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米国におけるMMFとは

MMF・MRF

米国金融市場を語る上で中核的な存在と言えるのがMMF(マネ-・マーケット・ファンド)の存在です。
MMFは証券口座における預金のような性格を持った投資信託で、日本においてはMRF(マネー・リザーブ・ファンド)のような位置づけになります。
投資家が証券口座に入金すると、MMFやMRFという形で口座内に反映されます。そのMMFやMRFの残高をもとに株式や投資信託の買付けを行います。
以下、米国MMFに焦点を当てて解説します。

預金としての性格のMMF

MMFは証券口座における預金としての性格を持つと述べました。
つまり、リスクが少なく・いつでも引き出せるという点が重要となるため、MMFは基本的に国債(1年未満の短期割引債など)やCP(コマーシャルペーパー:企業が発行する短期無担保の約束手形)、FRBのリバースレポ(中銀へ資金を貸す行為)などのリスクの低い商品で運用されます。

MMFは投資信託の一種ですので、そこに預けられた資金には運用益が付きます。その利回りは、主に短期で運用されたMMFの収益に基づいて提供されます。
※MMFの利回りがマイナスとなることもあり得ますが、預金としての性格を維持するためにリスクの低い資産で運用されるため、マイナスになることは考えにくいです。

MMFの種類

MMFには主に2つの種類があります。
ひとつはガバメントMMFといい、運用資産の99.5%以上を現金や政府発行証券(国債など)としなければならないと決められています。
もうひとつはプライムMMFといい、CP等を含む運用を行います。
ガバメントMMFは商品の特性として高い流動性と安全性があります。
それに比べ、プライムMMFはCP等への投資も行っているため、相対的にリスクは高くなりますが利回りは高く設定される傾向にあります。
上記のことから、金融危機時やそのリスクの高まった時などにはプライムMMFからガバメントMMFへの資金シフトが起こりやすいと言えます。
また、機関投資家向けのプライムMMFは預金としての性格を持ちながら時価評価される点や、急激な解約が起こった場合は解約に制限措置が取られるといった規制が存在するため、ガバメントMMFのプレゼンスは高くなっています。

米国にとってのMMF

MMFにある資金は株式投資への待機資金としての意味合いと、預金の代替としての意味合いがあります。
米国においては証券投資をする人口の割合が大きいことに加え、1970年代に起こった高インフレ時に規制により預金金利を上げられなかった銀行から、利回りの高くなったMMFに資金が流入した背景があり、資金の預け先としてMMFという選択肢は大きな存在となっています。

MMFの資産残高

下図はMMFの資産残高の推移を表したもので、四半期ごとに集計されたものになります。
ICIが週次で公表している最新のデータ(2024年3月21日発表)では、MMFの資産残高は6兆465億ドルとなっており、その内ガバメントMMFは4兆9059億ドル、プライムMMFは1兆194億ドルとなっています。

出所:セントルイス連銀エコノミックデータ(FRED)

MMFの利回り

MMFの種類によって利回りは異なります。
下図のように個人投資家向けプライムMMFが最も高く、次いで機関投資家向けプライムMMF、そしてガバメントMMFとなっています。
ガバメントMMFはそのほとんどが国債で運用されているため、国債利回りと酷似した利回り水準となっています。
2024年1月度のデータでは機関投資家向けプライムMMFの利回りが5.49%、個人投資家向けプライムMMFが5.55%、ガバメントMMFが5.39%となっています。

米国証券取引委員会(SEC)より作成

銀行預金金利との比較

米国の銀行金利はFDIC(米連邦預金保険公社)によると、3月18日に発表された全国平均で0.47%となっています。
銀行の預金金利は短期市場で運用するMMFの利回りとは違い、基本的に長期で運用する国債等に基づいて設定されるため、金利の低いときに買い入れた国債を保有している段階ではすぐに預金金利を上げられないといった特徴があります。
保有する長期の国債等が高い金利水準でのものに置き換わるまでには時間がかかるため、MMFの利回りが優位になりやすいと言えます。

最後に

コロナ禍以降の急速なインフレによってFRBは急激な利上げを余儀なくされました。
資金は低利の銀行預金から高利のMMFへシフトしました。
そこへ米政府の国債大量発行が重なることで従来の経路とは違うQT(量的引締め)が行われることとなりました。
FRBの急速な利上げは銀行不安の一因となり、MMFを経由したQTに限界が見え始めました。
その中でFRBはインフレ退治とのタイミングを見ながら今年は利下げ実施の見通しとなっており、難しい状況となっています。

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