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危機一髪!サファリの夜(後編)
テントが何者かに外から押されていた。荒っぽい息遣いも聞こえる。なんなんだ、こんな夜中に⁈と訳もわからずにいると家族4人とも皆起き出している。
見るとテントの一角がめりこんで来そうな勢いではないか。こりゃヤバいなぁ…と息を殺してる内にそれは引っ込んで、元に戻ったかと思ったら、今度はテントの外を何者かが大勢で走っている音が響いた。
少し静かになったので、そうっとテントから外を覗くと音は走り去っていた。外に出てみたら、見張りのガードマンが、こう言った。「ヒッポだよ。夜になると川から上がって奥の方へ走って行くんだ。もう大丈夫だと思うけど、危ないから気をつけて」「!」
うへー、ヒッポとはカバである。
そう言えば、テントに到着した時、そばを流れる川にカバが何頭か水遊びして居たっけ。まさか、夜になると彼らが上陸するとは。そして猛烈な速度で走ってくるとは。想像だにしなかった。あんなのに突撃されたらひとたまりもない。テントがぶっ潰されなかったのは、流石にカバもテントは避けて走って行くからだろう。それとそんな場所だからテントもしっかり作ってあるに違いない。そう言えば、テントが鼻息と共にめりこんで来たのは、ちょうど持ってきたお菓子やらが入ったリュックがそこにあったかららしい。突入されなくて命拾いだ。
夜が明けて、サファリ2日目。ヒッポの騒ぎで蚊のことはつい、忘れていた。幸い蚊の闖入はなく、刺されはしなかったようだ。
ところが、ハイエースに乗り込んで座っていたら、足元から蚊が何匹も浮きあがって来るではないか!一難去ってまた一難とはこのことだ。聞けば、蚊は夜の間サファリ・カーの床近くに溜まっているとのことだった。乗客みんなで蚊を追い出したが、見ると、同じグループの青年の首筋に一匹とまっている!咄嗟にひっぱたいたがもしかしたら噛まれたあとかもしれない。
こんなにびくびくしている僕らだったが、面白いのは、その翌週、乗ったタクシー・ドライバーがこんな風に言っていたことだ。「マラリア?ああ、年に2、3回クラクラする時があるけどね。ま、そう言う時は血清を打つから大丈夫さ(苦笑)!」マラリアのある生活を生きる人々だからこそ、その座った度胸と対処の仕方に感心した。