ルジューヌ『ギリシア語アクセント規則概説』第二部


語単独の考察

第一章
不変化詞

9.

ギリシア語の不変化詞 (5から100までの基数名詞,副詞,前置詞,小辞,間投詞) の中には,アクセントを持たない語がいくつかある;それらの一覧は後に載せる (前倚辞:§ 48;後倚辞:§ 50).ほとんどの語はアクセントを持っている;それらのアクセントは辞書によって知ることができ,使うことで覚えられるだろう.

「本来の」前置詞$${^{(1)}}$$に関しては,アッティカ散文においてはすべて (前倚辞 $${\text{ἐν,}}$$ $${\text{εἰς}}$$ あるいは$${\text{ἐς,}}$$ $${\text{ἐκ}}$$ あるいは $${\text{ἐξ}}$$ を除いて) barytonon として現れるのが見られる$${^{(2)}.}$$しかし,$${\text{περὶ}}$$ がその支配語の前ではなく後ろに置かれるような時は, $${\text{πέρι}}$$ のようにアクセントを置く:$${\text{σοφίᾱς}}$$ $${\text{πέρι ;}}$$また $${\text{παρὰ}}$$ や $${\text{μετὰ}}$$ が $${\text{πάρεστι,}}$$ $${\text{μέτεστι}}$$のように使われる時は,$${\text{ἔνεστι}}$$ での $${\text{ἔνι}}$$ のように,これらも語頭にアクセントが置かれる $${\text{(πάρα,}}$$ $${\text{μέτα).}}$$

(1) こう呼ばれるのは,複合動詞において,動詞接頭辞として現れる前置詞である;すなわち:$${\text{ἐν,}}$$ $${\text{εἰς}}$$$${\text{(ἐς),}}$$ $${\text{ἐκ}}$$$${\text{(ἐξ) ;}}$$$${\text{ἀμφὶ,}}$$ $${\text{ἀνὰ,}}$$ $${\text{ἀντὶ,}}$$ $${\text{ἀπὸ,}}$$ $${\text{διὰ,}}$$ $${\text{ἐπὶ,}}$$ $${\text{κατὰ,}}$$ $${\text{μετὰ,}}$$ $${\text{παρὰ,}}$$ $${\text{περὶ,}}$$ $${\text{πρὸ,}}$$ $${\text{πρὸς,}}$$ $${\text{σὺν}}$$ $${\text{(ξὺν),}}$$$${\text{ὑπὲρ,}}$$ $${\text{ὑπὸ.}}$$
(2) これらの語は,後倚辞の前にある時にのみ,語末に鋭アクセントが置かれる (含 $${\text{ἐν,}}$$ $${\text{εἰς,}}$$ $${\text{ἐκ)}}$$ (§§ 54-56).
[訳註:ここで説明されているように,前置詞がその名に反して後置される際,$${\text{πέρι}}$$ のようにアクセントが置かれるのが,「序文」で言及された $${\text{« anastrophē »}}$$ である.]

第二章
動詞の形態

A) 単純動詞の人称形

10.

非複合動詞においては,あらゆる人称形$${^{(1)}}$$のアクセントは単純な規則に従う:アクセントは制限の法則が許す限り語末から遠くへと遡る.

(1) 直説法,命令法,接続法,希求法の形態を「人称形」と呼び,これに対して,不定詞および分詞を「動詞の名詞形」と呼ぶ.
[訳註:アクセントの位置が語末から語頭方向へと遡ることをアクセントの「後退」$${\text{« recul »}}$$ と呼ぶ.]

したがって,そのアクセントは次のようになる:

  • 短母音をもつ一音節語:oxytonon $${\text{(δός,}}$$ $${\text{ἕς,}}$$ $${\text{θές,}}$$ $${\text{σχές) ;}}$$

  • 長母音をもつ一音節語:perispōmenon $${^{(2)}}$$ $${\text{(εἶ}}$$「君は行くだろう」$${\text{) ;}}$$

  • 二音節語 ― 語末母音が短く,語頭母音が長い場合:properispōmenon $${\text{(λῦε) ;}}$$

  • 二音節語 ― その他の場合:paroxytonon $${\text{(φέρε,}}$$ $${\text{λῡ́ω,}}$$ $${\text{φέρω) ;}}$$

  • 語末が長母音の多音節語:paroxytonon $${\text{(φερέτω) ;}}$$

  • 語末が短母音の多音節語: proparoxytonon $${\text{(φέρετε).}}$$

(2) 曲アクセントが置かれた長母音は前半部が高く発音されるのであった (§ 5):したがって,たしかにアクセントは可能な限り語末から遠くへと遡っている.

11. 実際の例外.

a) 一部の用法において (§ 51),$${\text{εἰμι}}$$「私は~である」と $${\text{φημι}}$$「私は言う」の直説法現在は,常にアクセントをもつ2人称単数 $${\text{εἶ}}$$「君は~である」と $${\text{φῄς}}$$「君は言う」を除いて,後倚辞 (enclitica) である;しかし,$${\text{φῄς}}$$ の鋭アクセント (曲アクセントでなく:§ 10) もそれ自体が不規則である.

b) 非人称動詞 $${\text{χρή}}$$「~しなければならない」は,実際には「必要」を意味する古い中性名詞である (不規則なアクセントはそのため);直説法現在以外のこの動詞の活用は,$${\text{χρή}}$$と「~である」を意味する動詞との $${\text{« crāsis »}}$$ (融音,縮音,§ 62) から生じたものである$${^{(1)}.}$$

(1) $${\text{*Χρὴ}}$$ $${\text{εἴη}}$$ > $${\text{χρείη,}}$$ $${\text{*χρὴ}}$$ $${\text{ᾖ}}$$ > $${\text{χρῇ,}}$$ $${\text{*χρὴ}}$$ $${\text{εἶναι}}$$ > $${\text{χρῆναι,}}$$ $${\text{*χρὴ}}$$ $${\text{ὄν}}$$ > $${\text{χρεών,}}$$ $${\text{*χρὴ}}$$ $${\text{ἦν}}$$ > $${\text{χρῆν}}$$ (また,加音 (augmentum) がさらに付加されて $${\text{ἐχρῆν),}}$$$${\text{*χρὴ}}$$ $${\text{ἔσται}}$$ > $${\text{χρῆσται.}}$$

c) いくつかの命令法2人称単数$${^{(2)}}$$は不規則なアクセントを持つ.ひとつは $${\text{φαθί}}$$「言え」$${^{(3)}.}$$その他には,$${\text{ἔλιπον/ἐλιπόμην}}$$ タイプの第二アオリスト:能動態2人称単数の5つ $${\text{(εἰπέ,}}$$ $${\text{ἐλθέ,}}$$ $${\text{εὑρέ,}}$$ $${\text{ἰδέ,}}$$ $${\text{λαϐέ :}}$$oxytonon) とすべての中動態2人称単数 $${\text{(γενοῦ,}}$$ $${\text{πιθοῦ,}}$$ $${\text{ἱκοῦ,}}$$ etc.: perispōmenon) $${^{(4)}.}$$

(2) 他の人称は規則的である:$${\text{φάτε,}}$$ $${\text{εἴπετε,}}$$ $${\text{γένεσθε,}}$$ etc.
(3) この不規則なアクセントは,$${\text{φῄς}}$$ (a) と,それから $${\text{φημι}}$$の現在形の特殊な性質と関連づけられるだろう.
(4) この不規則なアクセントは,$${\text{λιπεῖν}}$$ (§ 16 a³), $${\text{λιπέσθαι}}$$ (§ 16 d³) のような不定詞や $${\text{λιπών}}$$ (§ 17 a³) のような分詞のアクセントと関連づけられるだろう.このタイプのアオリストにおいては,もともと語根末母音にアクセントがあり,ギリシア語はこのアクセントの名残を保持した.

d) いくつかの希求法においては (三態とも),アクセントは,接尾辞前の母音$${^{(5)}}$$を越えて遡ることはない:$${\text{ἱσταῖμεν,}}$$ $${\text{ἱσταῖτε,}}$$ $${\text{ἱσταῖεν,}}$$ $${\text{ἱσταῖο,}}$$ $${\text{ἱσταῖτο,}}$$ $${\text{ἱσταῖσθε,}}$$ $${\text{ἱσταῖντο.}}$$この例外$${^{(6)}}$$は次の形態に関連する:

  1. $${\text{εἰμι}}$$「である」の希求法現在$${^{(7)};}$$また,畳音を持つ $${\text{-μι}}$$ に終わる動詞の希求法現在$${^{(8)},}$$三態で $${\text{(ἵστημι,}}$$ $${\text{κίχρημι,}}$$ $${\text{ὀνίνημι,}}$$ $${\text{πίμπλημι,}}$$ $${\text{πίμπρημι}}$$ ; $${\text{τίθημι,}}$$ $${\text{ἵ̄ημι ;}}$$$${\text{δίδωμι) ;}}$$

  2. $${\text{ἵστημι}}$$ の希求法第二アオリスト能動態;$${\text{τίθημι,}}$$ $${\text{ἵ̄ημι,}}$$ $${\text{δίδωμι}}$$ の希求法第二アオリスト能動態および中動態$${^{(7)};}$$

  3. $${\text{(ἀπ)έδρᾱν,}}$$ $${\text{ἔϐην,}}$$ $${\text{ἐχάρην,}}$$ $${\text{ἔγνων,}}$$ etc. タイプの希求法第二アオリスト能動態$${^{(9)}}$$ $${^{(7)} ;}$$

  4. $${\text{ἐλύθην}}$$ と $${\text{ἐτρίϐην}}$$ タイプの全ての希求法アオリスト受動態;

  5. $${\text{οἶδα}}$$ の希求法 $${\text{εἰδείην.}}$$

(5) すなわち,希求法[訳註: 原著は aoriste となっているがおそらく誤り]の特徴を示す接尾辞である $${\text{-ι-}}$$ とともに二重母音を形成する母音:1人称複数 $${\text{ἱσταῖμεν,}}$$ $${\text{τιθεῖμεν,}}$$ $${\text{διδοῖμεν}}$$ において,制限の法則に妨げられるわけでもないのに,アクセントは母音 $${\text{α,}}$$ $${\text{ε,}}$$ $${\text{ο}}$$ を越えて遡ることはない (1人称複数 $${\text{λῡ́οιμεν}}$$ と比較せよ).
(6) この説明は未だ不確実なままである:おそらく類推によるものであろう.最も可能性が高いのは,これらの希求法が対応する接続法の型に従ったとするものである (§ 12 d).接続法においては,約音のために,アクセントがこの同じ音節に固定されていた.
(7) 一音節の語根をもつ形態の場合,単純動詞においてはこの特殊性が現れない $${\text{(εἶμεν,}}$$ $${\text{σταῖμεν,}}$$ $${\text{θεῖμεν,}}$$ $${\text{θεῖο,}}$$ $${\text{βαῖμεν,}}$$ $${\text{γνοῖμεν,}}$$ etc. は,規則的にアクセントが置かれた形態のように見える);しかし,複合動詞においてははっきりと現れ,アクセントは,他の複合動詞のように,動詞接頭辞 (praeverbum) にまで遡ることがない (§ 13):$${\text{παρ-εῖμεν,}}$$ $${\text{ἀπο-σταῖμεν,}}$$ $${\text{ἐπι-θεῖμεν,}}$$ etc. は $${\text{ἱσταῖμεν,}}$$ $${\text{λυθεῖμεν}}$$ のようにアクセントが置かれる.
(8) しかし,畳音を持たない動詞 $${\text{(ἄγαμαι,}}$$ $${\text{δύναμαι,}}$$ $${\text{ἐπίσταμαι,}}$$ $${\text{κρέμαμαι,}}$$ etc.) の希求法現在においてはアクセントが遡る:$${\text{δύναιο,}}$$ $${\text{δύναιτο,}}$$ etc. [訳註: 中世の写本やそれを元にした現代の校訂本においては $${\text{ἴσταιτο}}$$ のような「規則的」な表記も見られる.]
(9) しかし,希求法第二アオリスト $${\text{ὠνήμην,}}$$ $${\text{ἐπριάμην}}$$ においてはアクセントが遡る:$${\text{ὄναιο,}}$$ $${\text{πρίαιο,}}$$ etc.

12. 約音に起因する見かけ上の例外.

§ 6 で示されたように,かつての約音される前の形に遡れば,これら見かけ上の例外は消え去ってしまう:$${\text{ποιοῦμεν,}}$$ $${\text{λυθῶ,}}$$ $${\text{ἱστᾶσι}}$$ は,アクセントが規則的であった$${\text{*ποιέομεν,}}$$ $${\text{*λυθήω,}}$$ $${\text{*ἱστάᾱσι}}$$ から説明される.アクセントに関して,約音がこれら見かけ上の変則を引き起こす形態群には次のようなものがある:

a) 活用語尾 $${\text{-ᾱσι}}$$ を持ついくつかの能動態3人称複数:完了 $${\text{ἑστᾶσι}}$$ $${\text{(*ἑστά-ᾱσι),}}$$$${\text{τεθνᾶσι}}$$ $${\text{(*τεθνά-ᾱσι) ;}}$$現在 $${\text{ἱστᾶσι}}$$ $${\text{(*ἱστά-ᾱσι),}}$$$${\text{ἱ̄ᾶσι}}$$ $${\text{(*ἱ̄έ-ᾱσι)}}$$ $${^{(1)} .}$$

(1) しかし $${\text{ἴ-ᾱσι}}$$「彼らは行くだろう」においては,$${\text{δεικνύ-ᾱσι,}}$$ $${\text{τιθέ-ᾱσι,}}$$ $${\text{διδό-ᾱσι}}$$の場合と同じく,約音は起きない.

b) $${\text{*-ᾰ́ω,}}$$ $${\text{*-έω,}}$$ $${\text{*-όω}}$$ に終わる「約音動詞」$${\text{« verba contracta »}}$$ $${^{(2)}}$$ の (様々な人称法の) 現在と未完了過去,三態で.

(2) ここに,$${\text{*-ᾱ́ω,}}$$ $${\text{-ήω}}$$ $${\text{-ώω}}$$ に終わる珍しい約音動詞の現在と未完了過去を付け加えなくてはならない $${\text{(πεινῶ}}$$「私は空腹である」,$${\text{ζῶ}}$$「私は生きる」,$${\text{ῥῑγῶ}}$$「私は寒い」,etc.)

c) 能動態と中動態の約音未来:現在が $${\text{-λω,}}$$ $${\text{-μω,}}$$ $${\text{-νω,}}$$ $${\text{-ρω}}$$ に終わる動詞の $${\text{*-έω}}$$ に終わる未来形 $${^{(3)};}$$現在が $${\text{-ίζω}}$$ に終わる動詞の $${\text{*-ιέω}}$$ に終わる未来形;$${\text{*-ᾰ́ω}}$$ に終わる未来形 $${\text{(ἐλαύνω}}$$ の $${\text{ἐλῶ,}}$$$${\text{σκεδάννυμι}}$$ の $${\text{σκεδῶ,}}$$ etc.)

