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キャピトルから無視されたビートルズナンバー

ビートルズマニアならずとも周知の事実として、アナログLP時代は英国のオリジナル盤とは収録曲もジャケットもさらには音まで異なったカタチで各国盤がリリースされていた。そして、これまたよく知られることだが、アメリカでは、初の渡米を前にしてキャピトルがビートルズのレコードを発売する前に、Vee-Jay、SwanそしてTollyとローカルなレーベルによるリリースがあった。このうち、Vee-Jayだけがファーストアルバムをリリースしている。とは言え、当時のアメリカでの著作権料が高かったため、英国盤そのままではなく、曲を間引いての発売とあいなった。

さて、問題のキャピトルだが、英国ですでに所謂ビートルズマニアが生まれ、ビートルズ旋風が吹き荒れていると言うのに、某デクスター氏の意見により、なかなか契約に踏み切らず、やっと初上陸に引っ掛けて”Meet the Beatles”を発売した訳だ。そのアルバム、中身は英国でのファーストではなく、セカンドの”With the Beatles”をベースに、曲を変更してのリリースだった。

この時、キャピトルが英国のファーストアルバムから外した曲が2曲ある。”Misery”と”There’s A Place”がそれだ。”There’s A Place”はかろうじてシングル”Twist and Shout”のB面としてリリースされたが、”Misery”は、1965年にキャピトルがVee-Jayから権利を買ったと思われる”The Early Beatles”にも曲を減らしたため収録されず、1980年になって”Rarities”が出るまで「伝説のナンバー」だった。いみじくもその曲名の如くミジメな扱いだった訳だ。

では、なぜ、キャピトルはこの2曲を外したのだろうか、と考えてみる。地味だから?それもあるだろうが、この2曲は、カバーの多いファーストにおいて、レノン=マッカートニーのオリジナルとしては、まさにマージービートくさいリヴァプールローカルなサウンドだからではないか?(“There’s〜”に関してはそう言う指摘の記事を読んだことがある)

その気になって、マージー河を臨む気分でこの2曲を味わってみよう。
”There’s〜”はのちにビートルズの代表曲に挙げられる”In My Life”に先駆けて”Place”というキーワードが登場し、サビの”In my mind, there’s no sorrow〜”のドライヴ感、まるで夕陽に映えるような青春のナンバーだ。ジョンの声の向こうに彼らの希望が見えないか?ところどころの「ダダダン」というドラムのバッキングも胸を締めつける。これもどこかで読んだが、シングルリリースの候補でもあったようだ。にしては、渋過ぎるとは思うが…。

一方の”Misery”だが、イントロのギターの不思議な響きにもうダウンだ。ヘレン・シャピロに書いたのに採用されなかったと言う暗い過去もある。すごいのは全体の湿り気だけでなく、”Send her back to me〜”の”Send”を「シェンド」と発音するほど地元感剥き出しなところだと思う。エンディング付近での「ワンワワン〜」とファッツ・ドミノばりの切ないスキャットも、それ自身がフェイドアウトしているにもかかわらず、しょぼくれ感をマキシマムにしてくれる。

“One, Two, Three, FOUR!!!”で勢いよく始まるアルバムにそっと仕込まれたこの2曲にビートルズの真髄を見る思いだ。





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