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ママパパにも知ってほしい!第7回「PANS/PANDAS(強迫神経症)②コロナ禍の急増でわかったこと」

こんにちは。医師の本間龍介です。
子ども運動教室LUMO(ルーモ)」の栄養講習、今回も引き続きPANS/PANDASについて説明します。

PANSとは小児急性発症神経精神疾患、PANDASとは小児自己免疫性神経疾患のことです。つまりPANS/PANDASとは、子どもにみられる強迫神経症状の総称のことです。

PANS/PANDASになったお子さんのママパパはたいへんに悩みます。「うちの子はどうしてしまったのだろう」と。風邪や肺炎、副鼻腔炎や中耳炎などにかかったところから発達遅滞を含むさまざまな困りごとが始まるのです。

しかし、一番困っているのは本人です。昨日できたことが今日できなくなることもあります。

日本では知られていないPANS/PANDASですが、スタンフォード大学には外来があり、さまざまな研究がすすんでいます。

今回は、PANS/PANDASとコロナ感染症とのかかわりをご紹介します。そして、感染症治療にかかせない抗生剤によって起こるトラブルについてもお伝えしていきます。

PANS/PANDASのメカニズムと、感染症治療にかかる抗生剤との上手な付き合い方を知ることが、PANS/PANDAS治療の大前提です。ぜひ今回もお付き合いください。


PANS/PANDASの概要のおさらい

前回、PANS/PANDASとは、ウイルスや細菌の感染症を引き金に、極端なこだわりや偏食、臆病などが起こる状態だとお伝えしました。いわゆる強迫神経症です。生活習慣においても、手を何度も洗わないと気が済まないとか、気が塞いでしまうとか、分離不安や無気力、うつに陥ることもあります。

最初に明らかになったのはアメリカでした。溶連菌への感染を機に脳にトラブルが生じて、情緒不安定や過敏性、攻撃性などが高まるという報告でした。そしてそれらは、発達障がいや自閉症と誤って判断される可能性があることをお伝えしました。

コロナ禍に急増したPANS/PANDAS

コロナウィルス(COVIT19)は社会に大きな影響を与えました。アメリカではコロナ禍に、PANS/PANDASのお子さんが増えました。症例もさまざまで、多くのレポートが紹介されたために、その概念が広まったのです。

もちろんコロナ禍は特別でした。発達の種類によっては、マスクをしていたことや自宅待機の生活によって滞ってしまったものもあります。

しかし、PANS/PANDASについてはコロナ禍に症例が増えたことで、一層科学的に捉えられるようになりました。また、コロナ禍に増えていることから、その影響が明らかだと考えられています。

PANS/PANDASになったお子さんは、昨日できたことが今日できなくなることもあります。子どもの成長が止まるか後退することがあるのです。

いままでできていたことができなくなる、一生懸命取り組んでも成長につながらないなどの伸び悩みが起き始めたら、感染症はないか、鼻をグズグズしていないか、中耳炎や鼻炎はないか気にかけてみてください。

コロナ感染でサイレントウィルスが再活性

PANS/PANDASに関連して知っておくべきトピックがあります。

エプスタイン・バーウイルス、略してEBウイルスというサイレントウイルスをご存知でしょうか?ヘルペスと言えばご存知の方も多いと思いますが、その一種です。

ヘルペスは、ほとんどの方が子ども時代にかかります。そしてこのウィルスは、症状が回復しても悪さをせずに潜伏するサイレントウイルスとして、体内に残り続けます。するとある時、このウイルスが再活性化し、異常な神経炎症や免疫反応を起こすことがあるのです。

EBウィルスは、がんや多発性硬化症など、さまざまな病気との関連が考えれられています。中でも、コロナ感染症後に起こる後遺症との関連が高いというが報告が、圧倒的に増えてきました。

つまり、コロナ感染によってEBウィルス再活性が引き起こされたと考えられているのです。

ですから、風邪を引いたくらいだとか、コロナ感染症をブームだと考えず、深刻な症状に陥る可能性があることを忘れないでいただきたいと思います。

抗生剤のパラドックス

抗生剤にあまりいいイメージを持たない方も多いでしょう。これはある意味では正しいのですが、実は、抗生剤を飲まなければPANS/PANDASを治療することは難しいです。

次回は、PANS/PANDASの治療についてご説明しますが、まずは欠かすことができない抗生剤との付き合い方についてご説明します。

ヘルクスハイマー反応とは

抗生剤のデメリットとして、腸内フローラが崩れることがあげられます。腸内で微生物が死滅することが原因です。抗生剤の治療の間中、気分の悪さが継続するという報告は多いです。

それは心身ともに辛い症状で、頭痛、発汗、悪寒など、治療前よりも一時的に体調が悪化してしまいます。これを、ヘルクスハイマー反応といいます。

抗生剤を用いることで症状が悪化するのですから、抗生剤をネガティブに思われる方も多いのですね。

抗生剤は細菌に対し爆発的に作用し、細菌が死ぬのと同時に、細菌内部にある毒素がたくさん放出され、体内システムに大きな負担がかかります。その毒素が遊離して血液に混入して体調が悪くなったり、肝臓が解毒のために過度に働きすぎてしまったりします。これがヘルクスハイマー反応です。

