エディラインは溝だと思え。
流れを渡って沈する。
瀬を下り終わって沈する。
流れの当たっている壁沿いで沈する。
エディに入ろうとして沈する。
これ、エディラインでやられています。
エディラインとは
エディラインとは、違った方向からやってくる水流がぶつかり合っているところです。そこが筋に見えるので、エディラインと呼ばれます。
エディラインは、はっきり見えるものと見えにくいもの、角度が平行に近いものと正面からのもの、流速差が大きいものと小さいものなど、さまざまなぶつかりかたがあります。
ぶつかり合っている流れに差があるほど、目に見えてわかりやすいです。
流れとエディの間。
中洲の下流側など、合流しているところ。
本流と支流が合流しているところ。
岩にぶつかってはね返っている水と流れの間。
広い流れが狭まっているところ。
流量がある川の深い大きなエディでは、ボイルどうしがぶつかりあってエディラインが不規則にできます。
ぶつかり合っている部分は水の動きが複雑なので、不安定になりやすいです。つまり、エディラインの上に滞在する時間が長いほど、不安定な状態が長く続きます。
エディラインで”やられない”コツ
エディラインの攻略法はふたつ。
一気に越える、もしくは近寄らない。
だらだらと越えられない状態が、いちばん転びやすいです。
一気に超える
エディラインは”溝のようなもの”です。越えるコツは、溝を自転車で越えるときに似ています。溝に対して直角で、勢いよく直線的に越えるほど、安定します。
自転車で溝を越えるときに、平行に近いとタイヤがとられたり、スピードがなくて越えられなかったり、溝の上でハンドルを切るとタイヤがはまっだりして、よろけます。
リバーカヤックも、エディラインを一気に越えるには、角度、スピード、直進性が必要です。
斜めもしくは直角で
速い流れに入る際には、斜め上流方向へ角度を作ってエディラインを超えます。斜め上流方向に向けて入っていくと、真横に向いて入るよりも流れを受ける幅が狭まるので、回されにくくなります。
逆にエディラインに平行になると、エディラインにはじかれて、越えにくくなります。
流れから出てエディに進むときには、直角に近い角度を作ると、越えやすいです。
エディラインに対して斜め下流向きででは、はじかれてしまうことがあります。強いエディラインの場合はエディラインに補足されて、レールに乗せられるように下流へ運ばれてしまいます。
合流でできるエディラインや、広い流れが狭まるときにできるエディラインは、下流へまっすぐに漕ぎ進むと、エディラインに対して平行にさしかかってしまいます。この状態になると、左右どちらを下げてもエッジが囚われます。
このようなエディラインを直角に越えるには、横向きに慣性をつける必要があります。どんなコースが適切なのかを、前もって考える必要があります。
広い流れが集まっているところも、流れに沿ったエディラインができる。
スピード
ボートのスピードが速いほど、エディラインを越えやすいです。直進性が高まり、流れの変化に影響されにくくなるからです。
ゆっくりになるほど、ボートの先端が流れの影響をうけて回されます。急激に回されるほど、エッジがとられて不安定になります。
また、流れに沿ってできるエディライン(合流、広いところから狭いところ)は、流れよりも速くボートを動かすといいです。
流れと同じスピードになったときに、デッキに水が載ります。
川を下っていると、流れのスピード感があるので速く進んでいるように誤解しがちです。地面との相対速度ではなく、まわりの水との相対速度に差をつくれるかがポイント。初心者に対して、「とにかく漕げ」とアドバイスするのは、乗っている水に対して速度を出したいのです。
回さずに、まっすぐに
エディラインは、できるだけ直線的に越えたいです。
ボートの向きを変える必要があるなら、エディライン上を重心が越えてから回したほうが、コントロールしやすいです。
エディライン上やエディラインの近くで回すと、重心がエディライン上にとどまり続けます。強いエディラインだと、ボートや重心が補足されて、抜け出しにくくなります。
自転車で、溝にさしかかったときにハンドルを回さないのと一緒。溝の上でハンドルを切ると、溝にタイヤが囚われてバランスを崩します。また、溝が深いと、意図せず溝の上をタイヤが走ってしまうのに似ています。
増水した川など、流量とパワーのある流れでは、エディの中にもエディラインができます。水深が深い大きなエディに入るときには、注意が必要です。キノコ雲のように川底から湧きあがっている水どうしがぶつかりあったところに、モヤッとしたエディラインができています。湧きあがりがぶつかっているので、エディラインの場所がゆらゆらと移動します。
こういったエディラインでやられないためには、完全に止まれるところまでスピードをゆるめずに漕ぎきること。
流れとエディの境い目のエディラインを越えたところで「エディに入れたつもり」で安心すると、沈します。流量のある川下りをしていて、エディ間際で沈するのは、だいたいこのパターンが多いです。
こういうところで沈脱すると、エディに入れないまま下流へと流されて、けっこう大変な思いをします。
エディラインで回されないように越えるには、ブレードが刺さった状態を作るといいです。できるだけ大きなストロークで、加速しながらパドリングしたいです。
パシャパシャとキャッチが甘く短いストロークでは、どちらかのブレードが水に入っていない時間がたくさんできて、その隙にキョロリと回されます。
近寄らない
もう一つの方法は、近寄らない。できるだけエディラインに向かっている流れに乗らないようにコース取りするのも、ありです。
たとえば、本流と支流が合流してできているエディライン。合流しているところへ向かっている流れに乗らないように、コース取りをすると、やられにくいです。
例その二。岩や岸に流れが強く当たっているところ。流れが曲がっているところに多くあらわれる。
岩にぶつかってはね返った水(ピローウエーブ)と、上流からの流れがぶつかって、エディラインになる。
こういう場所では、早めに岩へ向かってぶつかっている流れから出て、エディラインを回避する。強い流れほど、ぶつかりあっているエディラインも強くなる
エディラインは常に意識したい
流量が多く、落差が大きいほど、エディラインは強く、いろんなところに発生します。
ボートを安定して動かすには、このエディラインを読みとるチカラが必要です。川下り中に不意に沈するようなことがあったら、違う方向からやってくる水がぶつかっている場所に、平行にさしかかっていなかったかを確認するといいです。
スラローム競技のトップ選手は、ごくわずかなエディラインさえも、丁寧に角度を作って越えています。エディラインに囚われると、減速してしまうからです。それにならって、わずかなエディラインも感じとり、反応できるようになると、パワーのある川でも安定して漕げるようになります。
川の流れが変化しているところには必ずエディラインがあります。不意に沈したり、回されたり、不安定になる正体です。はじめは流速差がはっきりしているようなところがわかりやすいのですが、意識しているとだんだん目では確認できないくらいの、わずかなエディラインも察知ようになります。
岩が点在しているような流れには、たくさんのエディラインができています。陸上から観察して、エディラインがどんなどころにできているのかを見てみるのも、いい練習になります。
エディラインは溝のようなもの。歩くときに無意識に溝をまたぎ越えるように、丁寧に超える練習を重ねて、意識しなくても超えられるようになるのが理想です。
丁寧に、たくさんやってみるといいです。
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