アメリカの写真家Todd Hidoについて
はじめに
アメリカの写真家Todd Hido(トッド・ハイド)をご存知でしょうか?既に大ファンで写真集を持っている方もいると思いますが、日本ではあまり大きくは紹介されていないので知らない方も多いのではないでしょうか。
しかし海外の写真集を多く取り扱っている日本の書店に行くと彼の大きな写真集がドンと目立つところに置かれていることがあります。もしかしたら写真集の表紙を見るとピンとくる方がいるかもしれません。
今回はこの写真家 Todd Hidoはどんな人なのか、また彼の写真集「House Hunting」と「The End Sends Advance Warning」について書いていきます。
Todd Hidoはどんな人か?
Todd Hidoはアメリカのオハイオ州出身の写真家で現在はカリフォルニア州のサンフランシスコ・ベイエリアをベースに活動をしています。イーストベイのオークランドにスタジオがあります。また彼の活動の窓口となるCasemore GalleryはサンフランシスコのMinesota Street Projectというアート系ギャリーが集まった建物の中にあります。私が住むシリコンバレーからは車で1時間くらいのところなのでとても親近感がわきます。
次の動画は7年前のパリフォトでのインタビュー動画(5分程度の動画の三部構成)です。これによるとオハイオ州に住んでいた頃にMBXをやっていてその姿を撮るのがカメラを始めたきっかけとのこと。MBXでは州のチャンピオンに4回なったらしい。マサチューセッツ州の大学で美術を学んだ後、1991年にカリフォルニア州のオークランドのCalifornia College of Arts and CraftsでMFAを取っています。
どんな写真を撮るのか?
夜のアメリカの住宅街の家を撮影したミステリアスな感じの「House Hunting」の写真が特に有名ですが、室内の自然光を生かしたポートレートやヌード写真も撮影しています。
次のビデオは20年以上前にアメリカのテレビで放送された古いものですが、これを見ると彼の撮影スタイルがよくわかります。夜の住宅街で三脚をセットして長時間露光で住宅を撮影しています。
また彼の作品がが認められ、有名ファッションブランドの広告キャンペーンの撮影も手がけているそうです。私が見つけたのはVictoria Beckham 2014 年秋冬広告キャンペーンと、Bottega Veneta 2017年秋冬広告キャンペーンです。
HBO MAXの「On the Roam」に出演
今年1月中旬からアメリカのHBO MAXでJason Momoaが制作・主演の「On the Roam」という番組が始まっています。Jason Momoaが毎回異なるアーティストのところを訪ねていくという企画なのですが、このエピソード2がTodd Hido回です。Todd Hidoが大好きなJason Momoaがスタジオを訪れたり撮影に同行し、感極まって叫び続けている感じの内容になっています。
Todd Hidoファンの方にはおすすめしたいところですが、日本からHBO MAXに契約するにはVPN接続に加えてアメリカ発行のクレジットカードが必要となりかなりハードルが高いです。日本でHBO MAXを配信している会社が早く対応してくれると良いのですが。
「On the Roam」シリーズ1の公式トレーラーYouTube動画はこちら。
次の写真はS1E2のTodd Hido回の配信開始に合わせて、今年1月17日にTodd Hidoがインスタに投稿したものです。Jason Momoaとライカで一緒に撮影して楽しそうです。
写真集「House Hunting」と「The End Sends Advance Warning」
「House Hunting」(Nazraeli Press社)は2001年に出版された写真集で、アメリカ郊外にある住宅を夜間に撮影した写真を集めたものです。Todd Hidoの代表作と言ってよいでしょう。夜の光を受けて浮かび上がる家の表情を捉えていて、さらに雨や霧などの通じてより幻想的な姿とさせています。また部屋の窓の光から中で家の中で人が生活していることを感じさせ、見る側の想像を膨らませます。加えて人が住む家というプライベートな空間に対して撮影者がどこまで近づくことができるのか考えさせられる写真集です。2002年には続編の写真集「Outskirts」も出版されています。
写真集「The Ends Sends Advance Warning」(Nazraeli Press社)はTodd Hidoの最新の写真集です。私が購入したUS Amazon.comでは2024年1月15日発売開始となっていました。日本ではその前から販売されていたようです。
前作の写真集「Bright Black World」の続編という位置付けで、アメリカから離れ世界各国で撮影した風景の写真が含まれたものです。どこにでもありそうな風景が広がる場所で撮影されたものですが、雨や雪の悪天候の条件のもと幻想的なシーンへと変えていて、Todd Hido独特の特別な雰囲気に包まれた特別な写真となっています。見応えあります。
Todd Hidoを知るための参考書
Todd Hidoについてさらに深く知るためにはApertureのPhotography WorkshopシリーズのTodd Hido編「Todd Hido on Landscapes, Interiors, and the Nude」がお勧めです。本人が自分の作品に解説しているので彼の写真に対する考え方を理解することができます。英語ですが長文にはなっていないのでスマホで文字認識してDeepL/ChatGPTなどで翻訳しながら読むことができると思います。
またざっとTodd Hidoのこれまでの作品の全体像を知りたければイギリス雑誌「Hotshoe Issue:210 Todd Hido」が役立つかもしれません。この号ではTodd Hidoの特集でポートレートを含めて過去の写真集から最新の「The End Sends Advance Warning」の中からピックアップされた写真が集まったものになっています。
Aperture Photography Workshop本についてもう少し説明すると、例えば写真集「House Hunting」の表紙写真を選んだ時のコンタクトシートの話が紹介されています。最初は真ん中の白丸のものにしようとしたが最終的に右下のものを採用したとのこと。この白い柵は「ピッケルフェンス」と言われるものらしいのですが、1916年に撮影された「The White Fence」の説明とともにこれがアメリカ社会の代表する光景であったことが語られていたりしてなかなか興味深いです。
最後に
Todd Hidoはこの春アメリカのライカストア「Critical Dicisions」というテーマで写真の展示と有料ワークショップを開かれる予定になっています。Los Angels、New York、Bostonに加えて4月にSan Franciscoのライカストアでも行われます。加えてサンフランシスコのCasemore Galleryでも写真展が4月に予定されているとのことです。シリコンバレーに住む私として4月はTodd Hido月間になりそうです。
おまけ
House Hunting的に撮影されたものの中に少し淡い色の住宅が並んだ写真があります。(実際には写真集「Outskirs」の一枚)先に書いたHBO MAXのOn the Roamを見ていたらここがPacificaという街の近くのスーパーの裏側の駐車場だということが分かりました。Pacificaといえば私がよく海の撮影に行く場所です。現地に行ったらどんな感じだろう?と思って早速行ってみました。
Todd Hidoの写真と同じ光景が目の前に現れると興奮しましたが、シャッターを切ってみると同じようにはなりません。不要な車や収集待ちのゴミが写り込むし、住宅の部屋の灯も全然点いていなかったりして、雰囲気は全然違います。おそらく何度も通って最高の瞬間を撮ったんでしょう、きっと。
この他にもTodd Hidoの撮影ポイントは車で行ける範囲にいくつかあるようなので探してみても面白いかもと思いました。
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