スーツケースと体重合わせても俺の方がお相撲さんより軽いだろうが!
勘のいい読者諸君はタイトルを見ただけで、あー、あのことか。と想像することと思うが、海外駐在員を悩ますものに、チェックインバゲージの重量制限と言うものがある。意地の悪い税関員に次いで2番目と言っていいだろう。
今の制限重量はよく知らないが、90年代はエコノミーで20㎏だったと思う。しかし、家族で赴任している場合、そんなのはすぐにいっぱいになってしまう。とくに日本の雑誌や本を買って来てと言うリクエストがあるとたちまち行ってしまう。
出張慣れしてくると、帰国前夜のパッキングも得意になって、必要ないものはばんばん捨ててキッチリ荷造りが出来るようになる。重たいものは出来るだけ機内持ち込み手荷物とし、スーツケースが重量オーバーしないように細心の注意を払う。
それにしても解せないのは、重量オーバーした場合、なぜかファーストクラスのレートを適応するみたいなルールがあったんじゃないか、ってことだ。実際に重量オーバーで金を取られたことはないから詳しくは知らないが、とにかくいきなり高額になっていたと思う。
僕の場合、カミさんのリクエストで本類が多かったから機内持ち込み用にスポーツバッグを用意し、それにぎっちり詰め込んだ。だから驚異的に重くなる。自分の席に向かって機内の通路を歩くにも一苦労するような重さだ。
ある帰国の際、流石にスーツケースが重量オーバーしてしまった。大抵の場合、多少の分は負けてくれもするが、その時はおまけの範囲を遥かに超えていたのだろう。成田空港のチェックインカウンターで、重量オーバーを告げられた僕は、カチンと来て、わかりました。じゃ、中身を手荷物に移しますのでちょっと待ってくださいと言いながら、その場でスーツケースを床に置き、ロックを外し、開けてみたら、来る時にガメていたANAの機内誌が乗っているではないか。こんなのが入っているからいけないんだ!と思い、さっと取り出して、係員にあてつけるように投げ出した。
カウンターの係員は、僕の魂胆を諭すように、機内持ち込みも制限がありますよ、と忠告して来た。なに⁈と思った僕は、誰しもが考えつく定番の理屈を繰り出した。え?それじゃあれですか。お相撲さんと比べると僕なんか荷物と合わせたって軽いんだ。そこ、どう考えるんですか?と食い付いたが、係員は薄笑いをしながら、それはキマリですから、なんとも…とか言って僕をあしらった。
その瞬間、王手!理屈をこねてもダメだと悟った僕はなんとか要らないものを捨てたり、手荷物に移したりして、重量オーバーは免れたのだが、スーツケースを載せる時すでに重量を示すデジタル表示がゼロではなかったことを鋭く指摘したりもした。
まさに1キロの攻防を繰り広げたと言えるだろう。