ルジューヌ『ギリシア語アクセント規則概説』
〜12月6日 23:00
はしがき
Michel Lejeune, $${\textit{Précis}}$$$${\textit{d’accentuation}}$$$${\textit{grecque,}}$$ 1945, 1967, Hachette を全訳しました。
もともとこちらのブログで和訳を公開していました。
今回、新たに全文を note で読めるようにしました。それに合わせて、誤訳やフランス語原文との対照を前提とした訳、見逃していた誤植に手を入れました。
とはいえ、まだまだわかりにくい箇所や、誤訳・誤植が含まれているかと思いますので、ご指摘やご意見はお気軽にお寄せください。マクロンの付け忘れ、ないし、付け間違い等も教えていただけると助かります。
補足
原著の註は、ページごとに番号が振り直されていますが、本訳ではセクションごとに振り直しています。
原著では文字がつぶれてしまっているせいで、気息記号の別が判然としない場合がいくつかあります(画像参照)。どちらの可能性もある場合は、独断で決めました。
長音の $${\text{α,}}$$$${\text{ι}}$$$${\text{υ}}$$ にはマクロンを付しています。$${\text{(ᾱ, ῑ, ῡ)}}$$マクロン付きの母音字にさらにアクセント記号や気息記号がついた文字は個別のコードを割り当てられていないので、合成可能文字との組み合わせを使っていますが、マクロン付きの文字と合成可能な気息記号 (combining (reversed) comma above) の組み合わせは、この記事でギリシア語の表示に利用している $${\KaTeX}$$ との相性が悪いらしくうまく表示されないので、気息記号付きの文字に合成可能なマクロン (combining macron) を組み合わせて代用しており、やや不自然な表示になっています(うまいやり方をご存知の方は教えてください):
ῑ̔́ημι : $${\text{ῑ̔́ημι}}$$
ἵ̄ημι : $${\text{ἵ̄ημι}}$$
ῑ̔́ημι : $${\text{ῑ̔́ημι}}$$
ἵ̄ημι : $${\text{ἵ̄ημι}}$$
定訳のない用語は、主にラテン語形を用いることにしました。ラテン語での表現がわからない場合はフランス語のままにしています。
なお用語の既邦訳の確認については、下記の水崎監訳『古典ギリシア語文法』付録の「文法用語比較表」を参考にしました。
また、PDF版も作成しましたが、note経由のダウンロードは購入者の方限定とします。内容は、表示上の制限によるものを除いて、基本的にこのnoteで公開しているものと同じです。(このページの最後参照)
翻訳の公開について:
著者の Lejeune は2000年没なので、著作権はまだ生きています。ただし、本書は初版が1945年、Hachetteのサイトによると現行の版は1967年なので、旧著作権法の「翻訳の10年留保」が適用され、遅くとも1977年までに翻訳が出版されていなければ、自由に翻訳・出版できるものという認識です。邦訳の存在は確認できていないので大丈夫だと思うのですが、既訳の存在をご存知の方は教えてください。また、そもそも「10年留保」はインターネットの存在を想定していないので、ネット上での公開は含まれないという話もあるようです。詳しい方、問題があれば教えてください。
目次
実用的なアドバイス
序文
第一部
$${\quad}$$一般的な定義と規則 (§§ 1-8)
第二部
$${\quad}$$語単独の考察 (§§ 9-45)
$${\quad}$$$${\quad}$$第一章 不変化詞 (§§ 9)
$${\quad}$$$${\quad}$$第二章 動詞の形態 (§§ 10-18)
$${\quad}$$$${\quad}$$$${\quad}$$A) 単純動詞の人称形 (§§ 10-12)
$${\quad}$$$${\quad}$$$${\quad}$$B) 複合動詞の人称形 (§§ 13-14)
$${\quad}$$$${\quad}$$$${\quad}$$C) 動詞の名詞形 (§§ 15-18)
$${\quad}$$$${\quad}$$第三章 曲用の形態 (§§ 19-45)
$${\quad}$$$${\quad}$$$${\quad}$$A) 代名詞 (§§ 19-20)
$${\quad}$$$${\quad}$$$${\quad}$$B) 形容詞 (§§ 21-26)
$${\quad}$$$${\quad}$$$${\quad}$$C) 名詞 (§§ 27-45)
$${\quad}$$$${\quad}$$$${\quad}$$$${\quad}$$1º 総論 (§§ 27-33)
$${\quad}$$$${\quad}$$$${\quad}$$$${\quad}$$2º 第一曲用 (§§ 34-36)
$${\quad}$$$${\quad}$$$${\quad}$$$${\quad}$$3º 第二曲用 (§§ 37-38)
$${\quad}$$$${\quad}$$$${\quad}$$$${\quad}$$4º 第三曲用 (§§ 39-45)
第三部
$${\quad}$$文中の語 (§§ 46-62)
$${\quad}$$$${\quad}$$第一章 前倚辞 proclitica (§§ 47-49)
$${\quad}$$$${\quad}$$第二章 後倚辞 enclitica (§§ 50-57)
$${\quad}$$$${\quad}$$第三章 Ēlīsiō, aphaeresis, crāsis (§§ 58-62)
実用的なアドバイス
この『概説』において述べられる規則の知識は,ギリシア語作文のために必要かつ十分なものである.
