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いい体験は、誰かに話したくなる。見える景色が変わる。
松本本を巡る旅で出会ったたくさんの本の中の一冊。期待以上におもしろかったのが、
「道具のブツリ」 田中幸/結城千代子
普段よく使うハサミや刃物などを、物理の法則で解説した一冊。
はさみはテコの原理。ザルをつかって野菜の水切りをするのは、慣性の法則。などなどをエッセイ風にさらりと読みやすくまとめている。
刃物でトマトを切る。分子が結合している物質を断ち切る。刃物はギザギザしていないと、ひっかかりができないので切ることができない。物理的に見ると、新しい視点が生まれる。
こういう本を読むと、誰かに話したくなる。自分の体験を共有したいと思うからだ。ただのうんちくオヤジになっちゃいそうだけれど。
見える世界も変わる。あれはこの原理をつかってる道具かな。弾性があるな。とか、しばらくはそんなふうに考えてしまいそう。
旅とかカヤックの体験も一緒かな。誰かに話したくなるような、見える世界が変わるようなコンテンツを目指したいものだ。
(追記)
読了しました。物理視点で見ると、いろんなものが違って見える!
たとえば杖やストックは、「支えの面積」を広げてくれる。普通、人間が絶つときには両足を含む内側に支える面がある。そこに支えの点がひとつ加えられるだけで、その面積が広くなるってこと。
カヤックを教えるときにも、物理的に分解するとわかりやすくなる。支点・力点・作用点や慣性など、より一層、理解が深まったように思う。
最後に。
世界の終わりは、氷河期ではなく、すべてが同じ温度になったときらしい。なるほど、活動が一切なくなるということだね。
この本は、モノとしても楽しい。大きさが定形ではなく、細長い。表紙の内側に挟んだ艶っぽい紙とか、紙質や装丁も独特。
カバーを外してみると、さらに楽しい。
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作っているひとが楽しんでいるかんじがして、すごくいい。