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Glider: Spectrumation私的ライナーノーツ   ⑤▽

DIGに遊びに行って、ニンテンドーに付き合わされたことがある。初代ファミコンだったかな。DIGのラウンジのTVに嬉々としてカセットをセットして「ゴトーさんもやらない?」と来たが、僕は「おー、やるやる!」とはいかず、気乗りしないままコントローラーを手にしたが、案の定、すぐにやられてしまった。ファミコンが登場した頃、カミさんがすぐ好きになり、かなりやったんだが、とにかくこの手は弱いのですぐにやらなくなってしまった。それでもボンバーマンやマリオカート、スーパーマリオ・オープンゴルフあたりはハマってやっていたが、マリオカートなど身体が一緒に左右に大きく揺れるものだから、クールにプレイしている僕以外の家族には常に負けていた。

なんでこんな話をしたかと言うと、この「▽」、実は去年の春に極少数、出廻った”étude“とだけ書かれた栗田兄弟のデモCD-Rに「トライアングル」と言うタイトルで収録されていたのだが、それは”Spectrumation”のアシッドなダンスナンバーアレンジではなく、まるでスーパーマリオのBGMの如きゲームサウンドだったのだ。画面が暗転した時に流れるあのサウンドを思わせる。僕なんかすぐにGame Overしそうだ。

そのデモではキーボードがメインのリフを演奏しているが、”Spectrumation”バージョンはキビキビしたギターがその役を務めている。曲のトーンとしては「トリデライフ」的なのを思わせるが、地を這う虫のように呟いたかと思うと、ヒステリックに声を張り上げる。思わず夜空を見上げてしまいそうだ(このちょっとクッシー君みたいなSF感は前作の「衛星グッバイ」にも共通するものを感じる)。夏の大三角形が襲って来るんじゃないかと言う、いい感じに狂気じみた魅力がある。

で、タイトル。なんだ「▽」って。カリメロか⁈ よくみたら「デルタ」とあるではないか。「逆三角形」と読むのだと勝手に信じこんでいたが、違った。

歌詞を読んでいくと、下敷きになったデモとの共通点も見出せる。「部屋」が「ヘア」になったり「彼」が「奴」になったりしている。そしてなんと言っても白眉は「トライアングル」と「都内某所」を掛けているところだ。「公衆便所」に匹敵するワードのチョイスだ。

そうそう、もう一つ、デモはマサハルが飄々と歌っている。ニンテンドー・サウンドと相まって、まさに亀仙人だ。

「▽」はここで聴ける。

https://music.youtube.com/watch?v=j6RCIIojI00&list=OLAK5uy_lS8yvdWUEbc-VF8x9RpRz7Z4QvFiGVglE



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