Dolphin Saneリスニングメモ(初稿6)
勝手に妄想、混ぜてる回想、そして結局暴走のリスニングメモ、いよいよ最終回。残すはあと2曲。「マドロミノフチ」と「幽泳教室」だ。
もったいないから、ちょっとこのアルバム以前の話をしよう。
このアルバム収録曲で、3曲はすでに正式に発表されていた。「Summer Guru」、「恋のバネ」、「マドロミノフチ」だ。それぞれのリリースタイミングをみてみよう。
「マドロミノフチ」:2023年2月22日。
「恋のバネ」:2023年6月23日。
「Summer Guru」:2023年7月20日。
このうち、「マドロミノフチ」と「Summer Guru」にはバックコーラスに同郷の音楽ユニット「huenica」の伊藤サチコが参加している。将治は、一時期、Studio DIG Sessionで音楽発信をしていた頃、よくhuenicaに参加していたので(音源も出している)、ああ、そうだったと思い出すファンも多いだろう。
これら3曲の配信による正式発表は上記の通りだが、実はそれよりすこし前、2022年10月16日の熊谷モルタルレコード公演では、すでに新曲として「Summer Guru」と「マドロミノフチ」が披露されている。僕は行かなかったが、熱心なファンのTwitter(当時)により記録されている。さらに11月3日の同じモルタルでは「恋のバネ」も演奏されている。そして気になるのが同じ頃新曲としてライヴ演奏されている「ヒプノチカ」と「エアポケット・アフェア」だ。仕上げてタイトルを変えてこのアルバムに収録されているのか、それとも未発表のままなのか。「ヒプノチカ」は「ヒプノティカ」であり、Hypnotica、つまり「催眠させるもの」と言う意味らしい。とすると、「予感飛行」あたりか、そして、後者はもしかして「アフター・アフェア」の原曲か?いや、とにかく2022年後半に将治としては「モテ期」、いや、「創造力のほとばしり期」を迎えたのではないだろうか。先にも書いたが、それまで和洋既成曲の不可思議なちょっとイっちゃってるアレンジバージョンをこれまた不可思議な自作イラストなどをフィーチャーしてインスタにあげていたが、それらが結実したと言うことなのではないか。
おっと、勿体つけて、こんなに書いてしまった。残る2曲に行こう。
「マドロミノフチ」こそ「市営住宅」や「オカルト」から連なる将治音楽の新しいステップと思える。いや、このアルバム全体がそうなのだが、なかでも、特に、と言う意味だ。ジョン・レノンがハウス・ハズバンド時代を終えて、マイアミで「創造力の下痢」を起こし(公衆便所を飛び越えたたかどうかは別にして)、元気いっぱいに「ダブル・ファンタジー」さらに「ミルク・アンド・ハニー」で発表されるどこか「優しく突き抜けた感じ」を感じるのだ。ゆったりとしたビートに電気シタールだろうか、びょんびょんとフレーズが入り、比較的大きめにミックスされたシンプルなドラムと上下に行き来するベースラインに支えられて曲は進む。E♭とFmの繰り返しを中心にしたコード展開は他の曲のようなひねりがない分、夢うつつ状態、桃源郷へとリスナーを誘う。
そして、ラストに出る「幽泳教室」、GLIDERのデビューミニアルバム「Glider&Slide」に収録の「Believe You」オープニングを思い出させるフレーズに続く本編はなんとFの循環コード!ポール・マッカートニー言うところの「ダイアナ・コード」!ああ、なんと!初めて聴いたとき、涙が出て止まらなかった。この使い古されたコード展開をあえて使ってまさかのDoo Wop仕様。そして、微かに聞こえるリズムボックス。中間部「♫ここに風は吹かない 心配とかいらない・・・」ここがラップになっているのも憎い。「そう、心配いらないんだ」と思えた時、この曲のタイトルの「幽泳教室」、もしかして「漂流教室」からのインスピレーションなのか、「遊泳」と書かれるべきところを「幽泳」とすることにより、イルカが泳ぐ海洋の並行世界(そう、パラレルワールドだ)として、幾多の精霊もしくは守護霊が自由に空間を泳ぎ回っている様を奇しくも想起させる結果になっているんじゃないか、その世界こそ、将治の永遠のアイドルのひとりであるDavid Bowieの”A lad in sane”に対抗しうるちょっと狂った、現実と非現実のフチにある大海原なのではないか、と言うことに僕は思い当たったのだ。
(この項、終わり)
PS 先日、YouTubeのMerchantアカウントに奇妙なインストが上がり始めたのに気がついた。最新の「EL#1」と題されたものは2022年12月31日の録音とある。どこかで聞いたのはその所為か。
PS2 これでやっとロングインタビュー読める!(笑)