川田喜久治 写真集「地図」
川田喜久治とはどんな人か?
今回は写真家・川田喜久治氏の代表作である写真集「地図」について調べたことを書きたいと思います。川田喜久治は1933年生まれで現在90歳。現在も精力的に新しい表現方法を取り入れてインスタに写真を投稿しているすごい写真家です。
週刊新潮写真部を経て、1959年に細江英公、奈良原一高、東松照明らと写真家集団VIVOを結成。1965年に戦後の日本を撮った写真集「地図」を発刊し世界的に有名になりました。
本当はインスタに投稿した写真から作られた最新の写真集「20」と「VORTEX」が刺激的だったのでこれについて書こうと思ったのですが、まずは名作の写真集「地図」を振り返ってからにします。
戦後の日本の写真と写真集「地図」
写真集「地図」は戦後の日本を象徴する原爆ドーム、残された日本軍の要塞、そして高度成長時代になって不要になったものを捉えたものです。特に原爆ドームについては壁に残ったしみに注目した写真を撮影したことで知られています。
戦後の日本では戦争の悲惨な状況をリアリズムとして写真におさめる時代だったのですが、原爆ドームのしみをはじめ抽象化したイメージで表現しているところが特徴です。新しい表現を求めはじめた日本の戦後の写真の変化だと言われています。
中途半端な知識で私が色々と書くよりも、サンフランシスコのSFMOMAが撮影した素晴らしいインタビュー動画があるのでこれを見ていただくのがいいでしょう。
ちなみに、SFMOMAは戦後の日本の写真について、戦後の日本とアメリカの新しい関係がどのように日本の写真に影響を与えたか、日本の写真家はアメリカをどう捉えたのか、という点で詳しく調査したりコレクションをしています。
どんな写真集なのか?
「地図」は杉浦康平氏によってデザインされた写真集で、観音開きの作りになっていているのが特徴です。ページをめくると写真があらわれて、さらに中央から左右にひらけば横長の写真が広がり、深く入り込んでいくような感覚になるそうです。
次の動画を見ていただくと、観音開きの様子がわかるかと思います。写真写真集「地図」は1965年に初版が出た後、2005年と2014年に復刻版が出ていて、この動画は2005年の復刻版だと思われます。一度自分の手で見てみたい一冊です。
また写真集「地図」にはマケット版と呼ばれる試作模型版が存在します。このマケット版はニューヨーク公立図書館が購入したことで知られています。
検索してみたところIMAオンラインのこの記事の中に、ニューヨーク州立図書館のマケット版の映像と土門拳の写真集「ヒロシマ」との比較について解説している動画を見つけました。またこの中には、川田喜久治御本人、杉浦康平氏などの貴重なインタビューも含まれています。
写真集「地図」(マケット版)の復刻版
川田喜久治とその写真集「地図」についての動画を見たりして調べていくと、どうしても写真集「地図」を見てみたくなりました。東京にいれば東京都写真美術館とかどこか閲覧可能な場所を見つけることができるかもしれませんが、私の住んでるシリコンバレーの辺りではそのような場所は多分ないと思います。
出版された観音開きの写真集は2014年の復刻版がまだ入手可能なようですがかなりの金額です。いろいろと悩みましたが、今回MACKから2021年に発売されたマケット版の復刻版に相当するものを買ってみました。
これは先のニューヨーク州立図書館と共同で出版されたものです。二冊に分かれた写真集「地図」の間にもう一つ冊子が挟まれていて、この中に研究論文や本人へのインタビューなどが含まれています。読んでみて、改めてこの写真集「地図」というものに関心を持ち研究されているかを理解できました。
川田喜久治と写真集「地図」について調べていくことで、写真集というものの面白さというか奥の深さを学んだ気がします。