ヘブル語コラム②「数字の持つ響き」
聖書の中にはいろいろと特別な意味合いを持った数字があります。
3とか7とか12とか、聖書の中で何度も出てくる神様の「お気に入り」の数字がありますね。
そのような数字に隠された神様のメッセージを解き明かす本もいくつか出版されていますので、興味を持った方は探して読んでみると良いかもしれません。
さて、今日はそのような数字ではなく、「意味ありげに書かれているのに、あんまり意味が分からない」という数字について見てみたいと思います。
その数字とは「14」です。
謎の数字「14」
おそらく、聖書(新約聖書)を初めて手に取った多くの人の心をくじけさせたであろう、マタイによる福音書の1章です。
ここには、旧約聖書を読んだことがなければチンプンカンプンな系図が書かれています。
そして、その系図の締めくくりに、14代、14代、14代、と三度も繰り返されて、いかにも意味深長な香りを漂わせているのです。
しかし、聖書をざっと読んだことがある方なら、14という数字にはあまり特別な響きを感じないのではないでしょうか。
3や7や12や40などは「あーあの時に出てきたね」と思い当たる箇所がいくつかあると思います。(探してみてください!)
しかし、14という数字は特に他の箇所では使われていないのです。
もちろん、14=7×2ですから、7に関連する数字ではありますが、何で2倍なのでしょうか。
せめて3倍だったらまだ理解できる気がしますが・・・。
しかも、旧約聖書を読んだ方なら、この系図が全く不完全な系図であることがすぐにわかります。
名前が省略されているからです。
アブラハムからダビデまで14代・・・と書かれているので、初見の人は「へーそうなんだ」と思うかもしれません。
でも、実際はもっと多くの人がいます。
というか、そもそもこの系図、14×3=42人いません。
第一区分はアブラハムからダビデまで。
第二区分はダビデからヨシヤまで。
第三区分はエコンヤからイエス・キリストまで。
ダビデを二回数えてるんです!
つまり、この福音書を書いたマタイは、歴史を調べて、三つに分け、各区分に14人いることを数えたのではありません。
14、14、14を三回言いたかったのです。
なぜ、マタイは14という数字にここまでこだわったのでしょうか?
閑話休題
蝉の音は、日本人には夏の訪れを感じさせる風流なものですが、外国人にとってはただの雑音に聞こえるようです。
また日本人なら、夏の雨、と聞けば、アスファルトから立ち上るあの匂いを思い出すでしょう。
お日様の匂い、という言葉。おそらく、ほとんどの人は、この言葉だけで良く晴れた日に布団を干したあの匂いを思いだすでしょう。
でも、これを外国人に伝えようとしたら難しいですよね。
ヘブライ語にはもともと数字がありません。
その代わり、アレフを1、ベイトを2、ギメルを3、・・・として使います。
項目番号としてイ、ロ、ハ、を使うような感じですね。
ですので、同じ数字を見ても、私たちとヘブライ語に慣れ親しんだユダヤ人では見るものが違います。
ユダヤ人にとって、14という数字はある人物を思い起させる数字なのです。
再び系図に戻って
マタイによる福音書の系図の中心人物は、ダビデです。
なぜかと言えば、ダビデだけ王という称号がついているし、ダビデだけ2回数えているからです。
このダビデという名前をヘブライ語で書くとダレッド、ヴァヴ、ダレッドです。
この文字を数字にすると、4、6、4です。
4+6+4=14ですね。
ユダヤ人が14という数字を見るとき、ダビデを思い浮かべます。
ダビデはユダヤの理想的な王であり、神様に最も愛された王です。
それだけでなく、メシアはダビデの子孫から出る、ということが預言されていました。
マタイの系図の中でひときわ目立つダビデ王、そして14という数字。
マタイは、この系図を見る(聞く)人に、サブリミナル効果のように王、ダビデ、メシアというキーワードを響かせているのです。
おわりに
マタイの「14」という数字の意味について書いてみました。
マタイによる福音書が系図から始まるのを見て、聖書を読むことに挫折した人が多かろうと思います。
しかし、マタイによる福音書はユダヤ人に向けて書かれた福音書、と良く言われます。
マタイによる福音書がこの系図から始まるということは、イエス・キリストが王の王、約束されたメシアである、ということを最も説得力を持って語る方法だったのです。
この系図の直後にマリアの処女懐胎が書かれていることには実に素晴らしい意味が隠されているのですが、長くなりましたので次回に譲りたいと思います。
聖書には素晴らしい神様のメッセージが込められています。
とことんその素晴らしさを味わい尽くしましょう!