過剰防衛になりかねない頭部への肘打ち 顔からの流血 頭蓋骨損傷 傷害致死
これまで、拳を硬い頭蓋骨にヒットさせることへの危険性について述べてきました。
そのため、どうしても、腹部とのフェイントの関係で、拳技を上段に決めたいときは、首周辺の急所を狙うことになります。
そもそも、最悪の場合でも、正当防衛を成立させるべき護身術において、頭部は狙うべき部位ではないのです。
もし、腕や足を使って、相手の顔面に強打をくわえたら、ほかの急所より流血は目立ちますし、それを見た警察官の印象も良くありません。
最終目標は、相手を倒すことではなく、最小限のダメージで敵の動きを封じ、逃げることなのです。
それに、頭は、人体で最ももろいところです。
当然、大きな衝撃を与えて、重傷を負わせたり、傷害致死を起こせば、過剰防衛の範囲になりかねません。
特に、後頭部なんて、せめたらかなりやばく、強打で即死してしまうことがあります。
胴体や手足の打撃部位を当て、相手の動きを封じるよりも、過剰防衛になるリスクはかなり高くなるのです。
それ以前に、素人が顔面に拳を当てると、指の骨を折ったり、手首を曲げかねません。
拳打は、身体の柔らかい部分を狙うべきです。
その自滅をカバーするために、肘打ちを使うのは、妥当な選択でしょう。
過去に、頭に肘打ちを当てて、肘の骨を損傷したという話はなかなかありません。
ただ、完全に骨へのダメージを防げるわけではありません。
格闘技の試合で肘打ちを多用した者で、肘の骨がすり減ったり、損傷したため、手術が必要になったケースもあります。
個人的にはオデコより下側の頭蓋骨の方が、硬いアゴの骨をを除いて、骨の薄い急所があるため、まだ肘を傷つけにくいです。
ただ、オデコより上側の頭蓋骨は硬い部分が多く、狙うべきではないというのが、私の意見です。
肘打ちで脳天を打ち、頭蓋骨陥没などの例もありますが、打つ側の肘も結構痛いと思います。
また、パンチに比べて打つ隙が多く、間合いが近くないと打てない問題点があります。
しかし、肘打ちの破壊力は、拳打以上です。
暴行事件にまきこまれても、頭への肘打ちは、極力控えるべきです。
過去に紹介したアゴへの掌底打ちも同様です。
使用は、生命が本当に危ないときに限ります。
相手が刀剣や拳銃をもっていて、自身が怪我を負っており危ない状況なら、使わざるを得ないかもしれません。
死んでしまったら、すべてが終わりだからです。
肘打ちの打ち方は、これまで説明してきたストレート、フック、サイドからの裏拳の打法とあまり変わりません。
足の軸足と腰の回転までは、全く同じです。
ただ、パンチのようにまっすぐ放つのではなく、腕は曲げた状態で、相手に向けて肘の骨をぶつけます。
その要領で、ストレート方向や横方向からの肘打ちなど、いくらでも応用技が打てます。
ただ、アッパー方向の肘打ちは確かに有効ですが、掌底打ちの方が、間合いが広く、隙が少なくて済みます。
上から脳天に下ろす肘打ちは、頭蓋骨上面が硬いため、熟練者じゃない限り、肘を痛めかねません。
注意点は、パンチに比べて打撃部位が隠れて見にくいため、狙っている急所への命中率が落ちることです。
過剰に威力を与えかねない技なので、くれぐれも使い方に注意しましょう。
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![坂口正吾](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/59483602/profile_b71c795799b7242598ca063e2f7ff4a7.jpg?width=600&crop=1:1,smart)