事業存続の危機を乗り越えたマーケターの「普通をアップデートし続ける仕事」への挑戦
「どんな風に生きてもいい時代になる」と聞いた。平成の終わりに選択した挑戦が、こんなにも憂鬱と絶望だらけだとは思ってもみなかった――。
広告代理店からSHEというスタートアップにCMOとして転職し、約2年が立ちました。これまでの振り返りとこれからについてを書いていきます。
1.電通で過ごした9年間と働き方改革
私は電通でのデジタルマーケティング業務がキャリアのスタート地点でした。2010年頃はマスメディア主体の産業構造にあり、ちょうどデジタルの夜明け前とも言える時期。
googleやfreakoutのようなまだまだ新興の広告商材を「運用型広告、、、何ですかそれは?」状態のクライアントに必死に説明をする毎日。まだ名もなき“何か”に価値を吹き込んでいく作業は、大変さを超えてとても楽しいと感じていました。そこから徐々にマスメディアも含めた統合的なプロモーションや、ブランディング、データ戦略といった幅広いマーケティングの領域に携わりました。広告・マーケティング業界のデジタル×グローバルな変化を体感し続けた日々でした。
- google@MountenView-
- TableauConference @Las Vegas -
電通デジタルに出向してからはコンサルタントのような立ち位置で、PR登壇でadtech等のセミナーでドヤ顔をすることも業務の一つに。
- adtech tokyo 2016サイトより-
上司・同僚やクライアント、パートナーに恵まれ仕事は充実していたのですが、平成の終わりには働き方改革の波が到来。一人ひとりが自分らしい働き方を実現できることが理想だと思っていますが、現実は中々に難しく、一律のルールを強いられることになんとも言えないもやもやを感じ、キャリアを考え直す模索期が自分の中で始まりました。
2.キャリア模索期、スタートアップ「SHE」への転職
下記の3つが自分の中でのキャリアテーマでした。
①「マーケティング」から「経営」、「支援側」から「背負う側」
②大きな仕事に取り組め、小さな仕事は己を小さくする
③コミュニティという、得体のない事業の可能性
キャリア模索期には、起業大国であるイスラエルへの調査ツアーへの参加や、プロボノとしてのサブスクコミュニティ6curry創業、電通内でのスタートアップ支援組織 グロースデザインユニット設立など、自分の可能性を広げる行動をひたすらに重ねました。
- 6curry サイトより-
多くの経験から、マーケティングは突き詰めると経営に行きつくだろうという体感とともに、「背負ってる側」への挑戦意欲が、静かにふつふつと沸き始めていました。
そんな中で偶然「自分らしい生き方・働き方にフォーカス」したスタートアップである、女性のキャリアスクールコミュニティを運営するSHEに出会いました。
女性だけに限らず、キャリアのダイバーシティ創出は誰もが難しいテーマだと感じていると思います。今は無き、電通鬼十測にある「大きな仕事に取り組め、小さな仕事は己を小さくする」の通り、課題感の大きさには得体のしれない強い興味を惹かれました。
加えて、コミュニティという事業のカタチに、まだ誰も正解を見つけていないことへの未知への探求心が重なり「あ、多分これ絶対にやりきれたら楽しいはず。」というまさにピンときたという感じで、事業グロース責任を担うCMOとしてSHEへ参画しました。
ここまでは一見、充足したキャリアシフトなのですが、この後に大きな困難を迎えることとなります。
3.事業存続危機と代表交代、自分には何ができるのか。
満を持して「よし、やるで!」となった矢先、私が転職して一年も立たないうちに前の代表が辞める運びとなり、複雑な事情もあって会社そのものの存続も危機に陥ることに。まさに急展開で、言葉も出ませんでした。
現代表の福田と共に、頭を抱える日々が続きました。会社継続を目指すにあたって問題が多発し、コントロールできない経営リスクが降りかかる状況が続いていました。撤退の2文字も頭の中にチラつき、とても憂鬱だったのを覚えており、最低週に3回サウナに行くことで辛うじて精神を整えていました。
ある日「もう明日までに諸々の経営継続に向けたアクションの意思決定をしなければならない…」というギリギリのタイミングで浮かんだのは、SHEのサービスを選んでくれたコミュニティ会員さんや、SHEを選んで転職してきてくれた会社メンバーたちの顔と声。
「この会社は、どんなことがあっても、絶対に続けなきゃいけない。」
そう、ストンと腹落ちするタイミングがありました。
noteにもあるように、福田が大きなリスクを取らざるを得ない形になることが見えてきた中で、自分が差し出せるものは事業に懸ける想いと未来の時間しかありませんでした。福田代表の新体制のもとでこの会社を必ず成功させるという腹決めと共にようやく「背負う側」へのキャリアがこの時に本当に始まったのだと思います。
4.コロナ禍で見つけた「価値観をアップデートする」事の可能性
さて、詳細は割愛しますが、もう本当にダメかもしれない…と思った状況から一転し、運よく経営の安定化と新体制スタートを切れることになりました。本当に、本当にありがたい。
