大事なのではないだろうか?

「幸せは遠くにあるもの」という思い込みを手放せたとき、私たちはもっと楽に、満たされた気持ちで生きられるのかもしれない。

もしかすると、あなたのすぐそばにも、小さな幸せが転がっているかもしれませんよ。


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