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熊本「阿蘇くじゅう国立公園」

環境省の国立公園感動体験事業の開発プロジェクトのアドバイザーとして、今年は全国8ヶ所の観光コンテンツ造成に力を注いでいます。
今回は阿蘇くじゅう国立公園を視察して参りました。

阿蘇は、自然の美しさと文化遺産が見事に融合している場所でした。
阿蘇山では、荘厳なカルデラが一年中観光客を惹きつけています。しかし成長するためには、現在の観光モデルを打破する必要があります。
阿蘇は、主に東アジア市場からのマスツーリズムに大きく影響を受けています。
バスツアーが一般的で、人気のあるエリアはすでに軽度のオーバーツーリズムに悩まされています。

近くにTSMC工場が設立されたことで、地元のステークホルダー(利害関係者)は、台湾に力を入れなければならないと感じているようです。台湾人の旅行スタイルの変化は注目すべきポイントです。
安価な団体ツアーは今や時代にズレが生じており、地元経済にはほとんど貢献できていません。東アジアの団体観光の歴史により、阿蘇は湯布院と似たアイデンティティクライシス、つまりこの地の存在意義や目的に対して疑問を抱くような深刻な状態に陥っています。西洋的なもの(カウボーイスタイルの乗馬牧場など)も多く見受けられ、景観からもあまり「日本らしさ」を感じられません。

阿蘇の伝統、例えば何世紀にもわたる野焼きは非常にユニークで、草原を維持するために必要なことではあるのですが、観光体験コンテンツに組み込むことは簡単なことではありません。欧米豪市場向けに、このプロセスがこの草原を保全するために必要な理由であることを説明するには、さらなる研究が必要かと思います。

この地域は、かつて多くの寺院が存在するスピリチュアルな中心的エリアとされていましたが、現在では一つも残っていない状態です。
阿蘇神社は歴史的に重要な場所であるにもかかわらず、標識が不十分で、メインストリートの商業的雰囲気が強すぎて、精神的な本質が損なわれているように思います。
少し手を加えるだけで、大幅に改善できる可能性があります。特に草千里のように交通量の多い地域では、観光客の管理問題に直面しています。観光客管理と説明が不十分だと、全体的な体験が損なわれます。観光衛生マネジメントへのアプローチを近代化することが極めて重要です。

通常は立ち入りが困難な地域での乗馬やマウンテンバイクなどのアクティビティは好評ですが、特に西洋風の厩舎は時代遅れに感じられます。
これらのアクティビティに日本独特のモダンなひねりを加えることで魅力を高めることが可能かと思いますが、野暮ったい文化的ステレオタイプ(文化の様式を固定的に決めつけるようなこと) な表現をすることは避けなければなりません。
クラフトビールやバーベキューキャンプ、ピクニックの提供に可能性はありますが、天候にも対応できるようなインフラを整備する必要があり、プランB等のアクティビティを追加する必要性も感じられます。

阿蘇の宿泊施設にも意識を向けねばなりません。
多くの施設から時代遅れな印象を受けました。
蘇山郷、はなれの宿千の森、茶蔵の宿など、より良い代替策をより宣伝していけば、目の肥えた旅行者の要求にも、より柔軟に応えることができるはずです。

阿蘇のストーリーの本質である山岳信仰、ユニークな自然環境、水と稲作との深いつながりは、魅力的で計り知れない可能性を秘めています。

地元のアクティビティや体験に日本流のひねりを加えた方が、海外からの旅行者の共感を呼ぶでしょうが、それをどのように表現するかは難しい課題であると言えるでしょう。


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