大きな事件を乗り越えたが故に、それからというもの事業に対して強くブレない芯を持つことができました。それは、粘り強く常識を疑い価値観をアップデートし続けるという芯です。
SHEは、オフライン×オンラインのハイブリッドなコミュニティ体験を提供する教育サービスでしたが、緊急事態宣言が発令された際には全てのサービスを一次的にオンラインに切り替えました。会社のメンバー全員が一丸となっての大掛かりなプロジェクトでしたが、絶対に成功すると信じ抜くことが出き、結果としてサービスが大きく成長するきっかけとなりました。
今でこそ普通ですが、在宅でできるキャリアアップ支援や、zoomでのオンラインコミュニティ運営、新しい働き方である副業形式の就労支援サービス、リモート下で多くの業務領域を完遂できるマルチスキルを獲得したデザイナーの育成サービスなど、多くのこれまでは普通とされていなかったことが、次々と受け入れられていく様子を目の当たりにした1年でした。
この頃から、常識を疑うことや、普通とされる価値観をアップデートすること、それらの行為の可能性に懸けてみたい。そんなことを思うようになりました。
5.変革と熱狂の場を、どれだけ生み出せるか
2020年は、会社の未来の方向性を模索する事にとても多くの時間を使いました。今後もキャリアのサービス一本足でいくのか、流行りのtoB SaaS領域に事業を広げるのか等、アイデアは山ほど出ましたが、結局のところ自分たちが何を成し遂げたいかだという所に、当然ながら行き着きました。
そこで出た一つの解は、ライフステージ課題に寄り添う価値観のアップデートを軸とした事業展開。
先日プレリリースしたSHEbeautyがまさにその一つで「日本初のフルオンラインのトータル美容プロデュースサービス。」これは、オルビスさんと協業しての、まったく新しい美容スクールコミュニティが始まります。
SHEbeautyで私たちがやりたいのは、もちろん物理的な美に対しての変化の支援を土台とはしつつ、内面の考え方のアップデートに寄り添うことです。画一的な美しさを目指すのではなく、自分ならではの美しさや納得感をもって生きてほしいという、願いにも似た想いを、どこまで事業として昇華できるのかに挑戦していきます。
- リアル版リアルビューティスケッチのようなサービスを目指して-
そして、もう一つの事業展開の軸は、SHEのメンバーが心から自分らしく活躍できる場をどれだけ用意できるかどうか。
事業の本質はビジョンにあり、ビジョンとは顧客と運営側が垣根なく共創的に実現していくものでありたい、という思想の元、顧客もSHEのメンバーも同等に大切にしながらコミュニティを運営しています。だからこそ、SHEのメンバーがいかに事業に熱狂的に想いを燃やすことができるかに懸けたいし、そのための器をどれだけつくれるかだと思っています。SHEbeautyでは、まさになるべくして事業責任者が誕生しました。
6.世の中の変化は止まらない。2021年は何を変え、何を変えないのか。
もはや変化を前提とした思考でなければ何もかもが成り立たない中、変えるものと変えないものの取捨選択が今年の大事なテーマになってきます。
SHEが変えないものとしては、価値観の変革をし続けるコミュニティブランドを生み出し続けることです。引き続き、女性向けのライフステージ課題を軸に寄り添った事業展開をしていきます。
そして、変えていくべきだと思う事も、たくさんあります。
唐突ですが、私は脚本家の野木亜希子さんの大ファンで、彼女の描く「空気のように世間に蔓延する、見えない呪い」の描き方と、その問いの立て方に対し、畏敬の念を抱いています。
野木作品であるtwitterでの世界トレンド入りもした #逃げ恥 で描かれた世界には、当然様々な解釈があるとは思いますが、私が感じたことは「誰かの問題は、みんなの問題になりうるから、みんなで解決しなくてはいけない。」ということでした。今ある普通という価値観が問題になっているのであれば、普通をアップデートするしかない、それも、みんなで。
SHEの各種ミレニアル女性向けのサービスが解く課題も、根差しているのは性別や年齢、国籍などを超えた、社会全体の共通の物のはず。少なくともまずは運営側の組織を、より多様性のあるチームへの変化を今年は目指していきたいと思っています。個性爆発のための導火線を仕込んでいきたい。
7.最後に
「この国には何でもある。本当にいろいろなものがあります。だが、希望だけがない。」
これは、村上龍著「希望の国のエクソダス」で主人公の少年が国会で言い放った言葉。希望よりも憂鬱や絶望が多く存在するのであれば、それを課題定義・言語化し問いを立て、解決する仕組みを生み出し続けることこそが、令和時代の一つの仕事の在り方だと信じています。この国の絶望と憂鬱の数だけ、希望を生み出すチャンスがあるかもしれない。そんな風に思えたなら、ぜひSHEと一緒に何かを仕掛けましょう。ご連絡お待ちしております。
(連絡)なんやかんやピンチに対して前向きな楽しい職場です!笑
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