Dolphin Saneリスニングメモ(初稿3)
3曲目と4曲目には、すでにインスタで発表していた「Summer Guru」と「恋のバネ」が配置されている。
前者はSpectrumation収録の「Love Scene」の流れで、曲調は異なれど、同じUSインディーズ風味を感じる。アコースティックギター、スライドギターに通常モードのエレクトリックギター、この3本とソリッドなベースギターが織りなすギターポップ。スライドは1曲目「微笑み」でもフィーチャーされているが、そちらはおそらくペダルスティールと思われるが、ここでは通常のエレクトリックギターにスライドバーで演奏されていると思われ、一方、通常のギターでスライドではない方は、フレーズやその組み立て方、トーンはマイルドな曲調でのトム・ヴァーレインをも想起させる。
ところで、「Summer Guru」と言うのは「夏の教祖」とでも訳すのだろうか。「メタル・グールー」もヒントになっているのかも知れない。その名のように、全体をモヤっとした陽炎が覆っているようなサウンドメイキングだ。おまけに”Summer Guru She’s A Girl…グルグル…”とお得意のナンセンスな言葉遊び(そうだ、このような「ダジャレヌーヴォー」と僕が命名した言葉遊びは、手前味噌を許していただければ僕の影響も大きいと思うが、もはや栗田兄弟のお得意だ)で締めくくられているではないか(笑)。
このアルバムは基本の楽器類を全部、将治が演奏しているが、随分腕を上げたなぁと思う。特にドラムの表現にそれを顕著に感じる。リズムキープだけではない、歌に合わせた表情豊かなドラムだ。従ってこのアルバムは、マルチプレイヤーとしての将治の成長をずばり感じることができる点でも聴き応えのある作品と言えよう。
4曲目の「恋のバネ」も早くからインスタで紹介されていた一曲で、楽曲としては最も日本的な情緒を感じさせる。それはメロディのやさしさ、コード自体とコード展開、ビートのゆったりさ重心によるものと思えるが、元々Dキーであったのが、途中、Dに戻る代わりにB♭maj7で受け(Dキーの間もDに戻る前にD♭を挟んでいるので、Fとの親和性がある仕掛けになっていると見た)、Fキーに転調した後にフィーチャーされているスライドギターがちょっとジョージ・ハリスンを感じさせ、いいアクセントになっている。「♫目と目が合ったら 恋のバネが弾け飛ぶ」と言うフレーズはなかなか面白いし、それを溌剌さ一杯ではなく逆に淡々と歌うことによって聴き手の想像をより膨らませられるのだろう。このアルバムではテンションコードが結構重要な位置を占めていると思うが、特にメイジャー7、この弱々しいコードの響きとマイナーコードの組み合わせで奏でられる恋の歌がこの「恋のバネ」だ。
ところで、アルバム収録曲は9曲であるが、仮にA面、B面の編成にしたなら、次の「予感飛行」がA面ラストということになるだろうか。その後に続くタイトルナンバー「Dolphin Sane」が異彩を放っていることもあり、やはりA面5曲、B面4曲と考えるのが自然、いや、そういうダブルサイドで考えること自体が不自然なのだが・・・。ということで次回はそのA面からB面への転換となる2曲についての妄想にしようと思う。
(続く)