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短編小説|金を出す機械

机の上に置かれた、古いラジオみたいな機械。
日に焼けた、汚れたベージュ色。

"アイツ"が言うには、この機械を使えば好きなだけ金が手に入るそうだ。

2つのダイヤルを回して金額を決める。
左の赤いダイヤルは桁数を、右の青いダイヤルには桁に入る数字を設定するらしい。

まずは、赤いダイヤルを3、青いダイヤルを1にする。
これで100円だ。

青のダイヤルの右には、四角形の黒いボタンがある。
これを押すと、欲しい金額が確定する。

ボタンを押してみる。

さっきまでお菓子のあった場所に、100円玉が置いてある。

"アイツ"の言っていたことは本当らしい。
曰く「受けた取った金と同じ価値のものが代わりに徴収される」 

次は1万円にしてみる。
部屋を見渡すと1万円札が置いてある。
どうやら、テレビがなくなったようだ。

一人暮らしを始める時に実家から持ってきたもので、たまに使っているが、なくても支障がなかった。

リサイクルショップで売るような要領で、少額なら大きな危険はなさそうだ。

もちろん、1000万円とかにしたら、何が持っていかれるか分かったものではない。
そんなに高価なものは所有していないため、最悪の場合は臓器でも持っていかれるかもしれない。

ダイヤルを全て0に戻すために機械を触ると、横にもう一つスイッチがあるのに気が付いた。

試しに、スイッチを切り替えて、100円に設定して確定ボタンを押す。

目の前に100円が落ちてくる。
しかし、見渡す限り、何もなくなっていないようだ。

不思議に思い、1000円に変えて、もう一度押してみる。
やはり、1000円札が落ちてくるが、何もなくなっていない。 

今度は1万円で試してみる。
1万円札が落ちてくるが、今回も何がなくなったかは分からない。

しかし、金が手に入ったということは、何かを失っているはずだ。
何の対価もなく金が手に入るほど、都合のよい話があるわけがない。

僕は怖くなって、機械のダイヤルを0にして、机の引き出しの奥にしまった。

1万円で僕は何を失ったのか。
考えるほど、気持ち悪くなってくる。

色々な思考がグルグルと回って、頭から離れない。
機械の説明をもう一度始めから思い出すが、やはり横にあるスイッチの説明を聞いた記憶がない。

そういえば、一つだけ引っかかることがある。

僕にこの機械をくれた"アイツ"とは誰なのだろうか?

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