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2023小暑日記

夏至日記で少し書いていた往復書簡の企画がトントン拍子に決まって嬉しい。とっておきの便箋と、まだ定形内郵便が80円だったころにもらった切手シートをひっぱりだしてきた。

大事にとっといた月光荘の便箋(水色)をようやくおろす

手紙を書くために喫茶店に行くのが好きだ。喫茶店で手紙を書いている人を見かけると、仲間だ、と思う。

この他愛のない日記をふくめ、noteでの発信もほとんどが、読んでくれる人に当てている一方通行の手紙のような気がする。日々を記す温度というものは出す場所が変わってもそんなに変わらない。ただ、アナログなやりかたで特定の相手にのみ届け、相手からも返事が来ることによって、これを往復書簡という作品としたときに、一人では生み出せなかったものが出来上がるように思う。第三者にお届けできるようになるまでは時間がかかるだろうし、さまざまな事情で頓挫する可能性だってあるのだけれど。

なぜ手紙を必要としているのかを考えたときに、なぜ自分の言葉や自分の作品を発信するのか、というところにも通じるものがあった。わたしの創作の発露は十歳かそこらで、「おもしろい話を思いついたからちょっと聞いて(読んで)くれない?」という程度だった。それは今も大して変わらない。七夕の夜、長く会えてない人と二時間程度電話をしたが、二時間でも足りない夜というのはある。同時にわたしは口下手なのでなかなか自分の納得の行くようには話せてはいない。話せないから書くほうが好きなのか、書くほうばかり大事にしてきたから話下手を克服できていないのか、鶏なのか卵なのか……

しかしそんなことを言っているうちに、アトリエの企画と合わせるとだんだん忙しくなってきた。早く起きられた日は仕事前に制作に手を付け、退勤後も夕飯のあとひと休みを入れてから寝る前まで制作、という日々。倒れないように食事と睡眠はしっかりしている…つもり…。

小暑期間は週末が多かった。梅雨明け前の暑さの程度であれば自分にはなんの障害にもならないので、いろんなところに出かけた。
用があって初めて降りた街。駅前で喫茶を探し、ピザトーストを食べたっていいし、心惹かれるものがあればふらふらと道を外れたっていい。坂の多い街で、突然目の前に現れた階段を登ると、見晴らしの良い高台に褪せた紫陽花が美しく、午後にも雨が降り出しそうな紫外線のきつい曇天に幻を見た心地がした。それから、ひと目見ただけで異様な建築物を見つけて心が踊った。有名な建築家によるものらしく、賃貸で住めるのだとか。大阪に住むことがあれば絶対ここだ。

そして梅田を経由するときは必ず寄る喫茶店があって、コックピットのような座席で食べるプリン・ア・ラ・モード。文句なしの休日。

久しぶりに白亜荘にも行った。しんきろうのメンバーが朗読と演奏をしたことがあって、その縁で知っている左京区の古い建物。制作と大雨の合間を縫って展示を見た。
それから、しんきろうのメンバーと久しぶりに集まって、今度出す本の表紙の打ち合わせをした。メンバーで膝をつきあわせて集まるのなんか何年ぶりだろうというのに、実際対面すれば近況もそこそこに、まるで先週の続きをしているようにいろんなことが決まっていく。来月もなかなかの忙しさになるなあと背筋が伸びる心地。
打ち合わせのあと、祇園祭の宵山の街に繰り出して気に入りの山鉾だけ見て帰った。去年の前祭はコロナに罹患して出歩けなかったから、歩行者天国や屋台の感じは実に四年ぶり。

組版と知人の制作手伝いが正念場で、休日であっても予定を数時間単位でパズルみたいに組み合わせているから、実家から夏野菜を送ってもらってとても助かった(スーパーに出かけるのがつい後回しになる)。せめて酢と味噌を定期的に摂取できるように仕込む常備菜。目の周りそうな日々だけれど、集中的にキッチンに立つと気晴らしにもなる。

トマト、万願寺、ピーマン、こどもピーマン、きゅうり、ゴーヤ めちゃめちゃ助かる便

休日6時に目が醒め、起きぬけに集中して1時間程度InDesignに向き合い、お腹が空いてきたらキッチンに立ち、仕込みついでに野菜の切れ端を口に放り込む。この日は午前中から山科へ行く日で、暑い時間帯にひどく嵩張る重い荷物で移動することになってしまった。早い時間に帰宅して、どうせ汗まみれだからとついでに掃除機をかけたり床を拭いたりして働き終わってからシャワーを浴び、すべてを洗濯機にかけてほっと一息つく気持ちよさ。
午後はようやく自由時間。宮崎駿の新作を後目に、閉館のニュースが駆け巡ったばかりの京都みなみ会館へ『AKIRA』を観に行った。これが30年以上も前の作品というのが信じられない。原作を読んでみたい。けど原作を読む場所は決めていて、これはまだ先になると思う。

なんとか組版を終わらせ、しんきろうのメンバーに校正を出してしまってから久しぶりに『もののけ姫』を観た金曜日。コミュニケーション上、ジブリという共通言語の気軽さというのは間違いがない。しかしながら、タイムリーに作品を追ってきた世代たちにとって、何歳でどの作品を観たかというのは大きそうだ。実際、大人になってしまってからリリースされた作品で、その時観る気にならなかったせいでまだ観ていないタイトルも少なくなかったりする。
多感な時期に観ることができたこともあり、やはり自分にとって『もののけ姫』というのは特別であるし、構想中の鳥女の話などは、ナウシカやラピュタの影響を受けまくっていると思う。そういえばAKIRAを観ていても宮崎駿への影響力を感じた。共通言語というか、日本のファンタジーならではの遺伝子というか……。ここから抜け出すのはなかなか難しいな、などと思いつつ、目下のところは文学フリマ大阪合わせの個人誌も画策していて、それは詩集になる予定なので、慌ただしい生活にあっても詩の尻尾を見かけたら是が非でも捕まえておきたいところ。

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京都での気ままな暮らしを綴っています。日記ですが、毎日書けないので二十四節気ごと、つまり約15日ごとにつけています。それで「二十四節記」と…

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