(3) そしていくつかの珍しい現在形を持つ動詞の未来形:$${\text{μάχομαι,}}$$ 未来 $${\text{μαχοῦμαι ;}}$$$${\text{πῑ́πτω,}}$$未来 $${\text{πεσοῦμαι ;}}$$etc.

d) 能動態語尾 $${\text{-ω,}}$$ $${\text{-ῃς,}}$$ etc. および,中受動語尾 $${\text{-ωμαι,}}$$ $${\text{-ῃ,}}$$ etc. を母音に終わる語基要素に付加することで形成されるいくつかの接続法:$${\text{ἱστῶ}}$$ $${\text{(< *ἱστᾱ́-ω),}}$$ $${\text{ἱστῶμαι}}$$$${\text{(< *ἱστᾱ́-ωμαι).}}$$すなわち$${^{(4)}:}$$

  1.  $${\text{εἰμι}}$$「である」の接続法現在;畳音を持つ $${\text{-μι}}$$に終わる動詞の接続法現在,三態で$${^{(5)}}$$$${\text{(ἵστημι,}}$$ $${\text{κίχρημι,}}$$ $${\text{ὀνίνημι,}}$$ $${\text{πίμπλημι,}}$$ $${\text{πίμπρημι ;}}$$$${\text{τίθημι,}}$$ $${\text{ἵ̄ημι}}$$ ; $${\text{δίδωμι) ;}}$$

  2. $${\text{ἵστημι}}$$の接続法第二アオリスト能動態と $${\text{τίθημι,}}$$ $${\text{ἵ̄ημι,}}$$ $${\text{δίδωμι}}$$ の接続法第二アオリスト能動態および中動態$${^{(6)};}$$

  3. $${\text{(ἀπ)έδρᾱν,}}$$ $${\text{ἔϐην,}}$$ $${\text{ἐχάρην,}}$$ $${\text{ἔγνων,}}$$ etc. タイプの接続法第二アオリスト能動態$${^{(7)};}$$

  4. $${\text{ἐλύθην}}$$ と $${\text{ἐτρίϐην}}$$ タイプの全ての接続法アオリスト受動態;

  5. $${\text{οἶδα}}$$ の接続法 $${\text{εἰδῶ.}}$$

(4) 希求法の一覧 § 11 d と並行的なリストである.
(5) しかし,現在 $${\text{ἄγαμαι,}}$$ $${\text{δύναμαι,}}$$ $${\text{ἐπίσταμαι,}}$$ $${\text{κρέμαμαι}}$$の接続法では遡る;例えば:$${\text{δύνωμαι,}}$$ $${\text{δύνῃ,}}$$ $${\text{δύνηται,}}$$ etc.
(6) しかし,第二アオリスト $${\text{ὠνήμην,}}$$ $${\text{ἐπριάμην}}$$ の接続法では遡る:$${\text{ὄνωμαι,}}$$ $${\text{πρίωμαι.}}$$
(7) ここでもまた,一音節語基形態の場合,単純動詞においてはこの特殊性をみることができない $${\text{(ὦ,}}$$ $${\text{στῶ,}}$$ $${\text{θῶ,}}$$ $${\text{βῶ,}}$$ etc. は規則的にアクセントが置かれた形態のようにみえる);しかし,複合動詞においてはこの特殊性がはっきりと現れ,アクセントは,他の複合動詞のように,動詞接頭辞 (praeverbum) にまで遡ることがない (§ 13):$${\text{παρ-ῶ,}}$$ $${\text{ἀπο-στῶ,}}$$ etc. は $${\text{ἱστῶ,}}$$ $${\text{λυθῶ}}$$ のようにアクセントが置かれる.

B) 複合動詞の人称形

13.

複合動詞の人称形においては,アクセントは制限の法則が許す限り語頭へ遡る.ただし第一の動詞接頭辞を越えることはない.

単純形の中で,次にあげるものは,必然的に複合形においても同じアクセントを保つ:多音節語 $${\text{(συλ-λέγομεν}}$$ は $${\text{λέγομεν}}$$ のように,$${\text{συλ-λεγέτω}}$$ は $${\text{λεγέτω}}$$ のように) と語末母音に長母音をもつ二音節語 $${\text{(συλ-λέγω}}$$ は $${\text{λέγω}}$$ のように),アクセントはこれ以上遡ることができないからである.

しかし,語末母音に単母音をもつ二音節語 $${\text{(οἶδα}}$$ のような properispōmenon,あるいは $${\text{ἴσμεν}}$$ のようなparoxytonon) からは,複合形において,proparoxytonon が得られる $${\text{(σύν-οιδα,}}$$ $${\text{σύν-ισμεν).}}$$― 例外,$${\text{εἰμι}}$$「である」の複合形における未来3人称単数:$${\text{παρ-έσται,}}$$ $${\text{μετ-έσται,}}$$ etc. $${^{(1)}.}$$

(1) ギリシア語では,より古い形 $${\text{*-έσεται}}$$ の類推で,複合形において $${\text{-έσται}}$$ とアクセントを置く習慣ができた.その結果,$${\text{εἰμι}}$$ の複合形において,アクセントが動詞接頭辞に置かれるのは直説法現在と命令法のみである.未完了過去では,アクセントは加音 (augmentum) を越えることはできない $${\text{(παρ-ῆν :}}$$本文参照) 接続法は約音され $${\text{(παρ-ῶ :}}$$§ 12 d),希求法も接続法のようにアクセントが置かれる $${\text{(παρ-εῖμεν :}}$$§ 11 d).未来では,$${\text{ἔσται}}$$ のみが語末に単母音をもつ二音節語であり,ここで言及した不規則性さえなければ,複合語においてアクセントが動詞接頭辞に達することができたであろう唯一の形態であった $${\text{(παρ-έσται).}}$$最後に,複合形の不定詞と分詞は常に単純形と同じようにアクセントが置かれる $${\text{(παρ-εῖναι,}}$$ $${\text{παρών)}}$$ ことを見る (§ 15).

長い一音節語 (perispōmenon:$${\text{εἶ}}$$「君は行くだろう」) は,複合形で paroxytonon を与える $${\text{(σύν-ει).}}$$

短い一音節語 $${\text{(σχές,}}$$ $${\text{θές,}}$$ $${\text{ἕς,}}$$ $${\text{δός)}}$$ からもまた,複合形で,paroxytonon が得られる $${\text{(σύν-θες) ;}}$$動詞接頭辞が二つある時でも,アクセントは,語末から数えて,最初の接頭辞を越えることはできない:$${\text{παρ-έν-θες,}}$$ $${\text{συμ-πρό-ες ;}}$$また,この規則の類推的拡張によって,もし動詞接頭辞が二音節なら,アクセントはその最終母音にしか置かれない:$${\text{παρά-δος,}}$$ $${\text{ἀντί-θες.}}$$

しかしながら,複合動詞においては,アクセントは決して加音を越えて遡ることはない.これは要するに,アクセントの観点からすれば,加音は動詞接頭辞と同一視されたということである.

したがって,例えば,$${\text{συν-έ-σχον}}$$ $${\text{(συνέχω}}$$ のアオリスト) のようにアクセントを置くことになる.しかし,この規則が関係するのは「音節的」加音のみではない;「時量的」加音 (未完了過去や直説法アオリストの語基の語頭母音延長) にまで及ぶ;したがって $${\text{δι-ῆγον}}$$ $${\text{(δι-άγω}}$$ の未完了過去),$${\text{συν-εῖχον}}$$ $${\text{(συν-έχω}}$$ の未完了過去), etc. のようにアクセントを置くことになる$${^{(2)}.}$$類推的拡張によって,この規則は,完了においてしばしば畳音に代わる語頭母音の延長にも適用され,その際はすべての法に残る:$${\text{συν-ῆχα,}}$$ $${\text{συν-ῆγμαι}}$$ $${\text{(συν-άγω}}$$ の完了), etc.

(2) $${\text{εἶπον}}$$ においては,加音は現れない.加音は語基の語頭二重母音 $${\text{ει-}}$$ と約音されているからである;しかし,複合動詞においては,アクセントによって加音の存在が示される:$${\text{συν-εῖπον}}$$ (対して命令法 $${\text{σύν-ειπε ;}}$$etc.).

14.

単純形におけるアクセント後退の例外 (§§ 11, 12) は,対応する複合形においても維持される.ただし,次の点に注意
a) 現在形 $${\text{εἰμι}}$$ と $${\text{φημι}}$$ の複合形は後倚辞 (enclitica) ではなく,アクセントは規則的である$${\text{(σύνειμι,}}$$ $${\text{σύμφημι).}}$$
b) 非人称 $${\text{χρή}}$$ には非常に珍しい複合形しかない;そのアクセントは規則的である $${\text{(ἀπό-χρη}}$$「十分である」).
c) 命令法能動態 $${\text{εἰπέ,}}$$ $${\text{ἐλθέ,}}$$ etc. は,複合形においては規則的に戻る $${\text{(σύν-ειπε,}}$$ $${\text{σύν-ελθε,}}$$ etc., proparoxyton).対して,対応する $${\text{-οῦ}}$$ に終わる中動形は,複合形であっても,perispōmenon のままである $${\text{(συγ-γενοῦ,}}$$ $${\text{ἀφ-ικοῦ,}}$$ etc.)$${^{(*)}.}$$

(*) $${\text{συγ-γενοῦ,}}$$ etc. というアクセントから,類推によって,$${\text{ἐν-θοῦ,}}$$ $${\text{προσ-θοῦ}}$$ というアクセントがもたらされた.

したがって,この他の § 11§ 12 で列挙された形態群の不規則あるいは約音で生じたアクセントは,複合語でも維持される:

  • $${\text{ἀν-ισταῖμεν,}}$$ $${\text{ἀνα-σταῖμεν,}}$$ $${\text{προσ-τιθεῖμεν,}}$$ $${\text{προσ-θεῖμεν,}}$$ $${\text{προσ-θεῖο,}}$$ etc. のような希求法;

  • $${\text{καθ-ιστᾶσι,}}$$ etc. のような,活用語尾 $${\text{-ᾱσι}}$$ をもつ3人称複数;

  • $${\text{προ-τῑμῶ,}}$$ etc. のような約音現在および未完了過去;

  • $${\text{ἐμ-μενῶ,}}$$ etc. のような約音未来;

  • $${\text{ἀν-ιστῶ,}}$$ $${\text{ἀνα-στῶ,}}$$ $${\text{προσ-τιθῶ,}}$$ $${\text{προσ-θῶμαι,}}$$ etc. のような,約音接続法.

C) 動詞の名詞形

15.

複合動詞における不定詞と分詞のアクセントは対応する単純動詞におけるアクセントと同じである.結果的に,これらの形態においてアクセントが動詞接頭辞に置かれることは決してない.

16. 不定詞のアクセント.

a) $${\text{-ειν}}$$ に終わる不定詞の間では,次の区別が必要である:
1) 約音されない現在および未来に対応するもの:これらは paroxytonon $${\text{(λῡ́ειν,}}$$ $${\text{λῡ́σειν,}}$$ etc.).
2) 約音された現在および未来不定詞:これは perispōmenon であるが,約音される前の $${\text{-ειν}}$$ に終わる不定詞は規則的に paroxytonon であったことから説明される:現在 $${\text{τῑμᾶν}}$$ $${\text{(*τῑμᾰ́-ειν),}}$$$${\text{ποιεῖν}}$$$${\text{(*ποιέ-ειν),}}$$$${\text{μισ-θοῦν}}$$ $${\text{(*μισθό-ειν)}}$$ $${^{(1)},}$$ 未来$${\text{νεμεῖν}}$$ ($${\text{*νεμέ-ειν),}}$$$${\text{νομιεῖν}}$$ $${\text{(*νομιέ-ειν),}}$$ $${\text{ἐλᾶν}}$$ $${\text{(*ἐλᾰ́-ειν),}}$$etc.
3) $${\text{ἔλιπον}}$$ タイプの第二アオリストの不定詞.これらは perispōmenon である:現在 $${\text{λείπειν}}$$ に対して,アオリスト $${\text{λιπεῖν ;}}$$etc. $${^{(2)}.}$$

(1) 長母音をもつ約音された現在においても同様 (§ 12 b, 註):$${\text{πεινῆν}}$$ $${\text{(*πεινᾱ́-ειν),}}$$$${\text{ζῆν}}$$ $${\text{(*ζή-ειν),}}$$ $${\text{ῥῑγῶν}}$$ $${\text{(*ῥῑγώ-ειν),}}$$ etc.
(2) $${\text{λιπεῖν}}$$ におけるアクセントの位置は約音によっては説明されない;これを対応する中動態不定詞 (§ 16 d³),能動態および中動態命令法 (§ 11 c),能動態分詞 (§ 17 a³) のアクセントと並べてみなければならない.

b) 能動態アオリストの $${\text{-αι}}$$ に終わる不定詞においては (cf. § 2ᵇ),アクセントは次末母音に置かれる.したがって,その母音の長短によって,paroxytonon $${\text{(ἄρξαι,}}$$ $${\text{γράψαι,}}$$ $${\text{ζέσαι,}}$$ $${\text{ὀμόσαι,}}$$ etc.) または properispōmenon $${\text{(λῦσαι,}}$$ $${\text{τῑμῆσαι,}}$$ $${\text{μεῖναι,}}$$ $${\text{ἀγγεῖλαι,}}$$ etc.) となる.

c) $${\text{-ναι}}$$ に終わる不定詞 (現在,アオリスト,完了) においても (cf. § 2ᵇ),アクセントは,同様に,次末母音に置かれる.したがって,その母音の長短によって,あるいは paroxytonon (現在 $${\text{ἰέναι,}}$$ $${\text{ἱστάναι,}}$$ $${\text{διδόναι,}}$$ $${\text{φάναι,}}$$ etc. ; 完了 $${\text{ἑστάναι,}}$$ $${\text{εἰδέναι,}}$$ $${\text{λελυκέναι,}}$$etc.),あるいは properispōmenon (現在 $${\text{εἶναι ;}}$$アオリスト $${\text{στῆναι,}}$$ $${\text{θεῖναι,}}$$ $${\text{δοῦναι,}}$$ $${\text{βῆναι,}}$$ $${\text{ἁλῶναι,}}$$ $${\text{χαρῆναι,}}$$ $${\text{λυθῆναι,}}$$ etc.).

d) $${\text{-σθαι}}$$ に終わる不定詞の間では (cf. § 2ᵇ),次の区別が必要である:
1) 約音されない現在あるいは未来,および $${\text{ἐλιπόμην}}$$ タイプのもの以外のアオリストに対応するもの:アクセントは語末から可能なかぎり遠くへと遡る$${^{(3)};}$$その結果,paroxytonon (アオリスト $${\text{δόσθαι,}}$$ $${\text{θέσθαι,}}$$ $${\text{ἕσθαι),}}$$perispōmenon (現在 $${\text{κεῖσθαι,}}$$ $${\text{ἧσθαι),}}$$そして,とくに proparoxytonon (現在 $${\text{λῡ́εσθαι,}}$$ $${\text{δίδοσθαι,}}$$ 未来 $${\text{λῡ́σεσθαι,}}$$ アオリスト $${\text{ὄνασθαι,}}$$ $${\text{λῡ́σασθαι,}}$$ $${\text{κρῑ́νασθαι,}}$$ etc.).
2) 約音された現在および未来に対応するもの:これらは properispōmenon だが,約音される前の不定詞は規則的に proparoxytononであったことから説明される;現在 $${\text{τῑμᾶσθαι}}$$ $${\text{(*τῑμᾰ́-εσθαι),}}$$ $${\text{ποιεῖσθαι}}$$$${\text{(*ποιέ-εσθαι),}}$$ $${\text{μισθοῦσθαι}}$$ $${\text{(*μισθό-εσθαι),}}$$ 未来$${\text{νομιεῖσθαι}}$$ $${\text{(*νομιέ-εσθαι),}}$$ etc.
3) $${\text{ἐλιπόμην}}$$ タイプのアオリストと完了に対応するもの:これらは次末母音にアクセントが置かれ,その母音が短ければ paroxytonon,長ければ properispōmenon である (アオリスト $${\text{γενέσθαι,}}$$ $${\text{ἱκέσθαι,}}$$ etc.;完了 $${\text{δεδόσθαι,}}$$ $${\text{μεμνῆσθαι,}}$$ $${\text{λελεῖφθαι,}}$$ etc.).

(3) しかし,動詞接頭辞に置かれることはない (§ 15):$${\text{ἀπο-δόσθαι,}}$$ $${\text{ἀνα-θέσθαι,}}$$ etc.

17. 分詞のアクセント.

