
#64 野生の葦(1994)
同性愛的な絆で結ばれた3人の高校生が1人の少女をめぐり心の痛みを分かち合うアンドレ・テシネ監督の自伝的作品。
元は十代体験を素材にする、ダンスパーティーを入れる条件以外は自由にしていいテレビ映画の企画だそう。近年だとフランソワ・オゾンがSummer of 85でこの作品に敬意を込めた(エンドロールで監督の分身?フランソワを演じたガエル・モレルの名前があった)。
フランス作家の思春期を綴るって1つのジャンルだ。
時代背景と人物の変化が深く関わっているので日本だと完全には理解できない点、今観ると強いドラマ性はなく、少々退屈というレビューもごもっとも。
しかし、人が誰かを好きになる瞬間、不安、嫉妬を捉えてて嫌いにはなれない魅力はある。
特に父親をテロで失い極右の秘密軍事組織OASを支持するアンリと政治的信条が違う少女マイテの目線と表面張力的に何かがこぼれ落ちそうでこぼれ落ちなかったシーンは非常に良かった。
「あんな残酷な戦争さえも 結局は忘れてしまうんだ」というセリフも残った。
女友達のマイテを演じたエロディ・ブシェーズを愛でる映画としてもいい。
今観る方法が廃盤DVDかザ・シネマしかないという環境の辛さ。そして擁護する人の少なさよ。
今観る理由がほぼ死ぬまでに観たい映画1001本に選出されたから、観た人の声と1994年の映画がわかりやすく強すぎるんだよね。俺は好きです。