辞書を参照する必要があるのは:
母音 $${\text{α,}}$$ $${\text{ι,}}$$ $${\text{υ}}$$ の長短について迷った場合 (§ 2 b);
不変化詞のアクセントについて (§ 9);
名詞の単数主格のアクセントについて (§ 27);
いくつかの格変化形のアクセントについて (第三曲用の形容詞の中性単数主格:§ 24;第一曲用の $${\text{-ίᾱ}}$$ に終わる抽象名詞の複数主格$${^{(★)}:}$$§ 31;第三曲用の名詞及び形容詞の単数呼格:§ 29;第三曲用語の単数属格のうち,この形が二音節であるもの:§ 41).
しかし,辞書も参照されなくてはならないが,この『概説』から得られる規則も習得されていなければならない;そのような条件下でのみ,徐々に,正しく,速く,ほぼ自動的にアクセントを置けるようになるだろう.実際にこの結果を得るために,大事なことは:
初級文法において,すべての語形変化 (曲用および活用) を体系的に学び直し,記憶をたよりに書き出しながら,アクセントを置くこと:それから,文法書と突き合わせ,この『概説』の中から,自分が犯した間違いの説明を探すこと;
いかなる状況にあっても,決して,アクセントを置かずにギリシア語の単語を書くことがないように努めること,それもアクセントは即座に置くこと:たとえギリシア語作文の下書きであっても,語という語には,書くと同時にアクセントを置かなくてはならない.
序文
この『概説』は,この十数年,ポワティエ大学とボルドー大学の学生たちに向けて繰り返し開講された実用的な性格のいくつかの講義を編纂したものである.
本書の目的は二つある.
第一に,本書は作文のためにギリシア語のアクセント規則を身につけなければならない人たちを対象としている.本書では,そういった人たちが初級文法を学ぶ際,大抵の場合,ひとつひとつがバラバラで不明瞭だとしか思えないような諸事項を,全体として可能な限りまとまったわかりやすい形で解説するよう試みた.これらの読者の多くが文献学的な素養を(まだ)持っていないことを考慮して,専門的な文法用語は最低限にとどめた上で,その一つ一つの定義を説明した.他方で,あらゆる歴史的あるいは比較言語学的な知識に頼ることを避けた;第一部におけるラテン語のアクセントに関するいくつかの註は,ただラテン語のアクセントとギリシア語のアクセントとの本質的な差異を強調するためだけに書かれたものである.また,古典アッティカ散文に馴染みのない事象もすべて無視した;したがって,ホメーロスの言語,あるいはヘーロドトスのイオーニアー方言,あるいはアッティカ詩文でさえ,これらに固有の形態は,本書では説明しない;そのため,$${\text{« anastrophē »}}$$ の問題も,$${\text{περὶ}}$$ に関する指摘の形でついでに触れるのみである.そして,名詞の派生形や複合形に関して,単数主格のアクセントを支配する複雑な規則も避けた,というのも,実際的には,これらのアクセントは,辞書で確認することが常に必要となるだろうから.
しかし,この『概説』はまた,古典文献学専攻の学生,学士号や文法教授資格を目指す人たちも対象としている.本書は,彼らが既に習得しているであろう知識についての便利な便覧を提供すると同時に,J. Vendryes の $${\textit{Traité}}$$ $${\textit{d’accentuation}}$$$${\textit{grecque}}$$ への,簡便だがしかしこれだけでも充実した入門書を提供することを目指している.というのも,この著書こそ,ギリシア語のアクセント規則に関する出典や,ギリシア語における言語事実の歴史的かつ比較言語学的な解釈,アッティカ散文以外の方言や文学語の資料についての知識を補完するために,彼らが続いて参照すべき基本文献だからである.
1943年1月,ボルドーにて.M. L.
紙幅の都合により,第一刷に残っていたいくつかの誤植の訂正以外の変更を本文に加えることはできなかった.次の注記を考慮されたい:
1953年11月,パリにて.M. L.
PDF版
以前公開していた対訳版のPDFにかえて、邦訳のみのPDFを作成しました。記事購入者の方は最新版をダウンロードできます。(以前この記事をご購入いただいた方もダウンロードできるはずです。)内容については note で公開されているものと基本的に同じものです。誤訳や誤植を見つけた場合は、定期的にアップデートします。今後、おまけをつけることがあるかもしれませんが、その場合は、記事の購入価格を上げるかもしれません。
とはいえPDFの販売が目的ではないので、noteの記事購入ができない方、したくない方は個別にご連絡いただければ対応いたします。そんな感じなので、投げ銭感覚でご購入いただければ幸いです。
SAMPLE :
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11月6日 23:00 〜 12月6日 23:00
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