ここでは男性単数主格のアクセントのみ上げることにする;三性あわせた残る曲用のアクセントは,形容詞について後述する規則から導かれる (§§ 22 以下).

a) $${\text{-ων}}$$ に終わる分詞の中では,次の区別が必要である:
1) 約音されない $${\text{-ω}}$$ に終わる現在および未来に対応するもの:これらは paroxytonon である $${\text{(λῡ́ων,}}$$ $${\text{λῡ́σων,}}$$ etc.).
2) 約音される現在分詞および未来分詞:これらは perispōmenon であるが,これは,約音される前のより古い分詞形は規則的にparoxytonon であったことから説明される:現在 $${\text{τῑμῶν}}$$ $${\text{(*τῑμᾰ́-ων),}}$$ $${\text{ποιῶν}}$$$${\text{(*ποιέ-ων),}}$$ $${\text{μισθῶν}}$$ $${\text{(*μισθό-ων)}}$$ $${^{(1)},}$$ 未来 $${\text{μενῶν}}$$$${\text{(*μενέ-ων),}}$$ $${\text{νομιῶν}}$$ $${\text{(*νομιέ-ων),}}$$ $${\text{σκεδῶν}}$$$${\text{(*σκεδᾰ́-ων),}}$$ etc.
3) $${\text{εἰμι}}$$「である」および $${\text{εἶμι}}$$「行く」の現在分詞 $${\text{(ὤν,}}$$ $${\text{ἰών),}}$$$${\text{ἔλιπον}}$$ タイプの第二アオリスト分詞,これらは oxytonon $${^{(2)}:}$$現在 $${\text{λείπων}}$$ に対して,アオリスト $${\text{λιπών,}}$$ etc.

(1) 長母音をもつ約音現在においても同様 (§ 12 b):$${\text{πεινῶν}}$$ $${\text{(*πεινᾱ́-ων),}}$$ $${\text{ζῶν}}$$ $${\text{(*ζή-ων)}}$$, $${\text{ῥῑγῶν}}$$ $${\text{(*ῥῑγώ-ων),}}$$ etc.
(2) これらアオリストのアクセントの特殊性については,§§ 11 c, 16 a³, 16 d³ も参照.

b) 主格が $${\text{-ς}}$$ に終わり,属格が $${\text{-ντος}}$$ に終わる分詞は oxytonon である (現在 $${\text{δεικνῡ́ς,}}$$ $${\text{ἱστᾱ́ς,}}$$ $${\text{τιθείς,}}$$ $${\text{ἱ̄είς,}}$$ $${\text{διδούς ;}}$$アオリスト $${\text{στᾱ́ς,}}$$ $${\text{βᾱ́ς,}}$$ $${\text{θείς,}}$$ $${\text{χαρείς,}}$$ $${\text{λυθείς,}}$$ $${\text{δούς,}}$$ etc.).ただし,$${\text{-α}}$$ 語幹アオリストは例外で,これは paroxytonon である $${\text{(λῡ́σᾱς,}}$$ $${\text{μείνᾱς,}}$$ $${\text{ἀγγείλᾱς,}}$$ etc.).

c) 能動態完了分詞は oxytonon である $${\text{(λελυκώς,}}$$ etc.).

d) $${\text{-μενος}}$$ に終わる分詞は proparoxytonon である $${\text{(λῡόμενος,}}$$ $${\text{λῡσόμενος,}}$$ $${\text{λυθησόμενος,}}$$ $${\text{λῡσάμενος,}}$$ $${\text{γενόμενος}}$$ $${^{(3)},}$$ etc.).ただし,完了は例外で,これは paroxytonon である (現在 $${\text{διδόμενος}}$$ に対して,$${\text{δεδομένος ;}}$$etc.).

(3) $${\text{γενόμενος}}$$ においては,アクセントは $${\text{εἰπέ,}}$$ $${\text{γενοῦ,}}$$ $${\text{εἰπεῖν,}}$$ $${\text{γενέσθαι,}}$$ $${\text{εἰπών}}$$ におけるのとちょうど同じ母音に置かれる (前註参照);しかし,$${\text{λιπών}}$$ に対して $${\text{λείπων,}}$$ $${\text{λιπεῖν}}$$ に対して $${\text{λείπειν,}}$$ $${\text{λιπέσθαι}}$$ に対して $${\text{λείπεσθαι}}$$ があるように,アオリスト $${\text{λιπόμενος}}$$に対するであろう $${\text{[λείπομενος]}}$$ があることは,アクセント後退の制限によって許されない.したがって,現在 $${\text{λειπόμενος}}$$ のアクセントがアオリスト $${\text{λιπόμενος}}$$ のアクセントと偶然に一致することになる.

18. 名詞形:一覧表.

$$
\begin{darray}{ | c | l l l l l |}
\hline\\
&\bold{名詞形 :}&\text{一覧表}&&&\\
&&&\bold{1º\enspace不定詞}&&\\
\hline
&\small\text{λείπειν} &\small\text{λείπεσθαι}&&\small\text{εἶναι, ἰέναι}&\small\text{κεῖσθαι}\\
&\small\text{(\scriptsize{約音}}&\small\text{(\scriptsize{約音}}&&\small\text{διδόναι}&\small\text{διδοσθαι}\\
\small\bold{現}&\enspace\small\text{τῑμᾶν}&\enspace\small\text{τῑμᾶσθαι}&&&\\
\small\bold{在}&\enspace\small\text{ποιεῖν}&\enspace\small\text{ποιεῖσθαι}&&&\\
&\enspace\small\text{μισθοῦν)}&\enspace\small\text{μισθοῦσθαι)}&&&\\\\
\hline
&\small\text{λείψειν}&\small\text{λείψεσθαι}&&&\\
&&\small\text{λειφθήσεσθαι}&&&\\
\small\bold{未}&\small\text{(\scriptsize{約音}}&\small\text{(\scriptsize{約音}}&&&\\
\small\bold{来}&\enspace\small\text{νεμεῖν}&\enspace\small\text{νεμεῖσθαι}&&\\
&\enspace\small\text{νομιεῖν}&\enspace\small\text{νομιεῖσθαι)}&&\\
&\enspace\small\text{ἐλᾶν)}&&&&\\
\hline
\small\bold{ア}&\small\text{λιπεῖν}&\small\text{λιπέσθαι}&\small\text{ὀμόσαι}\enspace\small\text{λῡ́σασθαι}&\small\text{στῆναι}&\small\text{ὄνασθαι}\\
\small\bold{オ}&&&\small\text{ἀγγεῖλαι}&\small\text{δοῦναι}&\small\text{δόσθαι}\\
\small\bold{リ}&&&&\small\text{ἁλῶναι}&\\
\small\bold{ス}&&&&\small\text{λειφθῆναι}&\\
\small\bold{ト}&&&&&\\
\hline
&&&&\small\text{λελοιπέναι}&\small\text{λελεῖφθαι}\\
\small\bold{完}&&&&\small\text{δεδωκέναι}&\small\text{δεδόσθαι}\\
\small\bold{了}&&&&\small\text{ἑστάναι}&\\\\
\hline&&&\bold{2º\enspace分詞}&&\\
\hline&\small\text{λείπων} &\small\text{λειπόμενος}&&\small\text{ὤν, ἰών}&\small\text{κείμενος}\\
&\small\text{(\scriptsize{約音}}&\small\text{(\scriptsize{約音}}&&\small\text{διδούς}&\small\text{διδόμενος}\\
\small\bold{現}&\enspace\small\text{τῑμῶν}&\enspace\small\text{τῑμώμενος}&&&\\
\small\bold{在}&\enspace\small\text{ποιῶν}&\enspace\small\text{ποιούμενος}&&&\\
&\enspace\small\text{μισθῶν)}&\enspace\small\text{μισθούμενος)}&&&\\\\
\hline
&\small\text{λείψων}&\small\text{λειψόμενος}&&&\\
&&\small\text{λειφθησόμενος}&&&\\
\small\bold{未}&\small\text{(\scriptsize{約音}}&\small\text{(\scriptsize{約音}}&&&\\
\small\bold{来}&\enspace\small\text{νεμῶν}&\enspace\small\text{νεμούμενος}&&\\
&\enspace\small\text{νομιῶν}&\enspace\small\text{νομιούμενος)}&&\\
&\enspace\small\text{ἐλῶν)}&&&&\\
\hline
\small\bold{ア}&\small\text{λιπών}&\small\text{λιπόμενος}&\small\text{ὀμόσᾱς}\enspace\small\text{λῡσάμενος}&\small\text{στᾱ́ς}&\small\text{ὀνάμενος}\\
\small\bold{オ}&&&\small\text{ἀγγείλᾱς}&\small\text{δούς}&\small\text{δόμενος}\\
\small\bold{リ}&&&&\small\text{ἁλούς}&\\
\small\bold{ス}&&&&\small\text{λειφθείς}&\\
\small\bold{ト}&&&&&\\
\hline
&&&&\small\text{λελοιπώς}&\small\text{λελειμμένος}\\
\small\bold{完}&&&&\small\text{δεδωκώς}&\small\text{δεδομένος}\\
\small\bold{了}&&&&\small\text{ἑστώς}&\\\\
\hline
\end{darray}
$$

第三章
曲用の形態

A) 代名詞

19.

代名詞及び代名詞的形容詞にアクセントがどのように置かれるかは,使いながら覚えなくてはならない.ここではいくつかの指摘に留める.

a) 人称代名詞

1) 単数の人称代名詞は,主格 $${\text{ἐγώ}}$$と $${\text{σύ}}$$ を除き,その用法の一部において後倚辞 (enclitica) である:§ 52参照.加えて,主格 $${\text{ἔγωγε}}$$ と与格 $${\text{ἔμοιγε}}$$ の特殊なアクセントを抑えておこう.これらは,$${\text{ἐγώ,}}$$ $${\text{ἐμοί}}$$ + $${\text{γε}}$$ (後倚辞) から,後倚 (enclisis) の規則では直接に説明されない.

2) 双数の人称代名詞は,主対格では oxytonon,属与格では perispōmenon である$${^{(1)}:}$$$${\text{νώ/νῷν,}}$$ $${\text{σφώ/σφῷν.}}$$

3) 複数の人称代名詞 (その形態は,大部分,約音によっている) は全て perispōmenon である $${\text{(ἡμεῖς,}}$$ $${\text{ἡμᾶς,}}$$ $${\text{ἡμῶν,}}$$ $${\text{ἡμῖν ;}}$$ $${\text{ὑ̄μεῖς,}}$$ $${\text{ὑ̄μᾶς,}}$$ $${\text{ὑ̄μῶν,}}$$ $${\text{ὑ̄μῖν ;}}$$ $${\text{σφεῖς,}}$$ $${\text{σφᾶς,}}$$ $${\text{σφῶν).}}$$ただし,与格 $${\text{σφίσι}}$$ は例外$${^{(2)}.}$$

4) 再帰代名詞 (単一語として書かれる) $${\text{ἐμαυτόν,}}$$ $${\text{σεαυτόν}}$$ あるいは $${\text{σαυτόν,}}$$ $${\text{ἑαυτόν}}$$ あるいは $${\text{αὑτόν}}$$ においては,全ての曲用において,第二要素 $${\text{αὐτός}}$$ のアクセントのみが維持される.

(1) この格グループ二つ:「直立格 (正格)」cāsus $${\text{« rēctus »}}$$ と「斜格」cāsus $${\text{« oblīquus »}}$$ の対立については,§ 33 参照.
(2) アッティカ散文では $${\text{σφας,}}$$ $${\text{σφι,}}$$ etc. のような複数代名詞の後倚形はもはや使われない.

20.

b) 他の代名詞および代名詞的形容詞

1) 疑問詞 $${\text{τίς}}$$ は,全ての格で,語頭の母音に鋭アクセントが置かれる$${^{(1)};}$$この疑問詞の一音節形 $${\text{τίς}}$$ と $${\text{τί}}$$ は,文中において鋭アクセントを重アクセントに変えることはない$${^{(2)}.}$$

(1) アクセントが語頭に固定されていることは,この語の疑問の意味に結びつけられる;したがって $${\text{τίς}}$$ は,後述する (§ 40) 第三曲用に関連した規則の例外をなすことになる.
(2) §§ 4, 45 を参照;鋭アクセントの維持は,同様に,疑問の意味に結びつけられる.

2) 不定代名詞 $${\text{τις}}$$ は,$${\text{τινα}}$$ の二重語 $${\text{ἄττα}}$$ を除いて,後倚辞 (enclitica) である (§ 50).

3) 男性単数主格を除いて,不定代名詞 $${\text{οὐδ-είς}}$$および $${\text{μηδ-είς}}$$は数名詞 $${\text{εἷς}}$$ のようにアクセントが置かれる$${^{(3)}.}$$

(3) $${\text{εἷς}}$$ の曲用のアクセントについては,§ 30 を参照.

4) 他の代名詞的な語の大部分は,アクセントの観点からすると,男中性形が第二曲用に属し,女性形が第一曲用の $${\text{-ᾱ}}$$ $${\text{(-η)}}$$ に終わるタイプに属する形容詞 (§ 23) のように振る舞う.したがって,proparoxytonon$${\text{ἡμέτερος,}}$$ $${\text{ὑ̄μέτερος,}}$$ $${\text{σφέτερος,}}$$ $${\text{ἕτερος,}}$$ $${\text{ἑκάτερος,}}$$ $${\text{ἕκαστος ;}}$$properispōmenon $${\text{οὗτος,}}$$ $${\text{τοιοῦτος,}}$$ $${\text{τοσοῦτος,}}$$ $${\text{τηλικοῦτος,}}$$ $${\text{ποῖος,}}$$ $${\text{οἷος,}}$$ $${\text{τοῖος,}}$$ $${\text{ὁποῖος,}}$$ $${\text{ἐκεῖνος ;}}$$paroxytonon $${\text{ἄλλος,}}$$ $${\text{μόνος,}}$$ $${\text{πόσος,}}$$ $${\text{ὅσος,}}$$ $${\text{τόσος,}}$$ $${\text{ὁπόσος ;}}$$oxytonon $${\text{ἐμός,}}$$ $${\text{σός,}}$$ $${\text{αὐτός,}}$$ $${\text{ὅς ;}}$$etc.

5) 冠詞の語頭の $${\text{τ-}}$$ がない形態は前倚辞 (proclitica) である (§ 48).

6) 不定関係詞 $${\text{ὅστις}}$$ の曲用においては,不定代名詞 $${\text{τις}}$$ の形態にはアクセントが置かれず (§ 50) に,先行する関係詞 $${\text{ὅς}}$$ の形態に,単独で使われた時と同様にアクセントが置かれる;$${\text{ὅ-του}}$$ $${\text{(= οὗτινος),}}$$ $${\text{ὅ-τῳ}}$$ $${\text{(= ᾧτινι),}}$$ $${\text{ἅ-ττα}}$$ $${\text{(= ἅτινα)}}$$ といった形態も同じく,アクセントが置かれた第一要素と後倚辞である第二要素に分解される.

7) 小辞 $${\text{-δε}}$$ は $${\text{ὅ-δε,}}$$ $${\text{τοιόσ-δε,}}$$ $${\text{τοσόσ-δε,}}$$ $${\text{τηλικόσ-δε}}$$ において後倚辞 (enclitica) である;これらの語は,三つの性および三つの数で,主格と対格ではparoxytonon,属格と与格では properispōmenon である$${^{(4)}.}$$

(4) したがって,あたかも小辞 $${\text{-δε}}$$ が oxytonon である語に結びつけられたかのようである;しかし実際には,$${\text{-δε}}$$ に先立つアクセントは,― 少なくとも元々は ― 後倚 (enclisis) によるアクセントであり,対応する単純形は $${\text{ὁ}}$$ (前倚辞, proclitica), $${\text{τοῖος}}$$ (properispōmenon),$${\text{τόσος}}$$ と $${\text{τηλίκος}}$$ (paroxytonon) である.

8) 不定代名詞 $${\text{ὁστισοῦν,}}$$ $${\text{ὁποτεροσοῦν}}$$ の小辞 $${\text{-οῦν}}$$ は全ての曲用において曲アクセントを持つ.

9) 指示小辞 $${\text{-ῑ}}$$ は $${\text{ὁδῑ́,}}$$ $${\text{οὑτοσῑ́, }}$$$${\text{ἐκεινοσῑ́ }}$$の全ての曲用において鋭アクセントを持つ.

B) 形容詞

21.

形容詞の男性単数主格のアクセント$${^{(1)}}$$は,辞書によって得られる;各形容詞ごとに辞書で確かめなくてはならない.ここで引いておくのが有用と思われる唯一の規則は,というのも例外がないからであるが,比較級と最上級に関する規則である:男性単数主格においては,アクセントは常に語末から可能な限り遠くへと遡る;したがって,単数主格において,$${\text{-τατος,}}$$ $${\text{-ιστος}}$$ に終わる最上級および $${\text{-τερος}}$$ に終わる比較級は proparoxytonon;$${\text{-ων}}$$に終わる比較級は paroxytonon である.

