備忘録 | 23年5月
(できれば毎月)残していきたい備忘メモ。基本は月々の振り返りになるけれど、詳しく記すというより、あくまでメモのようなものとして。
劇場鑑賞 映画
『ハロウィン THE END』
監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン
ジョン・カーペンター『ハロウィン』の公式続編であるデヴィッド・ゴードン・グリーン版3部作。その完結編だったが、正直ガッカリした。第1作は「Gotcha」のセリフに大笑いしながら楽しみ、「これぞ公式な続編!」と興奮したものだが。
当然ながらファンであればブギーマンことマイケル・マイヤーズとジェイミー・リー・カーティスの最終対決こそを楽しみなのだ。しかし本編の70%くらいはマイケル・マイヤーズの話ではなかった。もちろんそれはそれで有意義かもしれない。しかしそれは別の映画でやって欲しかった。
『わたしの見ている世界が全て』
監督:佐近圭太郎
「自分は好きになれるのか…この主人公を?」。映画の途中まで森田想 演じる主人公に対して、かなり不快感を抱いていた。
「利益」のためなら、人々の感情はないがしろにしても構わない。とても現代的な登場人物だと思う。しかし途中、兄の恋人と畑作業をする辺りから(たとえその目的が自分の利益のためだとしても)そんな悪い人間でもないのかもしれないと思い始めた。世界とはそういうものなのだろう。
本作で特におもしろいと感じたのは、家族4人が食堂の机に集まるシーン。この4人は同じ机に座ろうとしない点に、家族の距離感が表れていた。
『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』
監督:ジェームズ・グレイ
最近、流行の「映画監督自身の幼少期もの」。スピルバーグ『フェイブルマンズ』とは異なる方向性ながら、この作品もとても素晴らしかった。
差別などの「不条理に抗うこと」と「自分の弱さゆえに敗北すること」。現代のSNSでは最後まで抗いきれない時点で、きっとバッシングを受けるだろう。しかし重要なのは生き残り、抵抗を継続していくこと。きっとジェームズ・グレイは何度も敗北をしているのだと思う。それでもまだ諦めていない。そんな宣言のような作品だったし、そこにとても共感を覚えた。
本作は自動車内の描写がどれも印象的だった。祖父(アンソニー・ホプキンス)と遊ぶ姿を見守る母(アン・ハサウェイ)。アンソニー・ホプキンスの葬儀の終わりを待つ父親(ジェレミー・ストロング)とポール。敗北を味わったあとの父親とポールのやりとりなど。
『MEMORY メモリー』
監督:マーティン・キャンベル
アメリカ映画における「アクションと老い」というテーマはとても現代的だ。あのクリント・イーストウッドも『クライ・マッチョ』ではアクションシーンから卒業したような印象がある。
今回、リーアム・ニーソンが演じたのはアルツハイマーで記憶を失ってしまう殺し屋。そんな設定が十二分に生かされていたかは怪しい。しかしいつもの「無双モード」と異なる悲哀なリーアム・ニーソンが見られた点が本作のユニークネスになっていると思った。
『ワイルド・スピード / ファイヤーブースト』
監督:ルイ・レテリエ
荒唐無稽さに拍車がかかった『ワイルドスピード』シリーズ最新作。
今作の魅力はとにかくジェイソン・モモアとジョン・シナ! 二人を見るだけで鑑賞料金を払う価値があった。ジェイソン・モモアのサイコパス感と、「前作から何があった?」と問いただしたくなるようなジョン・シナの優しい叔父さん感。Fワードを発したリトルBに「Fワードを使っていいのはポップミュージックを歌うときだけ!」と注意するジョン・シナに吹き出してしまった。
それにしても今作は異様なまでに「ファミリー」という単語が頻発する。そこに違和感を抱く人もいるかもしれない。しかしアメリカに住むラテン系にとって、ファミリーだけが自分を守ってくれる唯一の存在なのだろう。日本で育つ日本人の感覚で、それを批判をしても仕方がない。さらに言えば、『ワイスピ』における"ファミリー"が血縁関係を意味しないことも重要だ。血縁・人種・敵味方を越えた"ファミリー"像を提示している点にこそ着目するべきだろう。
『TAR / ター』
監督:トッド・フィールド
「ケイト・ブランシェットが指揮者を演じる」。そんな前情報で少し期待しすぎたかもしれない。
ロマン・ポランスキーが好きそうな物語だなと思うものの、きっとポランスキーが監督をしたら120分以内でもっとおもしろい映画を作ってしまうだろう。キャンセルされるべきと思われている人物がこんな作品を作ったら、もちろん猛バッシングを受けると思うけれど。
『レッド・ロケット』
監督:ショーン・ベイカー
オープニングがあけて本編が始まる瞬間、ブツッと楽曲が切れる。そんな本編の幕開けに痺れた。多くの映画はフェードアウトを使うと思うが、それをしない思い切りのよさに喝采を送りたい。
落ちぶれたポルノ男優マイキー(サイモン・レックス)は18歳手前のストロベリー(スザンナ・サン)をポルノ業界でデビューさせようとする。アメリカのポルノ業界では「スーツケース・ピンプ」と呼ばれるらしい。魅力のある若い女性をポルノ女優として成り上がらせて寄生する。そんな搾取を行うマイキーだが、本作は彼を安易に「悪」として描いたりしないし、不必要にロマンティックにもしない。「どうしようもないなー」とは思うが、人間臭いしチャーミングに感じられる。また搾取の責任を特定の人物に押し付けず、社会の問題として捉えようとしている点が伝わってくる。『ビーチ・バム』のようで、本当に好きな作品になった
日本では『闇金ウシジマくん』の題材にでもなりそうな話を、カラフルでキャッチーに描いてしまうショーン・ベイカーは本当にすごいと思う。
プレイリスト
Jessie WareやArmani White、何よりJJJは1曲だけでなく作品トータルとしてとてもよかった。Armani WhiteはこのEPのあとアルバムも待っているそうで非常に楽しみ。
これまでの作品でクールな佇まいのラップを見せてくれたJJJが、今作ではパーソナルな内面を見せていて驚いた。昨年のOMSB『ALONE』のようにラップが好きな人以外にも届くであろう作品になっていると思う。
仕事
まいにちdoda 島田晴香さんインタビュー
ライター:小林千絵さん 撮影:前田立さん 編集:久野剛士
NiEW 『EO イーオー』記事
ライター:木津毅さん 編集:久野剛士