これからの地方放送局に求められること

 これからの地方放送局に求められることは、放送分野における情報アクセシビリティの向上を図るために一層の努力をすることである。なぜなら地方放送局の視聴覚障がい者向けの放送に関する取り組みは、NHKおよびキー局と比べ遅れているからである。
 2014年平和祈念式典テレビ放送時の手話通訳について長崎市へ以下の投稿があった。「式典会場には手話通訳者が配置されていたが、テレビの画面からは排除されていた。このことは、聞こえない私にとって大きな驚きであった。平和を願う気持ちはろうあ者も同じ。どうか切り捨てないで」。
 2018年に「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」が政府によって策定された。放送分野における情報アクセシビリティが重要視される理由は2つある。まず、これは障がい者だけにとどまらず、高齢化社会とも関連しているからである。つまり、高齢化により聴覚・視覚の機能が低下し、通常の放送では十分に情報を取得することに困難を感じる人が増加するからである。つぎに、発災時の情報収集に当たって、地上波放送が役に立ったという調査結果があるからである。
 では、なぜ地方放送局の取り組みが遅れているのか。それは、人材の確保が難しく、またコロナ禍による経営環境が悪化しているからである。これらの課題に対する解決策を3点提言する。1つ目は、地域の福祉協会あるいは手話研究団体との連携である。放送局だけで番組を制作するのではなく、他の団体から支援を受ける。2つ目は、手話放送の普及に向けて協力企業を募集することである。資金を提供いただいた企業の名前は公表する。3つ目は、すべてのCMに字幕を付けることである。字幕付き番組は増加しているが、CMへの普及は遅れている。作業量は増えるものの、CMの質は向上する。「だれも切り捨てない」社会を実現するために、関係者が積極的に取り組むことが期待される。

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