(1) 形容詞の男性単数主格のアクセントは時に形容詞の「第一アクセント」$${\text{« accent premier »}}$$ と呼ばれる.

22.

三性における曲用のアクセントは次の規則に従う$${^{(1)}:}$$アクセントは,制限の法則が許す限りにおいて,女性形と中性形においても,男性単数主格と同じ位置を保持する.

(1) 分詞の曲用も同じ規則に従う (§ 17).

したがって,ある性と別の性とでのアクセント位置の変動は,語末母音の長短の差異によってのみ生じうる.

a) $${\text{ἔνδοξος}}$$ タイプ:この点において,三性とも第二曲用をとる形容詞には当然いかなる問題も生じない (男女 $${\text{ἔνδοξος,}}$$ 中 $${\text{ἔνδοξον ;}}$$男女 $${\text{εὔνους,}}$$ 中 $${\text{εὔνουν ;}}$$男女 $${\text{ἵ̄λεως,}}$$ 中 $${\text{ἵ̄λεων).}}$$

23.

b) $${\text{ἀγαθός}}$$ タイプ:第二曲用の男中性形に,語末母音が長母音である第一曲用の $${\text{-ᾱ}}$$ または $${\text{-η}}$$ に終わる女性形が対応し,この女性形は複数主格を除く$${^{(1)}}$$全ての格で長母音を維持する.

(1) § 2 b を参照.

したがって $${\text{ἐλεύθερος}}$$ あるいは $${\text{λῡόμενος}}$$ のような proparoxytonon のみが,女性形において,アクセントの位置の変化$${^{(2)}}$$を被ることになる:$${\text{ἐλευθέρᾱ,}}$$ $${\text{λῡομένη.}}$$しかしアクセントは女性複数主格でその元の位置を取り戻す $${\text{(ἐλεύθεραι,}}$$ $${\text{λῡόμεναι}}$$ は $${\text{ἐλεύθεροι,}}$$ $${\text{λῡόμενοι}}$$ のようにアクセントが置かれる).

(2) アクセントの性質は,(男性形が) properispōmenon である語の女性形でのみ,制限の法則によって変更される:男性形 $${\text{κοῦφος}}$$ に対して女性形 $${\text{κούφη.}}$$

そのため,複数形の全ての曲用は男性形と女性形とで同じアクセントを受ける傾向にあった$${^{(3)}.}$$類推によって,女性複数属格にまで (これは,$${\text{*-ᾱ́-ων}}$$ の約音によっているため,全て perispōmenon になるはずであった:§ 32),対応する男性複数属格のアクセントが拡張された: $${\text{ἐλευθέρων,}}$$ $${\text{κούφων,}}$$ $${\text{φίλων.}}$$

(3) 一般規則のために (§ 22),他の曲用形では,アクセントが既に同じように置かれていた:
$${\begin{darray}{ l l l }\text{主格}&\text{ἐλεύθεροι : ἐλεύθεραι}&\\&\text{κοῦφοι : κοῦφαι}&\\&\text{φίλοι : φίλαι}&\\&&\text{ἀγαθοί : ἀγαθαί}\\\text{対格}&\text{ἐλευθέρους : ἐλευθέρᾱς}&\\&\text{κούφους : κούφᾱς}&\\&\text{φίλους : φίλᾱς}&\\&&\text{ἀγαθούς : ἀγαθᾱ́ς}\\\text{属格}&&\text{ἀγαθῶν : ἀγαθῶν}\\\text{与格}&\text{ἐλευθέροις : ἐλευθέραις}&\\&\text{κούφοις : κούφαις}&\\&\text{φίλοις : φίλαις}&\\&&\text{ἀγαθοῖς : ἀγαθαῖς}\\\end{darray}}$$
これに,類推によって,属格 $${\text{ἐλευθέρων,}}$$ $${\text{κούφων,}}$$ $${\text{φίλων}}$$ の同一性が付加されるに至った.

約音形容詞は女性形でも男性形のように規則的にアクセントが置かれる:$${\text{σῶς/σᾶ ;}}$$ $${\text{ἁπλοῦς/ἁπλῆ ;}}$$$${\text{ἀργυροῦς/ἀργυρᾶ ;}}$$ etc. 形容詞 $${\text{πλέως/πλέᾱ}}$$ も同様.

24.

c) $${\text{εὐδαίμων}}$$ タイプ:三性とも第三曲用をとる.いくつかの形容詞は,男女性形と中性形との間で語末母音に長短の差異はない $${\text{(ἄχαρις/ἄχαρι ;}}$$ etc.).しかし,その他の形容詞は,中性形で語末母音が短母音であり,男女性形の長母音と対立する.

これら後者の形容詞のうち,男女性形で oxytonon であるものは,中性形でもそのままである $${\text{(ἀληθής/ἀληθές,}}$$ etc.).しかし,男女性形で paroxytonon であるもののうち,いくつか$${^{(1)}}$$は中性形で proparoxytonon になる$${\text{(εὐδαίμων/εὔδαιμον ;}}$$$${\text{βελτῑ́ων/βέλτῑον ;}}$$ $${\text{κακοήθης/κακόηθες,}}$$ etc.).この一般規則 (§ 22) への違反は男女性呼格 $${\text{εὔδαιμον,}}$$ $${\text{βέλτῑον,}}$$ $${\text{κακόηθες,}}$$ etc. からの類推に起因するものである.その形態は中性形の形態と同様であり,アクセントの後退が正当化される (§ 29).$${^{(*)}}$$

(1) したがって,このグループの形容詞に関しては,中性形のアクセントを辞書で確認する必要がある.しかし,$${\text{-ων}}$$ に終わる paroxytonon のいかなる分詞も中性形で proparoxytonon にはならない $${\text{(λαμϐάνων/λαμϐάνον ;}}$$ $${\text{βασιλεύων/βασιλεῦον ;}}$$ etc.).
(*) $${\text{εὐδαίμων,}}$$ $${\text{κακοήθης,}}$$ etc. のような形容詞においては,語幹が proparoxytonon であり $${\text{(εὔδαιμον-,}}$$ $${\text{κακόηθεσ-,}}$$ etc.) (男女)単数主格では語末の長母音の影響で,その本来の抑揚が隠されているが,単数呼格と中性で再び表れるのである.

25.

d) $${\text{μέλᾱς}}$$ タイプ:男性形と中性形は第三曲用に属しているが,$${\text{-ᾰ}}$$ (第一曲用) に終わる接尾辞の付加によって女性形を形成する形容詞.

男性形と女性形との間の音節数の差異にもかかわらず,また,男性形と中性形との間で語末母音の長短が頻繁に異なるにもかかわらず,アクセントは三性で同じ位置を保持しているのが見られる$${^{(1)}.}$$したがって:

1) 男性形と中性形との間に長短の差異なし.

$$
\begin{darray}{ l l l }
\text{πᾶς}&\text{πᾶσα}&\text{πᾶν}\\
\text{ἡδῠ́ς}&\text{ἡδεῖα}&\text{ἡδῠ́ ; etc.}\\
\end{darray}
$$

2) 男性形と中性形との間で長短の差異あり.

$$
\begin{darray}{ l l l }
\text{μέλᾱς}&\text{μέλαινα}&\text{μέλᾰν}\\
\text{χαρίεις}&\text{χαρίεσσα}&\text{χαρίεν}\\
\text{λῡ́σᾱς}&\text{λῡ́σᾱσα}&\text{λῦσᾰν}\\
\text{λείπων}&\text{λείπουσα}&\text{λεῖπον}\\
\text{ἱστᾱ́ς}&\text{ἱστᾶσα}&\text{ἱστᾰ́ν}\\
\text{τιθείς}&\text{τιθεῖσα}&\text{τιθέν}\\
\text{διδούς}&\text{διδοῦσα}&\text{διδόν}\\
\text{δεικνῡ́ς}&\text{δεικνῦσα}&\text{δεικνῠ́ν}\\
\text{λιπών}&\text{λιποῦσα}&\text{λιπόν}\\
\text{λελυκώς}&\text{λελυκυῖα}&\text{λελυκός ; etc.}\\
\end{darray}
$$

(1) 長い次末母音の法則のために性質が変化することはある:$${\text{τιθείς/τιθεῖσα ;}}$$ $${\text{λείπων/λεῖπον ;}}$$ etc.

26.

e) 男性形の曲用に二つの異なる語幹をとる不規則形容詞 $${\text{(πολύ-/πολλό- ;}}$$$${\text{πρᾶο-/πρᾱΰ- ;}}$$ $${\text{μέγα-/μεγάλο-)}}$$ には,一度これらの語幹それぞれのアクセントが知られさえすれば,アクセントの観点からすると,特別な問題は生じない.

C) 名詞

1º 総論

27.

名詞 (実詞, substantīvum) の単数主格のアクセント$${^{(1)}}$$は辞書によって得られる;各語について辞書で確認しなくてはならない.

(1) 名詞の単数主格のアクセントは,時に,この名詞の「第一アクセント」$${\text{« accent premier »}}$$ と呼ばれる.

他の格変化形のアクセントは,単数主格のアクセントに応じて,これから述べられる規則によって得られる.

当然,これらの規則は,対応する単数主格に応じた,形容詞三性それぞれの曲用にも有効である (いくつかの女性複数主格および複数属格に対して § 23 で示された特殊性はあるが) $${^{(2)}.}$$

(2) すなわち,アクセントの観点からすると,男性形 $${\text{λείπων}}$$ のそれぞれの格が,この男性単数主格から説明されるのは,名詞 $${\text{λέων}}$$ のそれぞれの格がこの主格形より説明される如くである;女性形 $${\text{λείπουσα}}$$ のそれぞれの格がこの女性単数主格から説明されるのは,名詞 $${\text{θάλαττα}}$$ のそれぞれの格がこの主格形より説明される如くである;etc. ということである.ただし:
a) 男性単数主格が proparoxytonon であり,女性単数主格が $${\text{-ᾱ,}}$$ $${\text{-η}}$$ に終わる paroxytonon の形容詞 (例えば $${\text{ἐλευθέρᾱ)}}$$ には,proparoxytonon の女性複数主格が対応する $${\text{(ἐλεύθεραι) :}}$$§ 23;$${\text{ἡμέρᾱ/ἡμέραι}}$$ のような名詞と比較すること.
b) 単数主格が $${\text{-ᾱ,}}$$ $${\text{-η}}$$ に終わる paroxytonon の形容詞の女性形には,男性形のアクセントがどうであれ (例えば $${\text{ἐλευθέρᾱ,}}$$ $${\text{κούφη,}}$$ $${\text{σόφη),}}$$paroxytonon の複数属格が対応する $${\text{(ἐλευθέρων,}}$$ $${\text{κούφων,}}$$ $${\text{σόφων) :}}$$§ 23;$${\text{ἡμέρᾱ/ἡμερῶν}}$$ のような名詞と比較すること.[訳註: $${\text{σοφή}}$$ は oxytonon なので,ここで挙げる例としては不適当.]

以下,主格と対格を「直立格」(cāsus rēctus),属格と与格を「斜格」(cāsus oblīquus) と呼ぶことにする.

28.

アクセントの位置はとても大まかな規則に従う:アクセントは,曲用において,制限の法則が許す限り,単数主格で占めている位置を保持する$${^{(1)}.}$$

(1) 時に,制限の法則に反してまでアクセントがその位置を保つことすら起こる:$${\text{πόλις,}}$$ 単数属格 $${\text{πόλεως}}$$ (見かけ上の例外,かつての $${\text{*πόληος}}$$ によって説明される),複数属格 $${\text{πόλεων}}$$ (単数からの類推に起因する実際の例外).後述 § 43 参照.

例えば,$${\text{λόγος}}$$ は全ての格で語基の母音にアクセントが置かれたままになる:$${\text{λόγον,}}$$ $${\text{λόγου,}}$$ $${\text{λόγῳ,}}$$ $${\text{λόγω,}}$$ $${\text{λόγοιν,}}$$ $${\text{λόγοι,}}$$ $${\text{λόγους,}}$$ $${\text{λόγων,}}$$ $${\text{λόγοις ;}}$$しかし,$${\text{ἄνθρωπος}}$$ のような proparoxytonon は,語末母音が短母音である形にあっては常に proparoxytonon であり続けるが:$${\text{ἄνθρωπον,}}$$ $${\text{ἄνθρωποι,}}$$語末母音が長母音である格にあっては paroxytonon になる:$${\text{ἀνθρώπου,}}$$ $${\text{ἀνθρώπῳ,}}$$ $${\text{ἀνθρώπω,}}$$ $${\text{ἀνθρώποιν,}}$$ $${\text{ἀνθρώπους,}}$$ $${\text{ἀνθρώπων,}}$$ $${\text{ἀνθρώποις ;}}$$同様に $${\text{τέτταρες,}}$$ $${\text{τέτταρας,}}$$ $${\text{τέτταρσι}}$$ であるが,$${\text{τεττάρων.}}$$$${\text{ὄνομα}}$$ のような不等音節語においては,アクセントは位置を二度変えなくてはならない (ある時は短母音を持つ音節の,ある時は長母音を持つ音節の付加):$${\text{ὄνομα/ὀνόματος,}}$$ $${\text{ὀνόματι,}}$$ $${\text{ὀνόματε,}}$$ $${\text{ὀνόματα,}}$$ $${\text{ὀνόμασι/ὀνομάτοιν,}}$$ $${\text{ὀνομάτων.}}$$制限の法則は機械的に適用される.

29.

この規則はいくつかの例外を含んでいる.その詳細は三曲用の検討において述べることにする;ここでは,その主要なグループを示すだけで十分である:

a) 単数呼格でのアクセントの後退.
第一曲用の一つの呼格において $${\text{(δεσπότης,}}$$ 呼格 $${\text{δέσποτᾰ),}}$$第二曲用の一つの呼格において $${\text{(ἀδελφός,}}$$ 呼格 $${\text{ἄδελφε),}}$$第三曲用のいくつかの呼格において $${\text{(ἀνήρ,}}$$ 呼格 $${\text{ἄνερ ;}}$$etc. §§ 42, 45),アクセントは単数主格で置かれている母音を越えて遡る.

oxytonon である主格 $${\text{(Σαπφώ,}}$$ $${\text{Ζεύς,}}$$ $${\text{βασιλεύς)}}$$ に対する,$${\text{Σαπφοῖ,}}$$ $${\text{Ζεῦ,}}$$ $${\text{βασιλεῦ,}}$$ etc. (§§ 41, 45) のような呼格を perispōmenon とするアクセントは,この呼格においてアクセントを後退させる傾向の別の表れである$${^{(1)}.}$$

(1) というのも,二重母音は,$${\text{Ζεύς}}$$ においてはその後半が,$${\text{Ζεῦ}}$$ においてはその前半が高く発音されるからである (§ 5).

30.

b) 曲用中の語頭と語末の間でのアクセントの揺れ.― 第一曲用の女性形 $${\text{μίᾰ}}$$「一」と女性名詞 $${\text{ὄργυιᾰ}}$$「ひろ(長さの単位)」において$${^{(1)},}$$また,第三曲用のいくつかの語においては (§ 40),直立格では語頭母音に,斜格では語末母音にアクセントを置いていた古い文法方式のなごりがいくつか残存している.

(1) $${\text{ὄργυια,}}$$ 属格 $${\text{ὀργυιᾶς}}$$ のようにアクセントが置かれる語に $${\text{ἄγυια,}}$$ 属格 $${\text{ἀγυιᾶς}}$$「道」という,詩的語彙に属する語がある.属格 $${\text{ὀργυιᾶς,}}$$ $${\text{ἀγυιᾶς}}$$ によって,アクセントの揺れが必ずしも,斜格の二音節的な特徴 $${\text{(μιᾶς)}}$$ に結びつけられるわけではないことがわかる;第三曲用の属格 $${\text{θυγατρός}}$$ と $${\text{γυναικός}}$$ によっても同じ指摘が求められる:§ 42 と註を参照.

