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このことが無かったら五足のくつはできなかったに違いない その13.

漁師さんの集落にある路地「せどや」。下田温泉街と漁師さんの集落は隣あっている 。
下田の漁師さんたちが海上安全のために崇敬している恵比寿様

『せどや』

南フランスのエズ村は、別名・鷹巣村と呼ばれている。
鷹の巣は、雛や卵を守るため 外敵が近づくことができないほどの高地に 作られていることからそのように呼ばれているそうだ。
文字通り、切り立った崖の上、 海抜約420mに位置するエズ村は、その村一帯が観光地となっていて、 二軒のホテルがあるが、 そこにたどり着くまでの石畳の道を歩くのが楽しい。
人とすれ違うのがやっとという狭い道幅で、 しかも直線ではないので、 その先にどういう景色が現れるのか、とても楽しみになる。

そういえば、東海道や、 五足の靴の一行が歩いた明治時代の道もこれくらいの幅であった。
思えば、車社会が到来する前の道というものは、 これくらいの道幅が主流であったのではなかろうか。
今から30年ほど前、黒川温泉が一躍人気温泉地となった。
私は初めて訪れたときに、 その成功の要因が、道の狭さではなかろうかと思った。
狭く、人とすれ違うのがやっとという道、 それは、土地の人の生活空間でもある。 そんな道を浴衣姿で歩くことがどこか懐かしい、 という感情をお客様方は感じられたのではなかろうか。

そこで、改めて下田温泉を見たとき、 昔から形成されてきた下津深江川沿いの温泉地ではなく、 山手の一般の人たちの生活空間がある狭い路地や、 漁師たちが住む海辺の家々の隙間の路地・ これは昔から「せどや」と呼ばれている、 こういったところに旅館や民宿が移っていけば、 面白くなるのではなかろうかなどと思ったりしたものだ。


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