しかし要は、このヘルクスハイマー反応をうまく抑えてあげればいいのです。不快な副作用を押さえさえすれば、十分その薬のメリットを享受して、病気自体を速やかに治すことができます。

ヘルクスハイマー反応のサポート

体内の毒素をしっかり出すことが重要なので、まずは排便です。毎日うんちが出ないのであれば、これは大問題です。逆に言えば、便秘のお子さんが抗生剤を飲むことは非常に危険です。

便秘は毒素を体内に溜めこんだ状態なので、抗生剤のせいで毒素が大量に遊離し、トラブルを起こしてしまいます。実際、抗生剤でトラブルの起きやすいお子さんは便秘がちであることが多いです。

二つ目には肝臓や腎臓の機能ケアです。お風呂にエプソムソルトを入れるとデトックス効果が高まります。欧米では、2,000~3,000年前から流酸マグネシウムと言って、エプソムソルトをお風呂に入れる文化があります。すると汗をかきやすくなるので解毒に最適です。

日本人にとっては、温泉に入ることがそれに当たります。毎日お風呂に浸かることも、温泉で治療をすることも同じことです。僕は冬場にはエプソムソルをお風呂に入れて解毒するようにしています。

マグネシウムの摂取

現代ではマグネシウム不足の方が非常に多いですが、お通じをよくするために、マグネシウムは欠かせません。日本人ならば手に入りやすいのが、にがりです。例えば、便秘中ならばマグネシウムを摂取してから抗生剤を飲むことをおすすめします。また、スープやご飯に入れても問題ありません。

また、マグネシウムが不足すると、筋肉のこわばりや筋肉痛が起きやすくなりますし、興奮性も高まります。カルシウムが足りないと思う方は多いのですが、実際はマグネシウム不足だったという方は圧倒的に多いと思います。

ところで、マグネシウムの摂取はサプリメントでもかまいませんが、ミネラルはイオン化された状態、いわゆる水に溶けた状態のほうが吸収されやすいです。にがりは水分にマグネシウムが豊富に溶け込んだ状態ですから、サプリメント以上におすすめです。

手作りスポーツドリンクのメリット

もう一つ、誰にでもできる特別簡単な方法をご紹介します。

簡単に言えば、水をたくさん飲んで肝臓をサポートすることです。肝臓の解毒力を高めてあげて、ヘルクスハイマー反応を抑えることができます。

最適な方法は、適度な塩分を含む自家製ドリンクです。レモンやライムといった柑橘類は肝臓のサポートにたいへん有効であることがわかっています。ですから、朝一番にレモン汁を飲むことは大きなメリットなのですね。

手っ取り早いのはコンビニでスポーツドリンクを買うことですが、市販のスポーツドリンクは甘すぎるので、常飲するならおすすめしません。子どもたちの脱水の補正と肝臓にとって手づくりのスポーツドリンクは優しいです。

また、糖分を少し入れてあげると、水分の吸収がいっそうしやすくなります。PANS/PANDASに対する有効な方法として理解いただければと思います。

手作りスポーツドリンクの材料
水 1L 、ミネラル塩 3〜5g(おいしいと感じる程度)、レモンの絞り汁 大さじ2〜3杯、アガペシロップ 大さじ3杯

このレモンですが、スーパーで売られている瓶入りのしぼり汁よりも、生のレモンを絞ったほうが圧倒的にいいです。なぜなら瓶入りのレモン汁のほとんどが、レモンの外側に付着したワックスごと絞られているからです。

ワックスは菌の侵入や水分の蒸発を防ぐためにレモン自体からも出るのですが、栽培過程で人口的に防虫剤、防腐剤入りのワックスがかけられています。しかし、糖分が過剰に入った市販のスポーツドリンクに比べれば、瓶入りのレモン汁でつくるドリンクのほうがいいと個人的には思っています。

交差反応性による脳の炎症

PANS/PANDASの治療を考える前に、もう一つ知っていただきたいメカニズムがあります。

PANS /PANDASは、感染症によって自己交代ができて脳機能が阻害されることだとお伝えしました。自己抗体が脳に炎症を起こさせるのです。

その一つに、交差反応性があります。特定の抗原に対して産生された抗体が、まったく別の抗原にも反応してしまう現象です。アレルギーや特定の食べ物で不調をきたすことにも、こうした現象がかかわっています。

例えば小麦です。小麦を食べることで誤った抗体ができ、それが脳に悪影響を及ぼすという論文が増えています。グルテンの影響についてお話しすると「アレルギーが原因だ」という意見はいまだにありますが、そうではないことがわかってきたのです。

また、体内に水銀や毒素が多い人は、その悪影響がいっそう起こりやすいこともわかっています。

つまり、食事を整えることでPANS /PANDASを管理できるということです。もはや、「グルテンの影響とはアレルギーのこと」とだけ考えられた時代は終わったのです。

次回はPANS/PANDASの対策をご紹介します。実は、PANS/PANDASのケアには日常における重要なステップがあります。どんな方法なのか、次回詳しくご説明してPANS/PANDASの回を完了したいと思います。引き続きどうぞお付き合いください。

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