ここでは例として初め三つの数名詞の曲用をあげよう:

$$
\begin{darray}{ l l l l l l l l l }
\text{主}&\text{男}&\text{εἷς}&\text{中}&\text{ἕν}&\text{女}&\text{μία}&\text{男中女}&\text{δύο, ἄμφω}\\
\text{対}&&\text{ἕνα}&&\medspace\text{»}&&\text{μίαν}&&\qquad\text{»}\\
\text{属}&&\text{ἑνός}&&&&\text{μιᾶς}&&\text{δυοῖν, ἀμφοῖν}\thinspace\\
\text{与}&&\text{ἑνί}&&&&\text{μιᾷ}&&\qquad\text{»}
\end{darray}\\
\begin{darray}{ l l l l l l l l l }\\
\text{主}&&\text{男女}&\text{τρεῖς (<*τρέες)}&&&\text{中}&\text{τρία}& & & &\qquad \\
\text{対}&&&\text{τρεῖς}&&&&\enspace\thinspace\text{»}\\
\text{属}&&&\text{τριῶν}&&\\
\text{与}&&&\text{τρισί}&&\\
\end{darray}
$$

31.

c) 類推に起因する不規則性.― アクセントが,単数主格でアクセントが置かれる位置を越えて遡る第三曲用の呼格 (§ 29) の類推によって,いくつかの形容詞の中性形でも同様にアクセントが遡る $${\text{(εὐδαίμων,}}$$ 呼格 $${\text{εὔδαιμον ;}}$$そのため,中性主対格 $${\text{εὔδαιμον.}}$$§§ 24, 45 を参照).$${^{(*)}}$$

(*) $${\text{εὐδαίμων,}}$$ $${\text{κακοήθης,}}$$ etc. のような形容詞においては,語幹が proparoxytonon であり $${\text{(εὔδαιμον-,}}$$ $${\text{κακόηθεσ-,}}$$ etc.) (男女)単数主格では語末の長母音の影響で,その本来の抑揚が隠されているが,単数呼格と中性で再び表れるのである.

男性形が proparoxytonon であり,また,そのために,複数主格が proparoxytonon である,$${\text{-‍ᾱ}}$$ ($${\text{-η)}}$$ に終わるparoxytonon の形容詞女性形 $${\text{(αἴτιος}}$$「原因をもつ」,女性形 $${\text{αἰτίᾱ}}$$ 複数主格 $${\text{αἴτιαι :}}$$§ 23) の類推によって,いくつかの $${\text{-ίᾱ}}$$ に終わる paroxytonon の抽象名詞は,複数主格が proparoxytonon になる $${\text{(αἰτίᾱ}}$$「原因」,複数主格 $${\text{αἴτιαι) :}}$$$${\text{τῑμωρίᾱ,}}$$ $${\text{τραγῳδίᾱ,}}$$ $${\text{κωμῳδίᾱ,}}$$ etc $${^{(1)}.}$$

(1) したがって,このグループの抽象名詞に対しては複数主格のアクセントを確認することが有用であろう.
[訳註: 実際には,主要な辞書でこれについて明記されているものはないので確認のしようがない.この現象については Hērōdiānus に言及があり,Vendryes, $${\textit{Traité}}$$ $${\textit{d’accentuation}}$$$${\textit{grecque,}}$$ §263 ; Kühnerm & Blass, $${\textit{Ausführliche}}$$$${\textit{Grammatik}}$$$${\textit{der}}$$$${\textit{Griechischen}}$$$${\textit{Sprache,}}$$ §80, 7 でも取り上げられている.なお,原著では $${\text{κωμῳδίᾱ}}$$ が $${\text{κομῳδία}}$$ になっている.]

32.

d) 約音に起因する見かけ上の例外.― 約音の働きによって$${^{(1)}}$$アクセントが,単数主格で占めている場所から遠ざけられるということが起こりうる;この場合,より古い約音される前の形態を復元しさえすれば,アクセントが規則的であったことがわかる.

(1) 対して,「量の置換」$${\text{« metathesis quantitātis »}}$$ (§ 7§ 28, 註) は,制限の法則に対する違反を引き起こしても,アクセントが単数主格で占めている位置にアクセントを保持する:$${\text{πόλις,}}$$ 属格 $${\text{πόλεως,}}$$ etc.

第一曲用の全ての名詞は,単数主格でアクセントがどこに置かれていようと,複数属格では perispōmenon である$${^{(2)}:}$$$${\text{ἀγορῶν}}$$ $${\text{(ἀγορᾱ́),}}$$ $${\text{ἡμερῶν}}$$ $${\text{(ἡμέρᾱ),}}$$ $${\text{μουσῶν}}$$ $${\text{(μοῦσα),}}$$ $${\text{θαλαττῶν}}$$ $${\text{(θάλαττα),}}$$ etc. これは,$${\text{-ᾱ}}$$ $${\text{(-η)}}$$ または $${\text{-ᾰ}}$$ に終わる全ての語の複数属格が元来 $${\text{*-ᾱ-ων}}$$ に終わっていたからである$${^{(3)};}$$したがって,単数主格での位置がどうあれ,制限の法則のために,アクセントは $${\text{-ᾱ-}}$$ の上に置かれることになっていた;つまり $${\text{*-ᾱ́-ων}}$$ に終わる全ての属格は規則的に paroxytonon であった;約音の後,それらは perispōmenon になった.

(2) § 23 で述べられた条件下において,女性形容詞も同様.
(3) したがって,第一曲用は,元来,複数では不等音節語であった.

33.

これまで示されたのは曲用におけるアクセントの位置を固定する規則である.アクセントの性質 (鋭アクセントか曲アクセントか) に関しては,当然,次末および語末の長母音でしか問題にならない.

長い次末母音の場合,アクセントの性質は語末母音の長短によって機械的に決定される (§ 8);主格 $${\text{δῶρον}}$$ に対して属格 $${\text{δώρου ;}}$$主格 $${\text{πολῑ́της}}$$ に対して呼格 $${\text{πολῖτᾰ ;}}$$etc.

長い語末母音の場合,規則は次のようなものである:約音が起こる曲用を除いて$${^{(1)},}$$アクセントが長い語末母音に置かれるとき,直立格であれば鋭アクセントが置かれ,斜格であれば曲アクセントが置かれる.

(1) 約音が起こる場合,直立格の語末は,アクセントが置かれるなら,これもまた perispōmenon である (§§ 36ᵈ, 38).しかしながら,$${\text{ὀστοῦν}}$$ のような語の双数では,$${\text{ἀδελφώ/ἀδελφοῖν}}$$ の類推によって,属与格 $${\text{ὀστοῖν}}$$ には主対格 $${\text{ὀστώ}}$$ が対置された.$${\text{νεώς}}$$「神殿」の屈折もまた例外をなす (§ 38).

そのため,第一及び第二曲用において,直立格で oxytonon である全ての語は斜格で perispōmenon である.上で,第一曲用の複数属格がなぜperispōmenon であるのかを見た (§ 32).さらに,斜格の語末は,両曲用ともに長母音である:単数属格 第一 $${\text{-ᾱς}}$$ $${\text{(-ης),}}$$ 第二 $${\text{-ου ;}}$$単数与格 第一 $${\text{-ᾱͅ}}$$ $${\text{(-ῃ),}}$$ 第二 $${\text{-ῳ ;}}$$双数属与格 第一 $${\text{-αιν,}}$$ 第二 $${\text{-oιν ;}}$$複数属格 第二 $${\text{-ων ;}}$$複数与格 第一 $${\text{-αις,}}$$ 第二 $${\text{-οις ;}}$$oxytonon である語においては,アクセントはその位置を保つので,これらの語末には曲アクセントが置かれる.この規則には,代名詞双数主対格 $${\text{νώ,}}$$ $${\text{σφώ ;}}$$属与格 $${\text{νῷν,}}$$ $${\text{σφῷν}}$$ (§ 19 ª²) のアクセントを関連づけることができる.

規則のその他の適用:§ 30 で定義されたアクセントの揺れの例において,斜格では,語末母音が長母音であるとき,この語末には曲アクセントが置かれる:$${\text{μία/μιᾶς,}}$$ $${\text{μιᾷ ;}}$$ $${\text{πούς/ποδοῖν,}}$$ $${\text{ποδῶν ;}}$$ etc.

2º 第一曲用

34.

語末母音は,次に挙げるものを除いて,全ての格で長母音である:
1) $${\text{-ᾰ}}$$ に終わる男性単数呼格 $${\text{(πολῖτᾰ) ;}}$$$${^{(1)}}$$
2) 複数主格 $${\text{-αι}}$$ (§ 2);
3) $${\text{-ᾰ}}$$ に終わる女性名詞の単数主格 ($${\text{-ᾰ)}}$$ と単数対格 ($${\text{-ᾰν).}}$$

(1) $${\text{-ίᾱς}}$$ に終わる男性名詞は $${\text{(-ίᾱ}}$$ に終わる多くの女性名詞からの類推によって) 呼格が $${\text{-ᾱ}}$$ に終わる:$${\text{νεᾱνίᾱ,}}$$ etc.$${\text{-ης}}$$ に終わるいくつかの男性名詞は呼格が $${\text{-η}}$$ に終わる:$${\text{Εὐρῑπίδη,}}$$ etc.

その形を約音によっている複数属格は perispōmenon である (:$${\text{-ῶν} :}$$ § 32).ただし,後述する例外を除く.

アクセントの位置と性質は,単数主格に応じて,上述の一般規則によって決定される.ただし,後述するいくつかの例外を除く.

35.

第一曲用には次のものが含まれる:

a) $${\text{-ᾱ}}$$ $${\text{(-η),}}$$ 属格 $${\text{-ᾱς}}$$ ($${\text{-ης)}}$$ に終わる女性形

  • あるいは oxytonon (名詞 $${\text{ἀγορᾱ́,}}$$ $${\text{τῑμή ;}}$$形容詞 $${\text{ἰσχῡρᾱ́,}}$$ $${\text{σοφή) ;}}$$
    これらは斜格で perispōmenon になる (§ 33).

  • あるいは paroxytonon (名詞 $${\text{ἡμέρᾱ,}}$$ $${\text{γνώμη ;}}$$形容詞 $${\text{ἄκρᾱ,}}$$ $${\text{μώρᾱ,}}$$ $${\text{ἐλευθέρᾱ,}}$$ $${\text{φίλη,}}$$ $${\text{κούφη,}}$$ $${\text{λειπομένη).}}$$

例外:
複数主格で proparoxytonon であるのは:
1) 男性形が proparoxytonon である形容詞:$${\text{ἐλεύθεραι,}}$$ $${\text{ἐλεύθεροι}}$$ のように (§ 23);
2) $${\text{-ίᾱ}}$$ に終わるいくつかの抽象名詞 (§ 31);
他方,複数属格で paroxytonon であるのは:
1) 全ての形容詞 $${\text{(ἄκρων,}}$$ $${\text{φίλων,}}$$ $${\text{μώρων,}}$$ $${\text{κούφων,}}$$ $${\text{ἐλευθέρων,}}$$ $${\text{λειπομένων,}}$$ 男性形と同様に:§ 23);
2) 名詞 $${\text{ἀφύαι}}$$「イワシの類」.

$$
\begin{darray}{ l l l l l l }
\bold{単}&\text{主}^{(1)}&\text{ἀγορᾱ́}&\text{ἡμέρᾱ}&\text{γνώμη}&\text{αἰτίᾱ}\\
&\text{対}&\text{ἀγορᾱ́ν}&\text{ἡμέρᾱν}&\text{γνώμην}&\text{αἰτίᾱν}\\
&\text{属}&\text{ἀγορᾶς}&\text{ἡμέρᾱς}&\text{γνώμης}&\text{αἰτίᾱς}\\
&\text{与}&\text{ἀγορᾷ}&\text{ἡμέρᾳ}&\text{γνώμῃ}&\text{αἰτίᾳ}\\
\bold{双}&\text{主対}&\text{ἀγορᾱ́}&\text{ἡμέρᾱ}&\text{γνώμᾱ}&\text{αἰτίᾱ}\\
&\text{属与}&\text{ἀγοραῖν}&\text{ἡμέραιν}&\text{γνώμαιν}&\text{αἰτίαιν}\\
\bold{複}&\text{主}&\text{ἀγοραί}&\text{ἡμέραι}&\text{γνῶμαι}&\text{αἴτιαι}\qquad\quad\enspace\\
&\text{対}&\text{ἀγορᾱ́ς}&\text{ἡμέρᾱς}&\text{γνώμᾱς}&\text{αἰτίᾱς}\\
&\text{属}&\text{ἀγορῶν}&\text{ἡμερῶν}&\text{γνωμῶν}&\text{αἰτιῶν}\\
&\text{与}&\text{ἀγοραῖς}&\text{ἡμέραις}&\text{γνώμαις}&\text{αἰτίαις}\\
\\
\end{darray}\\
\begin{darray}{ l l l l l }
\bold{単}&\text{主}&\text{ἐλευθέρᾱ (Adj.)}&\text{φίλη (Adj.)}&\text{μώρᾱ (Adj.)}\\
&\text{対}&\text{ἐλευθέρᾱν}&\text{φίλην}&\text{μώρᾱν}\\
&\text{属}&\text{ἐλευθέρᾱς}&\text{φίλης}&\text{μώρᾱς}\\
&\text{与}&\text{ἐλευθέρᾳ}&\text{φίλῃ}&\text{μώρᾳ}\\
\bold{双}&\text{主対}&\text{ἐλευθέρᾱ}&\text{φίλᾱ}&\text{μώρᾱ}\\
&\text{属与}&\text{ἐλευθέραιν}&\text{φίλαιν}&\text{μώραιν}\\
\bold{複}&\text{主}&\text{ἐλεύθεραι}&\text{φίλαι}&\text{μῶραι}\\
&\text{対}&\text{ἐλευθέρᾱς}&\text{φίλᾱς}&\text{μώρᾱς}\\
&\text{属}&\text{ἐλευθέρων}&\text{φίλων}&\text{μώρων}\\
&\text{与}&\text{ἐλευθέραις}&\text{φίλαις}&\text{μώραις}\\
\end{darray}
$$

(1) 単数呼格以外の全ての格変化を載せたこれらの曲用表および続く表 (§§ 35-36) において,一方では女性形の,他方では男性形のアクセントを全種類示した.同じようにアクセントが置かれ,音色 $${\text{ᾱ/η}}$$ のみが異なる二つの曲用 $${\text{(ἀγορᾱ́/τῑμή ;}}$$ $${\text{μοῖρα/μοῦσα ;}}$$ etc.) からは,どちらか一方のみを挙げた.

b) $${\text{-ᾱς}}$$ ($${\text{-ης),}}$$ 属格 $${\text{-ου}}$$ に終わる男性名詞

  • あるいは oxytonon $${\text{(κριτής) ;}}$$
    これらは斜格で perispōmenon になる (§ 33)

  • あるいは paroxytonon $${\text{(νεᾱνίᾱς,}}$$ $${\text{ναύτης).}}$$

例外:$${\text{δεσπότης}}$$ の単数呼格は proparoxytonon である:$${\text{δέσποτᾰ}}$$ (§ 29);$${\text{χρήστης}}$$「債権者」および $${\text{ἐτησίαι}}$$「夏の北西風」の複数属格は paroxytonon である:$${\text{χρήστων,}}$$ $${\text{ἐτησίων.}}$$

$$
\begin{darray}{ l l l l l l }
\bold{単}&\text{主}&\text{κριτής}&\text{νεᾱνίᾱς}&\text{ναύτης}&\text{χρήστης}\\
&\text{対}&\text{κριτήν}&\text{νεᾱνίᾱν}&\text{ναύτην}&\text{χρήστην}\\
&\text{属}&\text{κριτοῦ}&\text{νεᾱνίου}&\text{ναύτου}&\text{χρήστου}\\
&\text{与}&\text{κριτῇ}&\text{νεᾱνίᾳ}&\text{ναύτῃ}&\text{χρήστῃ}\\
\bold{双}&\text{主対}&\text{κριτᾱ́}&\text{νεᾱνίᾱ}&\text{ναύτᾱ}&\text{χρήστᾱ}\\
&\text{属与}&\text{κριταῖν}&\text{νεᾱνίαιν}&\text{ναύταιν}&\text{χρήσταιν}\\
\bold{複}&\text{主}&\text{κριταί}&\text{νεᾱνίαι}&\text{ναῦται}&\text{χρῆσται}\\
&\text{対}&\text{κριτᾱ́ς}&\text{νεᾱνίᾱς}&\text{ναύτᾱς}&\text{χρήστᾱς}\\
&\text{属}&\text{κριτῶν}&\text{νεᾱνιῶν}&\text{ναυτῶν}&\text{χρήστων}\\
&\text{与}&\text{κριταῖς}&\text{νεᾱνίαις}&\text{ναύταις}&\text{χρήσταις}\\
\end{darray}
$$

36.

c) $${\text{-ᾰ,}}$$ 属格 $${\text{-ᾱς}}$$ $${\text{(-ης)}}$$ に終わる女性形

  • あるいは paroxytonon $${\text{(δόξα) ;}}$$
    例外:$${\text{μία}}$$ $${\text{(οὐδεμία,}}$$ $${\text{μηδεμία :}}$$§ 20 b³), $${\text{ὄργυια}}$$ の perispōmenon である斜格 (§ 30).

