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Glider: Spectrumation 私的ライナーノーツ   ④くちびるはサルビア

呼吸するようなシンセサイザーの不思議な懐かしさのあるコードに導かれて始まるLove song。

DarkllRhythm以降のラヴ・ソングはどれも一筋縄ではいかないシチュエーションだが、これはひたすら「くちびる」と「サルビア」を掛けたその音の組み合わせの妙を楽しむところから始めたい。「くちびるはルビー」でもよかったかもしれないが、サルビアの花の赤を通り越してド赤な色と密集した花びらの付きかたが、くちびると言う単語にイメージからも、とても似合う。

ゆっくりとたゆたう感じは真夏のけだるさとどこか秋の近い寂しさも感じさせる。それが真夏の未亡人と言う言葉から広がる隠微な風景と相まって、20代の若者にはイケナイ響きも奏でる。

初めて聴いた時、彼らがサポートで入っている葡萄畑の楽曲が連想された。葡萄畑も一筋縄ではいかないラヴ・ソングばかりしゃないか。

先に不思議なコードと書いたが、これはこれでまたまたマッカートニーの”Maybe I’m Amazed”に想いを馳せてしまう。勿論、ドンピシャのコードではないが、コードが寄って立つベース音の使い方に彼ゆずりのセンスを感じる。そしてもうひとつ、でいとりっぱー時代の「パラオの海」も記憶の彼方から舞い戻っても来た。そしてもうちょっとと思うところで、曲は終わり、次のトラック「▽」がいいタイミングで始まるのだ。あの虫のような曲が。

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