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登山道整備の現場で知った課題とジレンマ

昨年春から、登山道整備に参加させてもらっている。

それを見て、「わたしも参加したいです」と協力を申し出てくれるひともちらほら現れてきた。直接かかわりがなくても、登山で道の荒れが気になり、できれば手伝いたいと思うひとは多いと思う。

でも、やっていくうちにわかったのだが、登山道を直せない難しい問題があったのだった。

登山道は誰が管理しているのか

そもそも道には管理者がいる。いろんなタイプの道があるのだが、詳しくはこんなかんじ。

マウンテンバイカーズ白書」平野悠一郎・辰巳出版より

登山道は、いろんな要素がからみあっている。
ひとつは、管理者があいまいになっている場合が多い。
たとえば既定のルートから外れて、その道を利用する人が出てくると、新しい道ができてしまうことがある。これを誰が管理するのか、わからないままだ。
さらに難しいのは、土地所有者と登山道の管理者が異なる場合。
そして国立公園内では、国立公園法という行政法が別にある。
そんなこんなが折り重なっていて、すごい複雑なことになっている。

責任の問題

登山道の管理と責任について」より抜粋

橋や手すりなどの人工物を設置した場合は、管理責任が生まれる。実際に、事故が起こった場合に責任が問われた事例がある。
遊歩道は管理者が責任を問われることが多く、登山道では利用者の自己責任とされることが多い。

そのため、予算がなくて修繕できない場合には、事故が起きないように通行禁止にしてしまうことが多々ある。
このままでは、通れなくなるルートが増えていくばかりになりそう。

ちなみにニュージーランドでは、滞在中の事故に対してACCという国が補償する保険制度があるそうだ。登山道など、トレイルにおいて不備があって起きた事故に対しても、国が入っている保険でカバーされるしくみになっている。

さまざまな調整が必要

先日参加した、石割山登山道補修プロジェクトでは、道の管理者、土地所有者などに許可をとってから、道の整備をしているそうだ。

こんなかんじ。

石割山登山道補修プロジェクトでは、これだけの調整が実施された

地元に住む人ならまだしも、他所に住んでいるひとが登山整備するとなると、大変なことになる。
その地域の主要なひとを探し当て、信頼関係をつくってから、土地所有者を紹介してもらい、許可をとってからの整備・・と、時間も手間もかかることが膨大にあるのだ。

しかも私有地だと、相続により土地の所有者を探し当てられない、もしくは所有者がこまぎれになっていて、年々許可を得るのが難しくなってきている。

それでも登山道は荒れていく

あまり知られていないが、こういった理由で登山道整備はなかなか手だしできない状況にある。

法改正を目指す

大雪山山守隊の岡崎さんは、法整備の改善も必要だと言う。
そのためには、この問題が社会的な課題だと周知され、法改正につなげていく必要がある。登山道や、マウンテンバイクのトレイルを利用するひとたちに、もっと広く知ってもらいたい。

段取りや進め方のノウハウをシェアする

とはいえ、それを待っていても登山道は荒れていくばかり。
まずは、登山道整備までの段取りのやりかたを、共有できるといいと思う。

どの順番で(←ここが重要)、どうすすめていったらスムーズにできるのか。ノウハウの集積があると、そのあとに続きやすい。それを参考に、いろんな地域で登山道整備の団体が立ち上がっていくのが理想だ。
いろんなアプローチの仕方があると思うのだが、できるだけ回り道せずに作業にかかれるフローをシェアしていくことだ。

加えて、施工の体制も考える必要がある。

登山道も道であるからには、安全な施工管理が必要。
施工は知識や技術がある専門業者にまかせ、手数が必要な資材集め(周辺から丸太や枝葉、土を調達する)はボランティアにお願いするなどにして、登山道整備にかかわりたいひとをうまく巻き込んでいけたらいいと思う。

安全確実な道補修を効率よくできる仕組みづくりも、同時に考えていきたいところだ。


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