  • あるいは properispōmenon (名詞 $${\text{μοῖρα,}}$$ $${\text{μοῦσα ;}}$$形容詞 $${\text{λελυκυῖα,}}$$ $${\text{λιποῦσα) ;}}$$

  • あるいは proparoxytonon (名詞 $${\text{γέφῡρα,}}$$ $${\text{θάλαττα ;}}$$形容詞 $${\text{μάκαιρα,}}$$ $${\text{λείπουσα).}}$$

$$
\begin{darray}{ l l l l l l }
\bold{単}&\text{主}&\text{δόξα}&\text{μοῦσα}&\text{θάλαττα}&\text{ὄργυια}\\
&\text{対}&\text{δόξαν}&\text{μοῦσαν}&\text{θάλατταν}&\text{ὄργυιαν}\\
&\text{属}&\text{δόξης}&\text{μούσης}&\text{θαλάττης}&\text{ὀργυιᾶς}\\
&\text{与}&\text{δόξῃ}&\text{μούσῃ}&\text{θαλάττῃ}&\text{ὀργυιᾷ}\\
\bold{双}&\text{主対}&\text{δόξᾱ}&\text{μούσᾱ}&\text{θαλάττᾱ}&\text{ὀργυίᾱ}\\
&\text{属与}&\text{δόξαιν}&\text{μούσαιν}&\text{θαλάτταιν}&\text{ὀργυιαῖν}\\
\bold{複}&\text{主}&\text{δόξαι}&\text{μοῦσαι}&\text{θάλατται}&\text{ὄργυιαι}\\
&\text{対}&\text{δόξᾱς}&\text{μούσᾱς}&\text{θαλάττᾱς}&\text{ὀργυίᾱς}\\
&\text{属}&\text{δοξῶν}&\text{μουσῶν}&\text{θαλαττῶν}&\text{ὀργυιῶν}\\
&\text{与}&\text{δόξαις}&\text{μούσαις}&\text{θαλάτταις}&\text{ὀργυιαῖς}\\
\end{darray}
$$

d) 全ての格で perispōmenon である,約音された語.

男性名詞 $${\text{Ἑρμῆς,}}$$ 属 $${\text{-μοῦ.}}$$
女性名詞 $${\text{Ἀθηνᾶ,}}$$ 属 $${\text{-νᾶς ;}}$$$${\text{μνᾶ,}}$$ 属 $${\text{μνᾶς ;}}$$$${\text{σῡκῆ,}}$$ 属 $${\text{-κῆς ;}}$$etc.
第二曲用の約音形容詞の女性形 : $${\text{σᾶ,}}$$ 属 $${\text{σᾶς ;}}$$$${\text{ἀργυρᾶ,}}$$ 属 $${\text{-ρᾶς ;}}$$ $${\text{χρῡσῆ,}}$$ 属 $${\text{-σῆς ;}}$$ $${\text{ἁπλῆ,}}$$ 属 $${\text{ἁπλῆς ;}}$$ etc.

$$
\begin{darray}{ l l l l }
\bold{単}&\text{主}&\text{μνᾶ}&\text{Ἑρμῆς}\qquad\qquad\qquad\qquad\qquad\\
&\text{対}&\text{μνᾶν}&\text{Ἑρμῆν}\\
&\text{属}&\text{μνᾶς}&\text{Ἑρμοῦ}\\
&\text{与}&\text{μνᾷ}&\text{Ἑρμῇ}\\
\bold{双}&\text{主対}&\text{μνᾶ}&\\
&\text{属与}&\text{μναῖν}&\\
\bold{複}&\text{主}&\text{μναῖ}&\\
&\text{対}&\text{μνᾶς}&\\
&\text{属}&\text{μνῶν}&\\
&\text{与}&\text{μναῖς}&\\
\end{darray}
$$

3º 第二曲用

37.

男女性形の語末 $${\text{-ος}}$$ (単数主格),$${\text{-ε}}$$ (単数呼格),$${\text{-ον}}$$ (単数対格),$${\text{-οι}}$$(複数主格:§ 2ᵇ) 及び中性主対格の語末 $${\text{-ον}}$$ (単数),$${\text{-ᾰ}}$$ (複数) は短い.その他の語末母音は長い.

アクセントの位置と性質は,単数主格に応じて,上述の一般規則によって決定される (唯一の例外は $${\text{ἀδελφός}}$$ の単数呼格 $${\text{ἄδελφε ;}}$$§ 29 参照).

そのため,$${\text{-ος,}}$$ $${\text{-ον}}$$ に終わる語は,

  • あるいは oxytonon (男 $${\text{ἀνεψιός,}}$$ 女 $${\text{ὁδός,}}$$ 中 $${\text{ζυγόν,}}$$ 形容詞 $${\text{σοφός)}}$$$${^{(1)},}$$

  • あるいは paroxytonon (男 $${\text{λόγος,}}$$ 女 $${\text{νόσος,}}$$ 中 $${\text{ἔργον,}}$$ 形容詞 $${\text{φίλος),}}$$

  • あるいは properispōmenon (男 $${\text{οἶκος,}}$$ 女 $${\text{νῆσος,}}$$ 中 $${\text{δῶρον,}}$$ 形容詞 $${\text{κοῦφος),}}$$

  • あるいは proparoxytonon (男 $${\text{ἄνθρωπος,}}$$ 女 $${\text{ἄμπελος,}}$$ 中 $${\text{πρόσωπον,}}$$ 形容詞$${\text{ἐλεύθερος).}}$$

(1) oxytonon は斜格で規則的に perispōmenon になる (§ 33).

曲用表は次のようになる (呼格は示さなかった):

$$
\begin{darray}{ l l l l }
\bold{単}&\text{主}&\text{σοφός, σοφόν}&\text{φίλος, φίλον}\\
&\text{対}&\text{σοφόν, σοφόν}&\text{φίλον, φίλον}\\
&\text{属}&\text{σοφοῦ}&\text{φίλου}\\
&\text{与}&\text{σοφῷ}&\text{φίλῳ}\\
\bold{双}&\text{主対}&\text{σοφώ}&\text{φίλω}\\
&\text{属与}&\text{σοφοῖν}&\text{φίλοιν}\\
\bold{複}&\text{主}&\text{σοφοί, σοφά}&\text{φίλοι, φίλα}\\
&\text{対}&\text{σοφούς, σοφά}&\text{φίλους, φίλα}\\
&\text{属}&\text{σοφῶν}&\text{φίλων}\\
&\text{与}&\text{σοφοῖς}&\text{φίλοις}\\\\
\bold{単}&\text{主}&\text{κοῦφος, κοῦφον}&\text{ἐλεύθερος, ἐλεύθερον}\\
&\text{対}&\text{κοῦφον, κοῦφον}&\text{ἐλεύθερον, ἐλεύθερον}\\
&\text{属}&\text{κούφου}&\text{ἐλευθέρου}\\
&\text{与}&\text{κούφῳ}&\text{ἐλευθέρῳ}\\
\bold{双}&\text{主対}&\text{κούφω}&\text{ἐλευθέρω}\\
&\text{属与}&\text{κούφοιν}&\text{ἐλευθέροιν}\\
\bold{複}&\text{主}&\text{κοῦφοι, κοῦφα}&\text{ἐλεύθεροι, ἐλεύθερα}\\
&\text{対}&\text{κούφους, κοῦφα}&\text{ἐλευθέρους, ἐλεύθερα}\\
&\text{属}&\text{κούφων}&\text{ἐλευθέρων}\\
&\text{与}&\text{κούφοις}&\text{ἐλευθέροις}\\
\end{darray}
$$

38.

第二曲用には,さらに,$${\text{-εως}}$$ (中 $${\text{-εων)}}$$ に終わる語と約音される語が含まれる.

$${\text{-εως}}$$ $${\text{(-εων)}}$$ に終わる語は,かつての $${\text{*-ηος}}$$ $${\text{(*-ηον)}}$$ に終わる語であって,語内で $${\text{*ηο}}$$ から $${\text{εω}}$$ への変化が起こった$${^{(1)}.}$$アクセントは,単数主格で,この変化の前に占めていた位置に留まった:かつての oxytonon $${\text{(*νηός}}$$「神殿」) は oxytonon であり続けた $${\text{(νεώς)}}$$;かつての properispōmenon $${\text{(*πλῆος}}$$「満ちた」) は paroxytonon になった $${\text{(πλέως) ;}}$$そして,かつての proparoxytonon $${\text{(*ἵ̄ληος)}}$$ は proparoxytonon であり続け $${\text{(ἵ̄λεως),}}$$アクセントは制限の法則に合致しなくなった.残る全ての屈折においては,アクセントは単数主格と同じ位置と同じ性質を保持する$${^{(2)}.}$$

(1) 「量の置換」$${\text{« metathesis quantitātis »}}$$;§ 7 参照.
(2) このアクセントは,大部分,単数主格からの類推に基づいている.したがって,これをそれぞれの格の古形から説明しようとしてはならない.例えば,属格で,$${\text{νεώ,}}$$ $${\text{νεῴν,}}$$ $${\text{νεών}}$$ の鋭アクセントは,$${\text{*νηοῦ,}}$$ $${\text{*νηοῖν,}}$$ $${\text{*νηῶν}}$$ からは正当化されない;また$${\text{ἵ̄λεω,}}$$ $${\text{ἵ̄λεῳν,}}$$ $${\text{ἵ̄λεων}}$$ は $${\text{*ἱ̄λήου,}}$$ $${\text{*ἱ̄λήοιν,}}$$ $${\text{*ἱ̄λήων}}$$ からは生じえない.

約音された語とは,$${\text{*αο}}$$ や $${\text{*ωο}}$$ が $${\text{ω}}$$ に $${\text{(σῶς}}$$ $${\text{<}}$$ $${\text{*σάος;ζώς}}$$$${\text{<}}$$ $${\text{*ζωός),}}$$$${\text{*εο}}$$ や $${\text{*οο}}$$ が $${\text{ου}}$$ に至った語である $${\text{(χρῡσοῦς}}$$ $${\text{<}}$$$${\text{*χρῡσέος ;}}$$ $${\text{νοῦς}}$$ $${\text{<}}$$ $${\text{*νόος) ;}}$$大部分は perispōmenon であるが,oxytonon $${\text{(ζώς)}}$$ あるいはparoxytonon $${\text{(εὔνους)}}$$ も少数ある.アクセントは,全ての屈折において,単数主格と同じ位置$${^{(3)},}$$そして (語末母音の上では) 同じ性質を維持する$${^{(4)}.}$$ただし,唯一の例外:$${\text{-οῦς}}$$ に終わる perispōmenon は双数主対格でoxytonon になる$${^{(5)}.}$$

(3) ここでもまた,アクセントは部分的に単数主格からの類推に基づいている.paroxytonon に関しては,これをそれぞれの格の古形から説明しようとしてはならない:$${\text{εὔνου,}}$$ $${\text{εὔνοιν,}}$$ $${\text{εὔνων}}$$ は $${\text{*εὐνόου,}}$$ $${\text{*εὐνόοιν,}}$$ $${\text{*εὐνόων}}$$ からは生じえない;etc.
(4) しかし,$${\text{εὔνους}}$$ は,男女複数主格で $${\text{εὖνοι}}$$ になる (アクセントが置かれた長い次末母音の規則が,この語があたかも約音された語でなかったかのように適用される).
(5) § 33 参照.

そのため,曲用表は次のようになる$${^{(6)}:}$$

$$
\begin{darray}{ l l l l }
\bold{単}&\text{主}&\text{νεώς}&\text{πλέως, πλέων}\\
&\text{対}&\text{νεών}&\text{πλέων, πλέων}\\
&\text{属}&\text{νεώ}&\text{πλέω}\\
&\text{与}&\text{νεῴ}&\text{πλέῳ}\\
\bold{双}&\text{主対}&\text{νεώ}&\text{πλέω}\\
&\text{属与}&\text{νεῴν}&\text{πλέῳν}\\
\bold{複}&\text{主}&\text{νεῴ}&\text{πλέῳ, πλέα}\\
&\text{対}&\text{νεώς}&\text{πλέως, πλέα}\\
&\text{属}&\text{νεών}&\text{πλέων}\\
&\text{与}&\text{νεῴς}&\text{πλέῳς}\\\\
\bold{単}&\text{主}&\text{σῶς, σῶν}&\text{ἵ̄λεως, ἵ̄λεων}\\
&\text{対}&\text{σῶν, σῶν}&\text{ἵ̄λεων, ἵ̄λεων}\\
&\text{属}&\text{σῶ}&\text{ἵ̄λεω}\\
&\text{与}&\text{σῷ}&\text{ἵ̄λεῳ}\\
\bold{双}&\text{主対}&\text{σῶ}&\text{ἵ̄λεω}\\
&\text{属与}&\text{σῷν}&\text{ἵ̄λεῳν}\\
\bold{複}&\text{主}&\text{σῷ, σᾶ}&\text{ἵ̄λεῳ, ἵ̄λεα}\\
&\text{対}&\text{σῶς, σᾶ}&\text{ἵ̄λεως, ἵ̄λεα}\\
&\text{属}&\text{σῶν}&\text{ἵ̄λεων}\\
&\text{与}&\text{σῷς}&\text{ἵ̄λεῳς}\\\\
\bold{単}&\text{主}&\text{χρῡσοῦς, χρῡσοῦν}&\text{εὔνους, εὔνουν}\\
&\text{対}&\text{χρῡσοῦν, χρῡσοῦν}&\text{εὔνουν, εὔνουν}\\
&\text{属}&\text{χρῡσοῦ}&\text{εὔνου}\\
&\text{与}&\text{χρῡσῷ}&\text{εὔνῳ}\\
\bold{双}&\text{主対}&\text{χρῡσώ}&\text{εὔνω}\\
&\text{属与}&\text{χρῡσοῖν}&\text{εὔνοιν}\\
\bold{複}&\text{主}&\text{χρῡσοῖ, χρῡσᾶ}&\text{εὖνοι, εὔνοα}\\
&\text{対}&\text{χρῡσοῦς, χρῡσᾶ}&\text{εὔνους, εὔνοα}\\
&\text{属}&\text{χρῡσῶν}&\text{εὔνων}\\
&\text{与}&\text{χρῡσοῖς}&\text{εὔνοις}\\
\end{darray}
$$

(6) 「ノウサギ」を表す名詞は,あるいは $${\text{νεώς}}$$ のように $${\text{(λαγώς),}}$$あるいは $${\text{σῶς}}$$ のように $${\text{(λαγῶς)}}$$ アクセントが置かれうる.― 「曙」を表す名詞は,アッティカ方言では,第二曲用にも第三曲用にも属さない不規則な曲用を持つが,$${\text{πλέως}}$$ の曲用のようにアクセントが置かれる:主 $${\text{ἕως,}}$$ 対 $${\text{ἕω,}}$$ 属 $${\text{ἕω,}}$$ 与 $${\text{ἕῳ.}}$$― 「綱」を表す名詞,$${\text{κάλως}}$$ は (元々は約音された名詞ではないが) 全ての格で paroxytonon である $${\text{(πλέως}}$$ のように).

