#46 つぐない(2007)
イアン・マキューアンの「贖罪」をジョー・ライト監督が映画化。ひとりの無垢な少女の嘘によって人生を狂わされてしまった一組の男女の運命を描く。
物語は最初、子供と大人の見方の違いがテーマでブライオニーの視点とロビーとセシーリアの視点を中心に進んでいく。
視点がこの作品の肝になってくる。
終盤の種明かしがされた後はやるせなく、もう一度観るとゾワッとする。
映画の始まりはタイプライターの音から始まるのだから。
どこまでが真実で、どこまでが虚構なのか?
限りなく真実に近くとも、あくまですべての視点と語りはブライオニーひとり。
最後の善行であり、忘却と絶望への抵抗であって、つぐないは終わってないと原作では記されてる。
本当はどこかで許されたかったから物語を書いたのかもしれないし、凄い嫌な見方だが、作家は彼らを物語の糧にしてしまったとも見られるかもしれない。
そんな風に原作をひねくれた読み方をして考えようにも、結局映画はブライオニーの小細工なしアップの表情を見る度、ストレートに刺さって氷解する。
短い出番ながらヴァネッサ・レッドグレイヴがとてつもない。人のシワは歴史を刻んで美しい。
ロビー役のジェームズ・マカヴォイもセシーリア役のキーラ・ナイトレイも高潔な人物を好演していて、戦時下のロマンスは感動する。その高潔さもブライオニーのこうあって欲しい願いが多少入ってるという点がこの映画の好きな所だったりする。
シアーシャ・ローナンの透き通った水色の瞳が無垢さと冷たさを両立させてて良い。
1000人集めて、約5分の長回しで撮られたダンケルクのシーンがとても素晴らしい。
その後の「霧の波止場」が使われてるシーン、看護婦になったブライオニーと瀕死の兵士のシーンもグッときて監督のセンスの良さを感じる。
予告