4º 第三曲用

39.

第三曲用は最も多くの不規則性を示す曲用である.

長い語尾:$${\text{-οιν}}$$ (双数属与格) と $${\text{-ων}}$$ (複数属格);短い語尾:単数で $${\text{-α,}}$$ $${\text{-ος,}}$$ $${\text{-ι ;}}$$双数で $${\text{-ε ;}}$$複数で $${\text{-ες,}}$$ $${\text{-ας,}}$$ $${\text{-σι ;}}$$中性複数で $${\text{-α.}}$$しかし,単数及び複数の直立格の形態は大変多岐にわたる.それに加えて,語の屈折語尾に先立つ部分には頻繁に変化が見られる.

まず,一般規則から外れる重要な語群 (二音節の単数属格を持つ約音されない語) を別に (§‍§ 40-42) 考察すべきであろう.続いて (§§ 43-45) 他のタイプの屈折を,一般規則に対する細かい例外を指摘しながら考察することにする.

40. 二音節の単数属格を持つ約音されない語.

問題となるのは,単数属格が二音節であり,この特徴が,あるいは語基$${^{(1)}}$$ $${\text{(ἦρ,}}$$ 属 $${\text{ἦρος}}$$「春」は $${\text{*ἔαρ,}}$$ $${\text{*ἔαρος}}$$ から;$${\text{λᾶς,}}$$ 属 $${\text{λᾶος}}$$「石」は $${\text{*λᾶας,}}$$ $${\text{*λάαος}}$$ から来ている;etc.) に,あるいは屈折語尾 $${\text{(γένος}}$$ の属格 $${\text{γένους}}$$ は $${\text{*γένεος}}$$ から来ている;etc.) に関わる約音の結果生じたものではない語である.

(1) 辞書によって,約音された語基をもつ語を確かめることができる:$${\text{-ος}}$$ に終わる二音節の単数属格が oxytonon として挙げられていなければ $${\text{(τίνος}}$$ と分詞の属格を除いて,§ 41),それは約音された語だからである.

単数主格のアクセントがどうであれ,二音節斜格は屈折語尾にアクセントが置かれ$${^{(2)},}$$この語尾の母音が短いときには鋭アクセント $${\text{(-ός,}}$$ $${\text{-ί,}}$$ $${\text{-σί),}}$$長いときには曲アクセントとなる $${\text{(-οῖν,}}$$ $${\text{-‍ῶν).}}$$

(2) そのため,単数主格では語頭母音にアクセントが置かれるとき,§ 30 で定義した「アクセントの揺れ」が生じる.

$$
\begin{darray}{ r l l l l l l }
\text{例:}&\text{ 単}&\text{数}&\text{ 双}&\text{数}&\text{ 複}&\text{数}\\
\text{主}&\text{πούς,}&\text{κύων}&\text{πόδε,}&\text{κύνε}&\text{πόδες,}&\text{κύνες}\\
\text{対}&\text{πόδα,}&\text{κύνα}&&&\text{πόδας,}&\text{κύνας}\\
\text{属}&\text{ποδός,}&\text{κυνός}&\text{ποδοῖν,}&\text{κυνοῖν}&\text{ποδῶν,}&\text{κυνῶν}\\
\text{与}&\text{ποδί,}&\text{κυνί}&&&\text{ποσί,}&\text{κυσί}\
\end{darray}
$$

41.

一音節の主格を持つ語の大部分がこのクラスに属す:$${\text{Ζεύς}}$$ $${\text{(Διός),}}$$ $${\text{βοῦς}}$$ $${\text{(βοός),}}$$ $${\text{γραῦς}}$$ $${\text{(γρᾱός),}}$$ $${\text{ναῦς}}$$ $${\text{(νεώς,}}$$ $${\text{<}}$$ 古形$${\text{*νηός),}}$$ $${\text{οἶς}}$$ $${\text{(οἰός),}}$$ $${\text{τρεῖς}}$$ $${\text{(τριῶν),}}$$ $${\text{ὗς}}$$ $${\text{(ὑός),}}$$ $${\text{μῦς}}$$ $${\text{(μυός),}}$$ $${\text{κῑ́ς}}$$ $${\text{(κῑός),}}$$ $${\text{εἷς}}$$ $${\text{(ἑνός)}}$$$${^{(1)},}$$ $${\text{κτείς}}$$ $${\text{(κτενός),}}$$ $${\text{μήν}}$$ $${\text{(μηνός),}}$$ $${\text{χθών}}$$ $${\text{(χθονός),}}$$ $${\text{ἅλς}}$$ $${\text{(ἁλός),}}$$ $${\text{πῦρ}}$$ $${\text{(πυρός),}}$$ $${\text{χείρ}}$$ $${\text{(χειρός),}}$$ $${\text{θήρ}}$$ $${\text{(θηρός),}}$$ $${\text{φλέψ}}$$ $${\text{(φλεϐός),}}$$ $${\text{θρίξ}}$$ $${\text{(τριχός),}}$$ $${\text{χρώς}}$$ $${\text{(χρωτός),}}$$ $${\text{κλείς}}$$ $${\text{(κλειδός),}}$$ etc.

(1) 数名詞 $${\text{εἷς}}$$ (§ 30) には単数形しか存在しないが,男性代名詞 $${\text{μηδείς}}$$ および $${\text{οὐδείς}}$$ (§ 20³) は,しばしば複数で使用され,この時は規則的なアクセントを受け取る:$${\text{μηδένων,}}$$ $${\text{μηδέσι}}$$ (単数:$${\text{μηδενός,}}$$ $${\text{μηδενί).}}$$したがって,これらの語は $${\text{πᾶς}}$$ のように振る舞う.

直立格は,一般規則に従って (§ 28),語頭にアクセントが置かれる $${\text{(πόδα,}}$$ $${\text{πόδε,}}$$ $${\text{πόδες,}}$$ $${\text{πόδας ;}}$$ $${\text{θῆρα,}}$$ $${\text{θῆρε,}}$$ $${\text{θῆρας ;}}$$ etc.).

呼格.$${\text{Ζεύς}}$$ (oxytonon) の呼格は $${\text{Ζεῦ}}$$ (perispōmenon) である:§ 29 参照.

例外.― 次のものは語頭母音にアクセントを保持する:
1) 複数属格と双数属与格で:およそ10語の名詞.そのうち最もよく使われるのは $${\text{παῖς}}$$ $${\text{(παιδός)}}$$ および $${\text{οὖς}}$$ $${\text{(ὠτός)}}$$ $${^{(2)};}$$
2) 複数属格と複数与格,双数属与格で:形容詞 $${\text{πᾶς}}$$ $${\text{(παντός) ;}}$$
3) 全ての格で: a) 疑問詞 $${\text{τίς}}$$ $${\text{(τίνος) :}}$$§ 20¹ 参照;
b) 分詞:例えば $${\text{ὤν}}$$ $${\text{(ὄντος),}}$$ $${\text{στᾱ́ς}}$$ $${\text{(στάντος),}}$$ $${\text{γνούς}}$$ $${\text{(γνόντος),}}$$ etc.

(2) 他の例:$${\text{δᾴς}}$$ $${\text{(δᾳδός)}}$$「松明」,$${\text{θῶς}}$$ $${\text{(θωός)}}$$「ジャッカル」,$${\text{σής}}$$ $${\text{(σεός)}}$$「幼虫」,$${\text{Τρώς}}$$ $${\text{(Τρωός)}}$$「トロイアーの」,$${\text{φῴς}}$$ $${\text{(φῳδός)}}$$「火傷」,$${\text{τὸ}}$$ $${\text{φῶς}}$$ $${\text{(φωτός)}}$$「光,松明」;散文では使われなかった語に $${\text{δμώς}}$$ $${\text{(δμωός)}}$$「奴隷」,$${\text{κρᾱ́ς}}$$ $${\text{(κρᾱτός)}}$$「頭」.

曲用表$${^{(3)}.}$$

$$
\begin{darray}{ l l l l l lll }
\bold{単}&\text{主}&\text{Ζεύς}&\text{βοῦς}&\text{γραῦς}&\text{ναῦς}&\text{οἶς}&\text{χείρ}\\
&\text{対}&\text{Δία}&\text{βοῦν}&\text{γραῦν}&\text{ναῦν}&\text{οἶν}&\text{χεῖρα}\\
&\text{属}&\text{Διός}&\text{βοός}&\text{γρᾱός}&\text{νεώς}&\text{οἰός}&\text{χειρός}\\
&\text{与}&\text{Διί}&\text{βοΐ}&\text{γρᾱΐ}&\text{νηΐ}&\text{οἰί}&\text{χειρί}\\
\bold{双}&\text{主対}&&&&\text{νῆε}&&\text{χεῖρε}\\
&\text{属与}&&&&\text{νεοῖν}&&\text{χεροῖν}\\
\bold{複}&\text{主}&&\text{βόες}&\text{γρᾶες}&\text{νῆες}&\text{οἶες}&\text{χεῖρες}\\
&\text{対}&&\text{βοῦς}&\text{γραῦς}&\text{ναῦς}&\text{οἶς}&\text{χεῖρας}\\
&\text{属}&&\text{βοῶν}&\text{γρᾱῶν}&\text{νεῶν}&\text{οἰῶν}&\text{χειρῶν}\\
&\text{与}&&\text{βουσί}&\text{γραυσί}&\text{ναυσί}&\text{οἰσί}&\text{χερσί}\\\\
\bold{単}&\text{主}&&\text{παῖς}&\text{οὖς}&\text{πᾶς,}&\text{πᾶν}\\
&\text{対}&&\text{παῖδα}&\text{οὖς}&\text{πάντα,}&\text{πᾶν}\\
&\text{属}&&\text{παιδός}&\text{ὠτός}&\text{παντός}\\
&\text{与}&&\text{παιδί}&\text{ὠτί}&\text{παντί}\\
\bold{双}&\text{主対}&&\text{παῖδε}&\text{ὦτε}&\text{πάντε }^{(*)}\\
&\text{属与}&&\text{παίδοιν}&\text{ὤτοιν}&\text{πάντοιν}\\
\bold{複}&\text{主}&&\text{παῖδες}&\text{ὦτα}&\text{πάντες,}&\text{πάντα}\\
&\text{対}&&\text{παῖδας}&\text{ὦτα}&\text{πάντας,}&\text{πάντα}\\
&\text{属}&&\text{παίδων}&\text{ὤτων}&\text{πάντων}\\
&\text{与}&&\text{παισί}&\text{ὠσί}&\text{πᾶσι}\\\\
\bold{単}&\text{主}&&\text{τίς,}&\text{τί}&\text{βᾱ́ς,}&\text{βάν}\\
&\text{対}&&\text{τίνα,}&\text{τί}&\text{βάντα,}&\text{βάν}\\
&\text{属}&&\text{τίνος}&&\text{βάντος}\\
&\text{与}&&\text{τίνι}&&\text{βάντι}\\
\bold{双}&\text{主対}&&\text{τίνε}&&\text{βάντε}\\
&\text{属与}&&\text{τίνοιν}&&\text{βάντοιν}\\
\bold{複}&\text{主}&&\text{τίνες,}&\text{τίνα}&\text{βάντες,}&\text{βάντα}\\
&\text{対}&&\text{τίνας,}&\text{τίνα}&\text{βάντας,}&\text{βάντα}\\
&\text{属}&&\text{τίνων}&&\text{βάντων}\\
&\text{与}&&\text{τίσι}&&\text{βᾶσι}\\
\end{darray}
$$

(3) 第三曲用のいくつかのタイプは双数形がはっきりと知られていない.
(*) 実際には $${\text{πᾶς}}$$ の双数は使われなくなった.

42.

このクラスに属するのは他にも:

1) 二音節の主格をもついくつかの語,あるいは paroxytonon:$${\text{κύων}}$$ $${\text{(κυνός),}}$$ $${\text{μήτηρ}}$$ $${\text{(μητρός),}}$$ あるいは oxytonon:$${\text{ἀρήν}}$$ $${\text{(ἀρνός),}}$$ $${\text{ἀνήρ}}$$ $${\text{(ἀνδρός),}}$$ $${\text{πατήρ}}$$ $${\text{(πατρός),}}$$ $${\text{γαστήρ}}$$ $${\text{(γαστρός),}}$$単数主格のアクセントがどうあれ,これら6語の直立格$${^{(1)}}$$及び三音節の斜格 $${\text{(-έροιν,}}$$ $${\text{-έρων,}}$$ $${\text{-άσι}}$$ に終わる) はparoxytonon である.

(1) したがって,$${\text{κύνα,}}$$ $${\text{πατέρα,}}$$ $${\text{γαστέρα,}}$$ etc. は,一般規則 (§ 28) に従うことになる $${\text{(κύων,}}$$ $${\text{πατήρ,}}$$ $${\text{γαστήρ}}$$ と同じ位置にアクセントが置かれる),しかし,$${\text{ἄρνα,}}$$ etc. $${\text{(<ἀρήν),}}$$ $${\text{ἄνδρα,}}$$ etc. $${\text{(< ἀνήρ),}}$$ $${\text{μητέρα,}}$$ etc. $${\text{(< μήτηρ)}}$$ は従わない.

2) 類推的拡張によって:$${\text{γυνή}}$$ と $${\text{θυγάτηρ}}$$ は,三音節の斜格で語末母音に,他の格では次末母音にアクセントが置かれる$${^{(2)}.}$$

(2) 定義上は (§ 40),屈折語尾にアクセントが置かれるのは,第三曲用の二音節斜格のみである $${\text{(ποδός,}}$$ $${\text{κυνός,}}$$ $${\text{πατρός,}}$$ etc.);この特殊性が類推によって二つの親族名詞の三音節斜格にも拡張されたことが認められるだろう:$${\text{ἄνδρα}}$$ に対する $${\text{ἀνδρός,}}$$ $${\text{θυγατέρα}}$$ に対する $${\text{θυγατρός,}}$$ $${\text{μητέρα}}$$ に対する $${\text{μητρός}}$$のように $${\text{γυναῖκα}}$$に対する$${\text{γυναικός.}}$$しかし § 30, 註を参照.

呼格:単数主格での位置がどうあれ,アクセントは語頭母音に置かれる:$${\text{κύον,}}$$ $${\text{μῆτερ,}}$$ しかしまた,アクセントの後退も伴う (§ 29):$${\text{ἄνερ,}}$$ $${\text{πάτερ,}}$$ $${\text{γύναι,}}$$ $${\text{θύγατερ.}}$$

曲用表

$$
\begin{darray}{ l l l l l }
\bold{単}&\text{主}&\text{ἀνήρ}&\text{μήτηρ}&\text{πατήρ}\\
&\text{対}&\text{ἄνδρα}&\text{μητέρα}&\text{πατέρα}\\
&\text{属}&\text{ἀνδρός}&\text{μητρός}&\text{πατρός}\\
&\text{与}&\text{ἀνδρί}&\text{μητρί}&\text{πατρί}\\
\bold{双}&\text{主対}&\text{ἄνδρε}&\text{μητέρε}&\text{πατέρε}\\
&\text{属与}&\text{ἀνδροῖν}&\text{μητέροιν}&\text{πατέροιν}\\
\bold{複}&\text{主}&\text{ἄνδρες}&\text{μητέρες}&\text{πατέρες}\\
&\text{対}&\text{ἄνδρας}&\text{μητέρας}&\text{πατέρας}\\
&\text{属}&\text{ἀνδρῶν}&\text{μητέρων}&\text{πατέρων}\\
&\text{与}&\text{ἀνδράσι}&\text{μητράσι}&\text{πατράσι}\\\\
\bold{単}&\text{主}&\text{θυγάτηρ}&\text{γυνή}\\
&\text{対}&\text{θυγατέρα}&\text{γυναῖκα}\\
&\text{属}&\text{θυγατρός}&\text{γυναικός}\\
&\text{与}&\text{θυγατρί}&\text{γυναικί}\\
\bold{双}&\text{主対}&\text{θυγατέρε}&\text{γυναῖκε}\\
&\text{属与}&\text{θυγατέροιν}&\text{γυναικοῖν}\\
\bold{複}&\text{主}&\text{θυγατέρες}&\text{γυναῖκες}\\
&\text{対}&\text{θυγατέρας}&\text{γυναῖκας}\\
&\text{属}&\text{θυγατέρων}&\text{γυναικῶν}\\
&\text{与}&\text{θυγατράσι}&\text{γυναιξί}\
\end{darray}
$$

43. 第三曲用の他の語.

一般規則が適用される.

その結果,複数属格はつねに paroxytonon である$${^{(1)}:}$$$${\text{ὄνομα/ὀνομάτων ;}}$$ $${\text{φύλαξ/φυλάκων ;}}$$ $${\text{λαμπάς/λαμπάδων ;}}$$ $${\text{ἐσθής/ἐσθήτων ;}}$$ etc. 双数属与格も同様.

(1) ついでながら,二つの複数属格 $${\text{χῑλιαδῶν}}$$ と $${\text{μῡριαδῶν}}$$ の不規則な (かつ上手く説明できない) アクセントを注記しておこう.$${\text{χῑλιάς,}}$$ $${\text{μῡριάς}}$$ の残る屈折は規則的にアクセントが置かれる $${\text{(λαμπάς,}}$$ etc. のように):$${\text{χῑλιάδα,}}$$ $${\text{χῑλιάδος,}}$$ etc.

対して,単数属格 (及び,短母音語尾をもつ他のあらゆる格も同様:§ 39) は,語によって:

  • あるいは proparoxytonon:$${\text{ὄνομα/ὀνόματος ;}}$$ $${\text{φύλαξ/φύλακος ;}}$$ $${\text{ἀλώπηξ/ἀλώπεκος ;}}$$ $${\text{ὕδωρ/ὕδατος ;}}$$ $${\text{ἧπαρ/ἥπατος ;}}$$ $${\text{δώτωρ/δώτορος ;}}$$ $${\text{μέλᾱς,}}$$ $${\text{μέλαν/μέλανος ;}}$$ $${\text{σῶμα/σώματος ;}}$$ $${\text{γόνυ/γόνατος ;}}$$ $${\text{λείπων,}}$$ $${\text{λεῖπον/λείποντος ;}}$$ $${\text{χαρίεις,}}$$ $${\text{χαρίεν/χαρίεντος ;}}$$ etc.

  • あるいは paroxytonon:$${\text{λαμπάς/λαμπάδος ;}}$$ $${\text{ἀστήρ/ἀστέρος ;}}$$ $${\text{ἀηδών/ἀηδόνος ;}}$$ $${\text{λιπών,}}$$ $${\text{λιπόν/λιπόντος ;}}$$ $${\text{τιθείς,}}$$ $${\text{τιθέν/τιθέντος ;}}$$ $${\text{λελυκώς,}}$$ $${\text{λελυκός/λελυκότος ;}}$$ $${\text{ἡδύς,}}$$ $${\text{ἡδύ/ἡδέος ;}}$$ $${\text{ὀφρῦς/ὀφρύος ;}}$$ etc.

  • あるいは properispōmenon:$${\text{ἐσθής/ἐσθῆτος ;}}$$ $${\text{δοτήρ/δοτῆρος ;}}$$ $${\text{ἀγών/ἀγῶνος ;}}$$ etc.

約音形は,規則的にアクセントが置かれた約音される前の形から解釈しなければならない.約音された複数属格は,かつての paroxytonon によっているために,perispōmenon である.約音された単数属格は,かつての proparoxytonon によっているか,かつての paroxytonon によっているかにしたがって,それぞれ paroxytonon あるいは perispōmenon である:

例えば:$${\text{γῆρας/γήρως}}$$ $${\text{(< *γήραος)}}$$/ $${\text{γηρῶν}}$$ $${\text{(< *γηράων) ;}}$$同様に:$${\text{γένος/γένους/γενῶν ;}}$$etc. $${^{(2)}}$$
他方で,例えば:$${\text{ἀληθής,}}$$ $${\text{ἀληθές/ἀληθοῦς}}$$ $${\text{(< ἀληθέος)}}$$$${\text{/ἀληθῶν}}$$ $${\text{(< *ἀληθέων) ;}}$$同様に $${\text{αἰδώς/αἰδοῦς ;}}$$ $${\text{πειθώ/πειθοῦς ;}}$$ etc.

(2) 例外的に,アッティカ方言では,$${\text{τριήρης}}$$ の複数属格 $${\text{τριήρων}}$$ は paroxytonon である (単数属格 $${\text{*τριήρεος}}$$ は $${\text{τριήρους}}$$ に至った);$${\text{*τριηρέων}}$$ からは $${\text{[τριηρῶν]}}$$ が期待されるところである.同じ不規則性は $${\text{αὐθᾱ́δης,}}$$ $${\text{αὐτάρκης}}$$ のような $${\text{-ης}}$$ に終わる paroxytonon の他の形容詞や $${\text{-ήθης}}$$ と $${\text{-ώδης}}$$ に終わる語にも.

屈折語尾 $${\text{-ος}}$$ の前に $${\text{η}}$$ がある時は,約音ではなく,$${\text{ηο}}$$ から $${\text{εω}}$$ への変移が生じた(「置換」$${\text{« metathesis » :}}$$§ 7);そこから,$${\text{-εως}}$$ に終わる属格が生じた.アクセントは,置換の前に占めていた位置を保持する;例えば:$${\text{βασιλεύς/βασιλέως}}$$ $${\text{(< *βασιλῆος).}}$$同様に,制限の法則への見かけ上の違反を伴っているが:$${\text{πέλεκυς/πελέκεως}}$$ $${\text{(< *πελέκηος) ;}}$$ $${\text{ἄστυ/ἄστεως}}$$ $${\text{(< *ἄστηος) ;}}$$ $${\text{ποίησις/ποιήσεως}}$$ $${\text{(< *ποιήσηος) ;}}$$ $${\text{πόλις/πόλεως}}$$ $${\text{(< *πόληος) ;}}$$ etc. これら全ての語において,複数属格は $${\text{-έων}}$$ に終わっているべきところであった.二つの属格が類似しているために,次の形は同じようにアクセントが置かれるに至った : $${\text{-εως}}$$ に終わる単数属格に対応する,全ての $${\text{-εων}}$$ に終わる複数属格は,この単数属格のようにアクセントが置かれる.$${\text{βασιλέων}}$$ $${\text{(< *βασιλήων)}}$$ のアクセントは,$${\text{βασιλέως}}$$ のアクセントのように規則的である.しかし,$${\text{[πελεκέων]}}$$ $${\text{(< *πελεκήων)}}$$ となっていたはずであるところ,$${\text{πελέκεως}}$$ に基づいて $${\text{πελέκεων}}$$ とアクセントが置かれることとなった;同様に,類推によって$${\text{ἄστεων,}}$$ $${\text{ποιήσεων,}}$$ $${\text{πόλεων,}}$$ etc. に至った.

44.

そのため,曲用表は次のようになる:$${^{(1)}}$$

$$
\begin{darray}{ l l l l l }
\bold{単}&\text{主}&\text{ὄνομα}&\text{φύλαξ}&\text{ἀστήρ}\\
&\text{対}&\text{ὄνομα}&\text{φύλακα}&\text{ἀστέρα}\\
&\text{属}&\text{ὀνόματος}&\text{φύλακος}&\text{ἀστέρος}\\
&\text{与}&\text{ὀνόματι}&\text{φύλακι}&\text{ἀστέρι}\\
\bold{双}&\text{主対}&\text{ὀνόματε}&\text{φύλακε}&\text{ἀστέρε}\\
&\text{属与}&\text{ὀνομάτοιν}&\text{φυλάκοιν}&\text{ἀστέροιν}\\
\bold{複}&\text{主}&\text{ὀνόματα}&\text{φύλακες}&\text{ἀστέρες}\\
&\text{対}&\text{ὀνόματα}&\text{φύλακας}&\text{ἀστέρας}\\
&\text{属}&\text{ὀνομάτων}&\text{φυλάκων}&\text{ἀστέρων}\\
&\text{与}&\text{ὀνόμασι}&\text{φύλαξι}&\text{ἀστράσι}\\\\
\bold{単}&\text{主}&\text{ἡδύς, ἡδύ}&\text{ἀγών}&\\
&\text{対}&\text{ἡδύν, ἡδύ}&\text{ἀγῶνα}&\\
&\text{属}&\text{ἡδέος}&\text{ἀγῶνος}&\\
&\text{与}&\text{ἡδεῖ}&\text{ἀγῶνι}&\\
\bold{双}&\text{主対}&&\text{ἀγῶνε}&\\
&\text{属与}&&\text{ἀγώνοιν}&\\
\bold{複}&\text{主}&\text{ἡδεῖς, ἡδέα}&\text{ἀγῶνες}&\\
&\text{対}&\text{ἡδεῖς, ἡδέα}&\text{ἀγῶνας}&\\
&\text{属}&\text{ἡδέων}&\text{ἀγώνων}&\\
&\text{与}&\text{ἡδέσι}&\text{ἀγῶσι}&\\\\
\bold{単}&\text{主}&\text{γένος}&\text{τριήρης}&\text{ἀληθής, -θές}\\
&\text{対}&\text{γένος}&\text{τριήρη}&\text{ἀληθῆ, -θές}\\
&\text{属}&\text{γένους}&\text{τριήρους}&\text{ἀληθοῦς}\\
&\text{与}&\text{γένει}&\text{τριήρει}&\text{ἀληθεῖ}\\
\bold{双}&\text{主対}&\text{γένει}&&\\
&\text{属与}&\text{γενοῖν}&&\\
\bold{複}&\text{主}&\text{γένη}&\text{τριήρεις}&\text{ἀληθεῖς, -θῆ}\\
&\text{対}&\text{γένη}&\text{τριήρεις}&\text{ἀληθεῖς, -θῆ}\\
&\text{属}&\text{γενῶν}&\text{τριήρων}&\text{ἀληθῶν}\\
&\text{与}&\text{γένεσι}&\text{τριήρεσι}&\text{ἀληθέσι}\\\\
\bold{単}&\text{主}&\text{πέλεκυς}&\text{πόλις}&\text{βασιλεύς}\\
&\text{対}&\text{πέλεκυν}&\text{πόλιν}&\text{βασιλέᾱ}\\
&\text{属}&\text{πελέκεως}&\text{πόλεως}&\text{βασιλέως}\\
&\text{与}&\text{πελέκει}&\text{πόλει}&\text{βασιλεῖ}\\
\bold{双}&\text{主対}&&\text{πόλει}&\\
&\text{属与}&&\text{πολέοιν}&\\
\bold{複}&\text{主}&\text{πελέκεις}&\text{πόλεις}&\text{βασιλῆς (-εῖς)}\\
&\text{対}&\text{πελέκεις}&\text{πόλεις}&\text{βασιλέᾱς}\\
&\text{属}&\text{πελέκεων}&\text{πόλεων}&\text{βασιλέων}\\
&\text{与}&\text{πελέκεσι}&\text{πόλεσι}&\text{βασιλεῦσι}\\
\end{darray}
$$

(1) 第三曲用のいくつかのタイプは双数形がはっきりと知られていない.

45. 例外.

一方では単数呼格 (男女) に,他方では,いくつかの形容詞の中性単数主対格に関わるものである.

呼格.アクセントは遡ろうとする:この傾向は二つの方法で表れる (§ 29):

a) $${\text{-εύς}}$$ に終わる (男性形) か $${\text{-ώ}}$$ に終わる (女性形) oxytonon は,単数呼格が perispōmenon である.$${\text{Ζεύς/Ζεῦ}}$$ については既に指摘した (§ 41).例:$${\text{βασιλεύς/βασιλεῦ,}}$$ またこのタイプの全ての名詞;$${\text{πειθώ/πειθοῖ,}}$$ $${\text{ἠχώ/ἠχοῖ,}}$$ $${\text{Λητώ/Λητοῖ,}}$$ etc. $${^{(*)}}$$

(*) $${\text{πειθώ}}$$ タイプの女性名詞においては,単数対格 $${\text{(*-όα}}$$ に由来する約音形) は perispōmenon になっていたはずだが,単数主格からの類推によって,oxytonon である.

b) アクセントは,いくつかの名詞および形容詞において,制限の法則が許す限り遠くへと遡る$${^{(1)}.}$$

1) $${\text{-ηρ}}$$ に終わるもの.$${\text{ἀνήρ/ἄνερ,}}$$ $${\text{πατήρ/πάτερ,}}$$ $${\text{θυγάτηρ/θύγατερ}}$$ については既に指摘した (§ 42).同様に,$${\text{Δημήτηρ/Δήμητερ,}}$$ $${\text{σωτήρ/σῶτερ,}}$$ etc.
2) $${\text{-ων}}$$ (属格 $${\text{-ονος)}}$$ に終わるもの$${^{(2)}.}$$固有名詞:$${\text{Ποσείδων/Πόσειδον,}}$$ $${\text{Ἀπόλλων/Ἄπολλον,}}$$ $${\text{Ἀγαμέμνων/Ἀγάμεμνον,}}$$ etc. 形容詞:$${\text{εὐδαίμων/εὔδαιμον ;}}$$ $${\text{ἐλεήμων/ἐλέημον ;}}$$ etc. $${\text{-ων}}$$ に終わる比較級:$${\text{βελτῑ́ων/βέλτῑον,}}$$ $${\text{ἡδῑ́ων/ἥδῑον ;}}$$ etc.
3) $${\text{-ης}}$$ (属格 $${\text{-ους)}}$$ に終わるもの.固有名詞:$${\text{Δημοσθένης/Δημόσθενες,}}$$ $${\text{Σωκράτης/Σώκρατες,}}$$ etc. (oxytonon でない) 形容詞:$${\text{κακοήθης/κακόηθες,}}$$ etc.

(1) これらのカテゴリーの語に関しては,辞書において,単数呼格のアクセントを確認すべきであろう,というのも,アクセントが主格と同じ位置に留まることも多いからである:$${\text{Σαρπήδων/Σαρπῆδον,}}$$ $${\text{δαΐφρων/δαΐφρον,}}$$ $${\text{εὐώδης/εὐῶδες,}}$$ etc.
[訳註: アクセントが留まる場合,辞書には特に注記がない.実際には,アクセントが移動する場合にも注記のない場合が珍しくない.]
(2) この呼格でのアクセントの移動は,$${\text{-ων,}}$$ 属格 $${\text{-οντος}}$$ に終わる語においては見られない (とりわけ分詞においては).

形容詞中性形. ― 中性単数主対格は男性単数呼格のようにアクセントが置かれる (類推の結果:§ 31);したがって,$${\text{-ων,}}$$ $${\text{-ον}}$$ (属格 $${\text{-ονος)}}$$$${^{(3)}}$$および $${\text{-ης,}}$$ $${\text{-ες}}$$ (属格 $${\text{-ους)}}$$$${^{(4)}}$$に終わるいくつかの形容詞において不規則である:男 $${\text{εὐδαίμων}}$$/中 $${\text{εὔδαιμον ;}}$$男 $${\text{κακοήθης}}$$ /中 $${\text{κακόηθες ;}}$$etc.$${^{(⁑)}}$$

(3) しかし,$${\text{-ων,}}$$ 属格 $${\text{-οντος}}$$ に終わる分詞においては異なる.したがって,$${\text{λαμϐάνων}}$$(男)/ $${\text{λαμϐάνον}}$$(中);$${\text{λιπών}}$$(男)/$${\text{λιπόν}}$$(中);$${\text{βασιλεύων}}$$(男)/ $${\text{βασιλεῦον}}$$(中);etc. は規則的にアクセントが置かれる.
(4) これは男性単数呼格が不規則であるものと同じである;これらのカテゴリーの形容詞に関しては,ここでもまた,辞書を参考に,中性形を確認しなければならないだろう.
(⁑) $${\text{εὐδαίμων,}}$$ $${\text{κακοήθης,}}$$ etc.のような形容詞においては,語幹がproparoxytononであり$${\text{(εὔδαιμον-,}}$$ $${\text{κακόηθεσ-,}}$$ etc.) (男女)単数主格では語末の長母音の影響で,その本来の抑揚が隠されているが,単数呼格と中性で再び表れるのである.

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